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425 ディヴァインクラスのヴァカ

「あ、そういえば大切なことを忘れていました」


 と、そこでふと、暴マーへの暗黒レーザー攻撃をやめたリュクサンドールだった。


「なんだよ、やぶから棒に?」

「これですよ、これ!」


 やつはそう言うや否や、懐からHMDのような謎器具を取り出し、頭に装着した。


 ああ、これはまさか……。


「呪いの検査器具か?」

「はい、そうです! マーハティカティさんが復活した今、トモキ君へのバッドエンド呪いがまだ残っているのかどうか、ぜひとも確かめねばいけませんからね!」


 何やら興奮しきった口調で言う。早口で。こいつ、マジで根っからのオタクだな。


「まー、確かに、それを確認しておくことは大事だな」


 そのためだけに色々苦労してここまでやってきたんだからなあ。


「ではさっそく、トモキ君の体を調べてみましょう!」


 リュクサンドールはすぐにその謎器具を装着し、そのレンズ越しに俺を見つめた。


 そして、ややあって、


「おおおおおっ! 素晴らしい! トモキ君の呪いが完全に消えているではないですか!」


 などと言うではないか――って、おい!


「マジか! 俺もうワケわかんねー呪いから完全に解放されているのか!」


 思わずガッツポーズしちゃう俺だった。


「はい! これは世紀の大発見ですよ! 『バッドエンド呪いは術者の死亡とともに発動し、術者を蘇生させると消える』! 僕はこの新しい知見を手に入れ、呪術師としてさらなる高みに到達したと言っても過言ではない――」

「貴様ら! 我を差し置いて、さっきから何をさえずっておる!」


 と、そこで横から暴マーのブレスが飛んできた。大事な話をしてるのに邪魔くせえな。とりあえずゴミ魔剣で薙ぎ払って吹っ飛ばした。


「よし、あとはあいつを倒せばすべて丸く収まってハッピーエンドか」

「いえ、まだ倒すには早いでしょう」

「え? まだ何かあるのか?」

「もちろん! マーハティカティさんにはバッドエンド呪いについて、洗いざらい聞く必要があります!」


 リュクサンドールは目をギラギラ光らせながらきっぱりとそう言い切ると、そのまま暴マーのほうに駆け寄っていた。


 そして、


「教えてください、マーハティカティさん! バッドエンド呪いとは、どこでどういう形で習得したのですか! また、術を行使するにあたって苦労したことや、工夫した点はありますか?」


 などと聞き始めた。なんだコイツ。そんな話ができる相手じゃねえだろうがよ。


 まあ、当然、


「何をごちゃごちゃとぬかしておる! 滅びよ!」


 暴マーも呪術談義なんかするつもりはないようで。ただひたすら呪術バカにブレス攻撃をかますだけだった。相変わらず効かないが。秒で再生するが。


「そんなことをおっしゃらずに! 僕はぜひ聞きたいのです! あなたとバッドエンド呪いとのなれそめを!」


 なんかもう、空気の読めない突撃リポーターみたいになってやがる。暴マーさん、バッドエンド呪いさんと不倫でもしたん?


「ええい、うっとうしいやつめ! 黙れと言ったら黙れ!」


 暴マーのやつ、さらにブレスをかますが、当然のように秒で再生してさらに詰め寄られるだけだった。これはうぜえ。


「おい、そいつはお前と話をする気なんかないだろ。とっとと倒すしかねえよ」

「え? どうして倒す必要があるんですか?」

「え」

「……考えてみれば、僕は別にマーハティカティさんが生きていても全然困らない気がします。いや、というか! というかですよ! むしろ彼が生きていることで、世界が滅びと絶望に包まれて、呪術向きの環境になるじゃないですか!」

「ちょ、おま……何言って……」

「というわけで、僕は今からマーハティカティさんの味方になります。今ここで、彼を倒されるわけにはいきませんから! 彼ともっと呪術の話もしたいですしね!」


 リュクサンドールはそう断言すると、いきなり体を一回転させ、いかにも俺の敵のように向かい合った。


「な、なにが『というわけで』だあっ!」


 謎思考すぎてさっぱりついていけん! だが、限りなく状況が悪い方向に悪化したことだけはわかる俺だった。そう、一撃で倒さないといけないのに一撃で倒すと呪われるディヴァインクラスの竜と、チート神聖攻撃以外効かない実質ディヴァインクラス呪術師がまとめて敵になるなんてさあ!


「……だから、あの竜を復活させるのはやめたほうがいいと言ったでしょう?」


 後ろから、変態女のため息まじりの声が聞こえた。この女は、こうなることが分かってたって感じか、クソ!

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