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私、異世界に来てまで虐められています  作者: あめふる
3章 それぞれの思惑
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この世の終わり


 痛みの中で、私は目が覚めました。仰向けで寝ていた私の顔の上に、どこからか、水が降って来て、ポタポタと落ちてきています。


「っ……!」


 私は、悲鳴をあげる身体を、どうにかして起き上がらせようと、身体をよじって地面に手をつきます。左手は、相変わらず動きません。なので、右手で上半身を支え、足で踏ん張り、起き上がる事にします。

 鬼さんには、かなりこっぴどくやられましたからね。本当に痛くて、泣いてしまいそうです。


「……タナトスの、宝珠」


 それを壊すまで、グリムダストは消失しません。ここまで、魔物は全て倒してきましたが、放置してたらまた生まれるんでしょうか。とりあえず、ちょくちょく休憩をはさんでここまで来ましたが、新たに生まれる様子はありませんでしたね。

 そもそも、彼らに生殖能力ってあるんでしょうか。オスとメスの違いは?そもそも、全滅したので、もう生まれませんよね?彼らは何から生まれるの?

 ……何はともあれ、タナトスの宝珠ですね。

 私は、ふらつく足取りで、浅い水たまりの中心にある、大きな木の方へと歩み寄ります。絶対に、何かあるはずだと思い、木の周りを回ると、それはありました。木の幹の中に、黄金色に光り輝く物を発見したんです。

 手を伸ばし、それを掴むと、思ったよりブニュブニュとした物で、驚きました。

 手にした感想は、不思議な物、だという事です。力に溢れ、不気味で、気味が悪い。これこそが、タナトスの宝珠だと言うのは、なんとなく、理解できてしまいました。

 あとは、コレを壊せば──……。

 と、思いましたが、国王は確か、持ち帰れと言っていた事を、思い出しました。

 でも、ラスティライズさんは、壊せと言っていた。だから私は、当然これは、壊す物だとばかり思っていました。


「……ふぅ」


 私は、息を吐き、考えます。どちらの言う事に従うべきか考えれば、それは当然、満場一致でラスティライズさんです。なにせ、彼女は神様。国王よりも、遥かに上にたつ存在。国王より、神様を信じるのは当たり前ですよね。

 という訳ではなく、女の子のラスティライズさんを、男の国王よりも信じたいだけです。男に従い、女の子の指示に従わないとか、そんなのあり得ません。


「──ふふ」


 国王は、何かを企んでいる。私はそう考え、笑いました。

 このタナトスの宝珠は、何か特別な力を持っている。この力は、きっと何かに利用できるはずです。何に利用できるのか、今は漠然としていますが、きっとろくな事ではありません。

 でもとりあえず今は、国王に従いましょう。コレを持ち帰れば、良いんですよね。ええ、持って帰ってあげますよ。貴方が無料で勇者を送り出し、結果村は、救われました。その上、お土産のタナトスの宝珠を持ち帰ったら、さぞかし度肝を抜かす事でしょう。私の、勇者としての実力と、立場も、認めざるを得なくなるはずです。

 タナトスの宝珠を壊すのは、また今度。

 国王が何を企んでいるのか、ちょっと気になりますし、それからです。


「それにしても……」


 私、歩いて帰らないといけないんでしょうか。そう思い、周囲を見渡します。

 すると、足元に魔法陣が出現しました。勇者の神殿から、お城へとワープした物と、似ている物です。地面に出現したその光は、私を包み込んでいきます。

 同時に、タナトスの宝珠を幹に保管していた木が、いきなり萎み始めました。更には腐り果て、やがて地面に、少しだけ黒い塊だけを残し、姿を消しました。まるで、枯凋の能力が発動したかのようですが、私は発動させていません。

 恐らくですが、この木はタナトスの宝珠から、力を吸い込み、それを養分としていたのでしょう。私がそれを取り上げたから、養分を失い、枯れてしまったのです。

 更には、辺りがいきなり揺れ動き始め、崩壊が始まりました。壁が崩れ、天井が崩れ、床が崩落し、この空間の、吹き抜けになった闇の空に向かい、登っていきます。

 まるで、この世の終わりのような光景でした。世界が、暗闇に飲まれ、消え去っていく。

 その中で、この世界の物ではない、私だけが、外に出る権利を得たようです。気づけば、景色は白くなり、次の瞬間には、太陽の光の下に、立っていました。


「……」


 辺りには、長閑な田舎の、風景が広がっていました。広大な土地の中に、畑がそこら中にあり、建物はまばら。家畜の動物たちが、柵の中の広いスペースを走り回り、または呑気に草を食べたりして、鳴き声をあげています。

 その田舎が、グリムダストの霧によって包まれていた村だと気づいたのは、レグの坊やの姿を見た時でした。


「──勇者エイミ……」

「レグの坊や」

「お前は……なんて事を……!」


 私に歩み寄ってきたレグの坊やが、途中で涙を流し、そして膝から崩れ落ち、地面に突っ伏しました。まるで、私が土下座をさせているみたいな形となりますが、レグの坊やが倒れてしまっただけなので、勘違いしないでくださいね。


「あ、ありがどう!村をすぐっでぐれて……!」


 声を震わせるレグの坊やは、かなり聞き取りにくい声で、私にお礼を言ってきました。地面には、涙だけではなく、涎や鼻水も落ちていて、かなり汚いです。

 でもそれだけ、レグの坊やは本心では、この村を救いたいと思っていたと言う事ですね。


「──泣いている暇はありませんよ、レグの坊や。早く、お城へ帰ります。今すぐ、です。分かったら、涙を拭いて、支度を」

「は、は?だが、見た所お前は、怪我をしている。その治療をしてからでも……それと、村が恐らく、全力でお前をもてなしてくれるはずだ。タダで美味い物を食えるチャンスだぞ」

「いりません。私は、早くお城に帰って、帰りを待ってくれているメイドと、イチャイチャしたいのです」

「あ、ああ。城を出る時に、話していた──」

「分かったら、早く支度をしなさい。私に対する感謝も、もてなしも、怪我の治療も、全ては後回しです。とにかく今は、お城に帰る。それだけです。分かったら、支度を」


 私は、顔を上げたレグの坊やを、思いきり睨みつけながら、迫りました。怖がるレグの坊やに、私は構わず、本気で睨み続けます。

 すると、涙も、鼻水も、涎も、血の気も、あっという間に引いていきました。レグの坊やは、真っ青な顔になり、コクリと小さく頷くと、慌てて立ち去っていき、そして馬を連れて来ました。それと、一緒にこの村へ訪れた、兵士も一緒です。


「う、馬を連れてきた。しかしお前、その怪我で、本当に大丈夫なのか……?」

「ええ、問題ありません。左腕は動きませんし、あちこち打撲や擦り傷があって痛いですけど、気にしないでください。ですが、コレだけ預かってもらえますか?」


 私はそう言うと、手に持ったままだったタナトスの宝珠を、レグの坊やに向かって投げ捨てました。


読んでいただき、ありがとうございました!

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