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転生特典


 転生にあたり、私はラスティライズさんから、転生特典なるものを受け取る事になりました。

 特典とか、よく分からないのですが、話を聞いてみるとどうやら、ただ別世界に生まれるだけではなく、色々な機能をいただいたうえで、転生できるみたいです。それは例えば、魔法の力や、剣の才能などと言った、転生した先で、生き抜くための力です。

 そんな力がなければ生き抜けない世界って、どんな世界なんでしょうか。

 魔法とかは凄く興味ありますが、早速不安です。


「そんなに不安がらないでください。エイミさんにとって、転生先の世界はとても楽しむことができるはずです。それは、私が保証します。信じちゃってください!」

「……」


 胸を張り、胸を叩いたラスティライズさんの胸が、大きく揺れました。良い光景ですね。


「それで、どのような転生特典が、いただけるのでしょうか」

「そうですねー。やはり、転生先の世界で過ごすには、何にしても剣の腕前が必要だと思います。私のお勧めは、剣技の才能ですね。今なら伝説の剣も、オマケでつけちゃいます」


 ラスティライズさんがそう言うと、私の前に、ホログラムの画面が現れました。そこには、私には読むことのできない言語で、細々と説明書きがされています。剣の画像もあり、それがラスティライズさんの言っていた、伝説の剣だと言う事だけは、分かりますね。


「コレは、今仰っていた、剣技の才能に関しての説明、ですか?」

「はい。どうです、どうです!?」

「……そもそも、読むことができません。私の知る言語ではないようです」

「え……?失礼しました。うっかり、天界の言語を使っていましたようです。今、翻訳しますね」


 私の訴えを聞き入れたラスティライズさんが、何をする訳でもなくそう言っただけで、画面の文字が切り替わりました。それは、私のよく知る言語で書かれていて、読めるようになりました。


 剣技の達人と言う転生特典は、その世界の、最強の剣士クラスの剣技を、手に入れる事ができるようです。オマケの伝説の剣は、天界で作られた剣で、壊れない上に、鋭利。自分の思った時に、どこからともなく武器召喚によって手にする事ができて、かさばらない。そんな便利なアイテムのようです。

 また、使用可能となる技や、注意事項のような物が、その続きにずらりと細かく書き綴られていて、ただ剣が使えるだけになるという訳では、ないようです。


 ここまで見ると、かなり楽しそうな特典ではあります。世界最強の剣士の腕前を、自分が繰り出す事ができるとか、楽しそうです。


「ちなみに、いただける特典は、一つだけですか?」

「はい」

「では、別のにしていただく事は可能でしょうか」

「お気に召しませんでしたか?では、破壊魔法の使い手はどうでしょう」


 また、画面が切り替わりました。


 今度は、破壊魔法の使い手と言う特典が、画面に映し出されます。全てを壊す、魔法の使い手。行く手を阻む物を破壊し、灰塵と帰すことができる物みたいですね。破壊の魔法と言うくらいですから、普通は扱う事の出来ないような、強力な魔法を扱えるようになるみたいです。


 魔法と言う言葉に、非常にそそられます。だって、魔法ですよ。魔法とか言われたら、心が躍らない訳がありません。子供頃、だれしも一度は憧れた事がある物が、目の前にあったらどうしますか?

 私は、冷静に考えたらいらないので、却下します。


「別のは?」

「コレもダメですか?」


 次に映し出されたのは、癒しの聖人。傷を癒す、こちらも魔法使いです。が、傷を癒すとか、そんな物が私の役に立つとは思えませんし、柄でもありません。だから、却下です。

 次は、怪力の魔人。次は、スピードマスター。次は、鋼の肉体。とんでもない怪力の持ち主と、素早い動きができるようになるものと、鋼のように強靭な肉体を持つもの。

 どれも、しっくり来ませんので、却下です。その後も、ラスティライズさんは様々な特典を表示してくれますが、どれもこれもしっくり来ません。


「うきいいいいいぃぃ!」


 どれくらい、時間が経ちましたかね。ついに、ラスティライズさんが頭を抱え、奇声をあげました。


「落ち着いてください」

「エイミさんが今すぐにでも転生特典を決めてくれれば、落ち着けるんですけどね!」

「ちなみにですが、転生先の肉体は、どうなるのでしょうか」

「……そのままですよ。年老いた人とかは、基本的に若返らせたうえで送りますけどね。だって、転生したってすぐ死んじゃったら、意味がありませんから」

「そうですね」

「それ以外に、希望があるなら少しだけ変えてあげてもいいですけど……エイミさんは元々可愛いので、もったいないですね。貴女のその容姿は、充分可愛いですから」


 私より、遥かに美しいラスティライズさんに言われてしまうと、嫌味っぽくも聞こえますが、しかし本人にそんなつもりは全くないようです。純粋に、私の容姿を褒めてくれています。

 自分で言うのもなんですが、母から受け継いだこの、長く艶やかで絹のような、真っ黒な髪の毛と、少しきつめながらも、他を魅了するような怪しい目つきを、気に入っています。容姿は、かなりいい方だと自負しています。

 でも、見慣れれば、この長い黒髪も、この目も、逆に不気味に感じる人の方が、多いみたいです。私自身、あまり進んで人とお話する方ではなかったので、それで段々と周囲の目が冷たくなっていくのを、感じていました。


「どうかしましたか、エイミさん」

「いえ、なんでもありません。容姿は、このままでお願いします」

「はい。それで、転生特典なんですけど……」

「次のを、見せてください」

「うきいいいいぃぃぃ!」


 私の返答を聞き、ラスティライズさんは再び、奇声を上げました。


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