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1 屋敷に帰ったら居場所がない

ここから三人称で主に続いていきます。

 ガイウスが外れた一行は、少ししんみりしつつも新たな門出を祝って酒を呑み、ぐでんぐでんに酔っ払って屋敷に帰った。


 パーティ『三日月の爪』の4人は、最初そこが自分たちの拠点だとは気付かなかった。


 宵闇のせいもあるだろう。しかし、月の光と街灯に照らされた魔物の金色の瞳や、キャンプ道具一式に、魔物の素材の山。庭に溢れたそれらは、どう目を凝らしても山だ。山と積まれている。


「は……?」


 とてもじゃないが、彼らのアイテムポーチに収まる量じゃない。


 確かにドラゴンやグリフォンといった大型の魔物も倒してきたから素材があるのはわかる。だが、こんな物をずっと持って歩いていたのか? 売り捌いていたんじゃないんだろうか? と疑問に思いながら、なんとか屋敷の入り口に辿り着くと、ドアを開けた瞬間、大量の回復薬やらが雪崩れてきた。


 とてもじゃないが屋敷の中には入れない。


 今日の所は諦めて街に引き返し、宿に泊まる事になった。4人で泊まるとなれば、それぞれ2人ずつの部屋に泊まりたいところだが、酔いがさめて冷静に感じる"ヤバさ"のせいでそんな気にはなれなかった。


 2部屋取ったが、とりあえず1部屋に集まって彼らは顔を突き合わせた。勿論深夜なのでヒソヒソ話だ。


「ガイウス……あんなに素材を貯めていたのか?」

「全部売ったり納品してると……あぁ、もう。あれどうすんのよ」

「私たちのアイテムポーチには入り切りませんよぅ……!」

「……朝イチで、商人を呼ぼう」


 辛うじてベンの台詞に頷いた彼らは、一先ずの解決策としてそれに同意した。


 しかし、彼らはそこで、更なる痛い目を見る事になる。


◇◇◇


 ——時は遡り、『三日月の爪』を抜けたガイウスは、一人拠点に戻って騎獣であるドラコニクスたちに夜と朝の分の餌と水を与え、藁を替えて元気でなぁと挨拶をしていた。


 ドラコニクスは騎乗用の竜種で、どんな敵にも怯まず、爪と牙の攻撃力が高い。


 騎獣として慣らしていれば危ない事はないが、餌のやり忘れや寝床の清掃などを怠ると暴れ出す事もある。その時の破壊力は凄まじい。冒険には便利だが扱いは丁重にしなければいけない、少し気難しい騎獣でもある。


「ちょっと狭くなるから、朝の餌やりはできないと思うし、お前ら大事に食べろよ」


 それに、好みの餌というのもある。一応厩舎の近くに餌は全部置いておく。自分の騎獣の好みくらいは知っているだろう。


 ガイウスが乗るためのドラコニクスはメスのシュクル。それだけを連れ出して一度屋敷の外に繋いでおく。これから、屋敷の屋根裏から庭までアイテムを出して行かなければいけない。アイテム泥棒と言われても困るし、態々相応しい場所で金に換金してやる程は優しくない。


 王宮で必要としている素材があればそれを王宮に卸し(主に大型魔獣の素材が欲しがられる)、ギルド納品時に少し品質が劣っている物は低級冒険者に譲ってやったりもしていた。劣悪な物はちゃんと燃やして埋めていたが、普通品質の物ならば納品しても悪くない。この辺は冒険者の中では【アイテム師】にしかない『鑑定』が活きてくる。


 店や鍛冶屋では上等な素材を少し安く売ったり、その分アイテムを安く買える『交渉』も【アイテム師】のスキルだし、『アイテムインベントリ』は【アイテム師】だと制限無しで保存・収納しておける。


 ドロップ品でも耐久力が足りない物は鍛冶屋に打ち直してくれていいと安く譲ったりしていたが、それも出来ないほど耐久力の低いレアドロップは蒐集家のコレクション向けである。それはそれで売口があるが、『交渉』スキルが無ければ買い叩かれるだろう。が、売り捌いてやる時間は無い。


 なるべくわかりやすいところにテントやキャンプの品を置き、屋敷の中には必要性が高そうな食糧や回復薬の類も入り口に置くようにして、それでも昼からやって終わったのは夕方だ。


「ここまですればまぁ、義理は果たしたよな! よし、挨拶回りでもしてから街を出るか」


 まだギリギリ店も城も空いてる時間である。


 まずは城から、とシュクルに跨り身軽になったガイウスは城を目指した。

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