二章 自称パチプロの男①
この章は男(崇)の一人称。
俺は一服の煙草をふかした。
久々の完全勝利を確信したのだ。
子役の落ちもボーナスの確率も文句なし、おまけに高設定を示唆する演出まで
出たのだ。
(6を掴んだ)
思わず顔がにやけてしまう。
(だが、ここからが勝負だ)
俺はふかした煙草を途中で止め、灰皿につぶすと足早に台へと戻った。
(後はブン回すのみ!)
とにかくDDT(小役回収)打法を駆使し、時間の許す限り、レバーを叩き、ボタンを押す。
何度も何度も繰り返す。
一時間、二時間、三時間・・・刻々と閉店時間は迫る。
しかし、思うように当たりが引けない俺は苛立ちを覚えた。
ノーボーナスのまま千ゲーム以上回し、ようやく天井のRTを引いたところで閉店を迎えた。
換金所を出て、屋外駐車場で空を見上げた。
闇の中、星々が輝いている。
俺の人生はいつか輝くのだろうか、ふと、そう思った。
(プラス・・・五千円か)
期待値すら稼げない自分のヒキの弱さを嘆いた。
暗闇の中、光を求め彷徨う俺。
一等輝く星に自嘲気味に自問する。
(・・・このままでいいのか)
沸き立つ焦りと憤りに頭を振って払い、俺はオンボロ車に乗り込み、家路に着いた。