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無垢な乙女


 私は、鼻歌交じりに、お城の中を歩きます。一緒に、タニャが歩いて、私にお城の中を、案内してもらっているんですよ。これって、デートですよね。


「……わ、私と一緒で、良かったんですか?」

「何故?」

「……」


 なんとなく、分かっています。お城を歩く、私とタニャには、奇異の目が向けられています。タニャに対する差別意識もある事ながら、異世界から召喚されし勇者が、汚れた血を引くタニャと、何故一緒に歩いているのかと言う、そういう視線が送られているんです。

 恐らく、この目を向けられるようにするのが、タニャを私専属のメイドとした者の、目的。だけど、残念でしたね。私にとって、この視線はとても気持ちが良い物です。男からの視線は気持ち悪いだけですが、女性からのこの熱い視線は、私の心を刺激してくれます。オマケに、可愛いタニャと一緒に歩けるんですから、悪い事など一つもありません。

 ありがとう、私にタニャをくれた人。心の中で、私はお礼を言わずにはいられません。


「タニャ。貴女はもう少し、自分に自信を持ちなさい。この国の人たちは、貴女に対して差別意識を持っているかもしれないけど、私は異世界からやってきた勇者よ。貴女の血筋なんて、知らないわ。私から見て、貴女の赤い髪は、美しい。顔も、可愛い。仕草も、声も、私を魅了する。そんな貴女と共に歩けて、私は幸せよ」

「え、エイミ様……!声が、大きいです」


 下の階へとつながる階段広場の前で、私は大きな声で、告白まがいの事を言いました。往来の多いこの場所で、今の私の告白を耳にした者は、どれくらいいるでしょうか。

 慌てるタニャは、顔を赤くして可愛らしいです。本当に、私の心をくすぐる子ですね。こんな事を続けられたら、いつか襲ってしまいそうですよ。

 でも、相手は、私専属のメイドですし、ガラティアさんとは違い、我慢する必要はないんじゃないでしょうか。つまり、食べてしまっても良いのではと思い当たりました。

 ……今夜あたり、お誘いしてみようかしら。いえ、そんないきなりは、ダメよ。私はあくまで、純粋に、タニャが欲しいだけ。立場を利用して夜枷を要求するなんて、あってはならないわ。


「あの……エイミ様?」


 しばし沈黙していた私の顔を、タニャが覗き込んでいました。


「……ごめんなさい、なんでもないわ。次は、お外に出てみたいの。案内してくれる?」

「はい。こちらへ、どうぞ」


 先導するタニャについて、私はそこから更に歩いて、お城の庭へとやってきました。

 広大なお庭には、木や色とりどりの花が咲き乱れ、茂みはしっかりと手入れされてキレイな形を保っていますし、芝生の長さも均等です。オマケに、ちょっとした川が流れていて、聞こえてくる水の音が涼し気です。その水は、一切の濁りのない、キレイなお水で、水底が透けて見えています。

  初めてこのお城を訪れた時は、中庭にある、転送装置のある場所でしたが、ここはそれとは違います。一切の乱れのない、お庭と言うよりも、公園と呼べてしまうような場所が、そこには広がっていました。


「キレイなお庭。それに、空気がとても美味しいわ」

「そうですね。お城の職人さんが、毎日かかさずお手入れをしているので、乱れる事はありません」


 私は、お庭のお花に触れながら、良い匂いに包まれているこの空間を楽しみます。


「……エイミ様。ありがとう、ございました」


 唐突に、タニャが私に向かい、お礼を言ってきました。

 私はそんなタニャの方を向き、首を傾げて応えると、タニャは唐突すぎた事に気が付いたのか、慌てる素振りを見せました。


「さ、先ほど、一緒にお皿を拾っていただいたことです!」

「ああ……。別に、いいのよ。当たり前の事をしただけだから、気にしないで。それよりも、タニャに怪我がなくて、良かったわ」

「あ、ありがとうございます……」


 私は、タニャの頭を撫でながら言うと、タニャは恥ずかし気に顔を俯かせ、耳まで赤く染めました。

 それから私は、頭に乗せたその手を、タニャの輪郭にそって下げていき、頬を撫でました。柔らかくて、弾力のある、気持ちの良い頬です。可愛いその唇に、触れたい。そんな欲求が、私の中に渦巻いています。


「え、エイミ様……」


 私の名を呼ぶ、可愛い唇。これから私に、何をされるのか、何も想像できていないような無垢な乙女が、目の前にいます。

 彼女の瞳は、ただ私と映すだけ。彼女はきっと、私が何をしても、受け入れてくれる。そんな気がします。


「あ。いたな、エイミさん。おーい!」


 そこに、邪魔が入りました。私の背後から、私の名を呼んで元気よく手を振って来たのは、ミコトさんです。ポニーテールを手を一緒に揺らして、私の方へと駆け寄ってきました。

 そのミコトさんの格好は、とても素晴らしい物でした。本来なら、上半身を覆っているコートを脱ぎ、上半身を隠すのは、その下に着ていた黒色のシャツのみです。そのシャツは、身体にピッタリと張り付くデザインで、ミコトさんの控えめなお胸の形を強調し、とても素晴らしくエッチです。

 タニャとの逢瀬を邪魔されたのは残念ですが、そんなミコトさんの姿を見せられたら、帳消しどころかお釣りが出ますよ。


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