二章②
我が家と言っても彼女の家だ。
マンション5階のマイルームの呼び鈴を鳴らした。
・・・やはり返事がない。
俺は車の鍵と一緒に繋いでいる合鍵を出すと、部屋へ入った。
途端に真っ暗闇が覆う。
灯りをつける。
溜息が自然とこぼれる。
コンビニから買って来た二人分の弁当をテーブルの上に置き、テレビをつけた。
二十四時、彼女が帰って来るまで、多分、あと一時間。
深夜のお笑い番組を見ながら、ビールをちびりちびり飲んだ。
スロットの雑誌を片手にぺらぺらとページをめくる。
収支に直結する小役回収打法や天井、高設定演出等、頭の中へ入れていく。
機械割の高い機種に目を奪われがちになるが、このご時世、なかなか思うように設定は入らない。
煙草の箱に手をのばした。
残り一本を取りだすと、箱を潰しゴミ箱へ投げた。
火をつけ、煙草をくぐらせると、ぼんやりと天井を見た。
「ただいま」
彼女が買い物袋を片手にさげて入って来た。
「おう、おかえり」
「どうだった?」
「ぼちぼち、そっちは?」
「私もぼちぼちかな」
「なんだそりゃ」
何気の無い会話、それすらも自分の現状が咎め、後ろめたくもあり話したくなくなる。
だいたい沙奈がそう言う言い回しをする際は、何かあった時だ。
「私もさぁ」
(そら始まった・・・)
「今日、会社でね・・・」
俺は出来る限り、聞いているふりをしながら相槌を打つ。
いつもの事ながら、自分が職についていない以上、この手の会話は憂鬱になる。
・・・仕事をしている社会人・・・まっとうな人間・・・俺は・・・これでいいのか。
収支がついてこない現状。
万枚を出した過去の良かった日々。
あの時、やめとけば続けてればと繰り返す後悔。
後悔の後、しばらくすると忘れたかのように持ち直す腐った心根。
「ねぇ、崇!聞いている」
沙奈の強い声に我に返る。
「ああ、聞いているよ。大変だったね」
俺は、また生返事をした。




