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162 謁見の間にて Part 2

「あらためて自己紹介するね。ラティーナってば、実はこの聖ドノヴォン帝国で一番偉い、女帝様だったのだー。ラティーナってのも、世を忍ぶ仮の名前で、本名はファニファローゼ・ヴァン・ドノヴォン! トモキ君、ルーシア、今度からファニファって呼んでもいいよ☆」


 何やらキラキラな笑顔で、目の前の女児は俺たちに改めて自己紹介した。


 いや、女児には見えるが、こいつ確か……。


「あ、あの、ラティ、じゃなかった、陛下? あんた確か十一歳の時に即位して四十年――」

「そうだよ」

「じゃあ今、いったいいくつなのかなって……」

「うぷぷー、トモキ君ってば、そんな簡単な足し算もできないんだ? 十一足す四十は五十一だよ。ねー、リュシアーナ?」

「はい。陛下は今年で、御年五十一歳になられます」


 なんだとう! こんなロリロリな外見で、言動もクソ生意気なお子様以外何物でもないのに、実際は五十一のババアなのかよ!


「もしかして、即位の時に『ニニアの寵愛』とかいうのを受け継いだら、外見の成長が止まるのか?」

「あ、トモキ君、今度はかしこい! そうだよ、大正解!」

「そ、そうか、外見はそうなんだな……」


 でも中身は? その理屈だと、精神的には年相応に成長してないとダメなんじゃないの、ねえ!


「お前、よくそんなノリで女帝ってのが務まるな? まさか、お前はただのお飾りで、真の権力者は別にいるのか?」

「いないよー? ファニファ、マジで超権力者だよ? ちゃんといっぱい女帝様のお仕事してるし。どんな貴族も大臣もファニファには逆らえないんだよ?」

「陛下、そのおっしゃりようだと、まるで暴君のようですわ。実際は、陛下のお仕事が大変素晴らしいので、ほとんどのみなさんが陛下を心の底から敬愛しているというだけなのに」

「まー、そうだよね! ファニファ、みんなに超愛されてるもんねー」


 ロリババア女帝様はリュシアーナと微笑みあいながら言う。


「こ、この外見とこのノリで、女帝として超権力者で、超有能で、超敬愛されている、だと……?」


 にわかには信じられんが、


「今の話は全部本当だぞ、トモキ。この国の国民のほとんどはファニファを支持している。地方の諸侯や、王宮に頻繁に出入りしている有力貴族や、ロザンヌをのぞく周辺諸国の王たちも、同様だ」


 俺の隣に立つ褐色イケメン、レオが俺にこう言った。そうか、マジで超スペックの女帝様なのか……。


 って、お前、その口ぶり、最初からラティーナの正体を知ってたんかい!


「お前、ラティーナの正体、知ってるならもっと早く教えとけよ」

「教えられるのなら、俺も初めからそうしている。このことは、ファニファに口止めされていたのだ」

「そうですよ。僕だって固く口止めされていたんですから」


 と、リュクサンドールも俺たちの会話に割り込んできた。そうか、こいつ確か、女帝から直々に神聖魔法食らってお仕置きされたことがあったんだっけ。ラティーナの正体、知らないわけがないよな。


「ラ、ラティーナさんが、女帝陛下……」


 と、そんな俺たちのそばではルーシアが驚きのあまり呆然としているようだ。まあ、正しい反応だ。クラスメートが実は女帝様だったとか、こんなこと知らされたら、誰だってそうなる。俺だってそうなった。


 と、そこで、


「ああ、レオ。あなたも一緒だったのね。その姿だとわかりにくくて」


 と、リュシアーナが俺のすぐ隣の褐色イケメンに近づいてきた。実に親し気に。


「ここではそんな姿でいる必要はないでしょう? 早く、本来のあなたの姿に戻って。そして、いつものように――」

「はは、わかっている」


 褐色イケメンは軽く笑いながら答えると、いきなりその姿を大きな黒ヤギに変えた! 着ている制服をバリバリと破きながら。まあ、これもすぐに修復されたんだが。


「わあ、やっぱりあなたのその姿、すごく雄々しくて素敵ね! 毛並みだってこんなに……」


 リュシアーナは黒ヤギのレオを小さな手でナデナデしはじめた。黒ヤギはすぐにうっとりした表情で目を閉じ、その場に腰を落とした。


 なんだこの光景? 当然、俺は戸惑いを覚えたが――近くには、そんな俺の比ではなく驚いている人物がいた。


「レ、レオローン君が、突然黒いヤギの姿に!」


 ルーシアは再び愕然としている。まあ、無理もない。まさかクラスメートの一人がヤギだとは思わないだろうし。


「あ、あの額に生えたまっすぐな三本目のツノ……。まさか、彼は聖獣カプリクルス?」


 しかしさすが博学なクラス委員長様だ。一目で正解しやがった。


「ルーシア、あいつ普段はあの姿のまま授業を受けてるぞ。幻術で見た目だけ変えてるらしい」

「あの姿のまま? しかし、あのような獣の姿では、椅子に腰かけることも、ペンを握ってノートに筆記することも不可能でしょう?」

「いや、できてるから。俺、いつもそばで見てるから」

「何をふざけたことを――」

「今のトモキの話は全部本当だぞ、ルーシア」

「えっ!」


 レオ本人から直接答えられ、ルーシアはまたしても激しく驚いたようだった。


 そして、


「あ、あの姿のまま、椅子に座って、ペンを……握る? 握るとはいったい……」


 ひどく錯乱した様子でうわごとのようにブツブツつぶやき始めた。目の前の現実に理解が追い付かないようだった。

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