一章⑦
最終の第七戦シャークの先発は東別府、ホークスは羽田。
試合は緊迫とした様相を呈し、両チームともにゼロ行進のまま、延長戦を迎えた。
抑えの小野は八、九回を投げてお役御免となる。
十回裏の頭から菜緒はマウンドに上がる。
一歩間違えればサヨナラとなる緊迫した場面に彼女は立っている。
しかし、彼女は見事、七番から始まる下位打線を三者凡退に打ち取る。
そして、ついに十一回表の攻撃で四番、山元の犠牲フライで虎の子の一点を奪った。
十一回の裏、一番バッター古村を迎える。
内角のライジングボールを三球続けて、詰まらせピッチャーフライ。
続く浜屋は初球のアウトコースのライジングボールを引っかけさせ、ピッチャーゴロとし、日本一まであと一人となった。
三番、田村には、ツーストライクノーボールと追い込んだ。
ラストボールに渾身のボールをインハイに投げ込む。
田村はかろうじて球に当てファウル、バックネット裏に打球は飛んでいく。
続くインハイのボール球を見極められる。
次にアウトコース低目のボール球のチェンジアップに、田村はハーフスイングする。
だが、審判の手は上がらず、すかさず達河は指をさし塁審に尋ねる。
大きく球審の両手があがり、彼は首を傾げた。
菜緒は袖で額の汗を拭う。
達河は中腰姿勢で、真ん中高めのライジングボールを要求する。
彼女は大きく頷きボールを投じる。
田村はフルスイングで応じた。
しかし、振り遅れのファウルチップで、達河の頭上へ、差し出したミットのすれすれをすり抜けて行く。
彼は地面を叩いて悔しがった。
続く一投はすっぽ抜けのボール、さらに投じた球はボール半個分のアウトコースに逸れて、フォアボールとなった。
四番、松仲には初球のアウトコース低目のチェンジアップを引っ掛けさせ、セカンドゴロに打ち取ったが、あと一人の緊張感が名手、相田を襲いファングルを犯し、一二塁のピンチを迎えた。