一章②
日本シリーズがはじまる。
レッドシャークの今シーズンは、クローザーである小野が肘の故障の為、リーグ後半戦を離脱した。
その時点では、チームの順位は最下位。
そこで二軍でそれなりの成績を残していた菜緒を初の女性プロ野球選手、客寄せパンダとして一軍に上げた。
そこから、チームの快進撃が続き、敗戦処理だった彼女が登板すると必ず勝つというジンクスが生まれた。
重要な局面での中継ぎ、セットアッパー、抑えと一気にステップアップをし、最終局面では、チームの揺るがない守護神となっていた。
そして、三位でクライマックスシリーズに滑り込み、あれよあれよとCSを制し下克上を果たす。
日本シリーズ第一戦、福岡ヤホードーム、相手はホークス。
先発は東別府対西藤。
大方の予想通り、エース同士の投手戦となった。
五回の表に虎の子の一点を奪ったシャークスはそのまま最終回を迎えた。
回の頭から当然、抑えの菜緒がマウンドに上がる。
相手打線は七番からはじまる下位打線、その初球。
ピッチャー強襲、グローブを差し出すが間に合わず、ボールが肩に直撃する。
うずくまる菜緒、マウンドに集まる内野手、ピッチングコーチもベンチから駆けだした。
「大丈夫か?」
コーチの声に、苦痛で顔を歪めながらも、彼女は立ち上がった。
「いけます・・・やります」
「・・・水田」
コーチは彼女の瞳に光がまだ宿っているのを確認しベンチへと戻った。
内野手はそれぞれクローザーにエールを送り、守備位置につく。
菜緒は気合を入れ直し、軽く振りかぶって投げる真似をした。
多少の違和感を覚えた。
八番バッターに投じたまたしても初球、力が入らず投げ込んだど真ん中の中速球を痛打される。
ライトスタンドにボールが消えて行った。
逆転サヨナラ。
唖然、呆然。
彼女はがっくりとうな垂れた。
試合後、病院へ直行する。
右肩の打撲と診断されて、彼女はしばしの安静を言い渡された。
続く二戦目は7対0の完敗。
決戦の地を本拠地に変えての、三戦目も2対1の惜敗を喫し、王手をかけられ後がなくなってしまった。




