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112 勇者、廊下でいちゃつく

 廊下に出ると、リュクサンドールは仕事があるのだろう、すぐに早足で職員室のほうに戻って行った。俺とユリィも一緒に教室に戻ることにした。そろそろ昼休みが終わるころだった。


「本物のトモキ様の剣、まさかここにあったなんて……びっくりですね」


 廊下を並んで歩きながら、ユリィは妙にはしゃいだように言う。


「ウーレの街で見たのは本物じゃなかったので、ちゃんと本物を見られてよかったです」

「いや、別に見たってたいしたもんでもなかっただろ。前に俺が言った通り、見た目は普通の、地味な剣だっただろ?」


 そう、さっき十五年ぶりに再会した俺の魔剣は、本当に地味&普通そのもののデザインだった。まあ、魔剣としての使い勝手は抜群だったから、ちゃんと鑑定したら五千万なのはわからんでもないが。


 しかし、ユリィは、


「いいえ、見た目は普通でも、かつてトモキ様が使っていたものなんですから。ちゃんと自分の目で確かめられて、わたし、すごくうれしいです」


 と、俺に微笑みかけながら言うのだった。その黒い二つの瞳は、澄んだ光をたたえていて、きれいだ……。俺はたちまち顔が熱くなり、目をそらした。


「バ、バッカじゃねえの。あんなのただの道具だっての。いちいち大げさなんだよ、お前は」


 おまけに、恥ずかしさのあまり、小学生みたいなノリで悪態をついてしまった。バカなのは俺だよ! お前に喜んでもらって、俺、ほんとはすごくうれしいよ!


「ほ、ほら、早く教室に戻ろうぜ! 昼休みが終わっちまうだろうがよ!」


 俺はさらに照れ隠しで、ユリィをうながすが、


「あと、もう一つだけ、トモキ様に聞いてほしいことがあるんですけど、いいですか」


 ユリィはその場に立ち尽くしたまま、俺をじっと見つめた。


「なんだよ?」

「さっきはその……ありがとうございました」

「え?」

「トモキ様は、わたしを助けてくれたじゃないですか」

「ああ、あれか」


 岩をドカーンってやっちゃったやつね。


「いや、礼を言われるほどのことじゃないぜ。考えてみりゃ、女同士のケンカに男の俺がしゃしゃり出るって、お前の立場としてはスゲーだせえことだろ。おまけに、卒業制作の岩ぶっこわしちまってさあ」

「そんなことないです! わたし、あのとき本当に心細くて……。だから、トモキ様が駆けつけてきてくれたとき、すごくほっとしました」

「そ、そうか?」

「はい。あのままだと、わたし、みんなの前で泣いてました。編入初日にそれは、さすがにかっこ悪いですよね。トモキ様が来てくれて、本当にうれしかったです。また私を助けてくれて、ありがとうございます」


 ユリィは俺の目をまっすぐ見つめ、やわらかな笑顔で言う。俺はますます顔が熱くなってしまった。なんでこいつは、いちいち直球なんだろう。


 でも、あんなクソ女どもになじられて、ユリィが泣かされなくてよかった……。


「は、話はわかったよ! それより早く教室に戻ろうぜ! 午後の授業が始まっちまう」

「そうですね」


 俺たちは早足で教室に戻った。

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