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9.運動しましょう

多数の読者様からご意見をいただき、また私自身も再度見直して調べた結果、当作品のタイトルの一部を変更しました。


視力0.01→視力0.1



 一限目の数学はいつも通りだった。

 黒板を撮影し、手元で画像を拡大してノートに写す。当然、発言も必要であれば周りの生徒と同じように行う。


 ちなみに俺が異様なまでに視力が低くても一番後ろの席で授業を受ける理由は、この撮影作業ゆえだったりする。

 まあ、前の席でスマホ片手に撮影してる生徒がいたら、うっとおしいことこの上ないからな。

 それに俺が一番前の席で授業を受けたところで、文字なんて見えない。言ってしまえば、黒板前の教卓の位置まで近づいてやっと一部の文字が見えるくらい。うん、超邪魔だね。


 桂音はその黒板と俺との距離感を『友達以上恋人未満みたいな距離感だね!』と言っていた。

 俺は黒板とそんな複雑な関係になるつもりはありません。


 だから俺は一番後ろの席で、撮って写して撮って写しての孤軍奮闘にいそしむしかないのだ。

 

 そんなこんなで、一限目はいつも通りに終了。

 そして二限目は体育。夢有が言っていたように、体力診断のために長距離走を行うため、着替えている最中である。


「いやー、今年は体育が二限目で助かったぜ」

「一年の頃は五限目、昼休憩の直後とかいう悪夢だったからな……」


 隣で体操服に着替えている真人の意見には首を縦に振るしかない。

 いやホント、去年の時間割を作った人は何を考えていたのか……何も考えてなかったんだろうね。昼食を食べた直後に運動させるって、何の拷問かな?


 今年は気持ち悪くなることも、腹痛に苦しむこともないだろう。俺は体育が好きではないが、それだけでやる気が出るというものだ。


「……なあ、楠」

「ん、何?」

「いや、その……すまんかった」

「……へ?何が?」


 突然、真人が呟くように謝るものだから思考が停止した。

 他の着替えている男子生徒が騒がしいし、この会話も俺たち以外聞いていないだろうけど……脈絡が無さ過ぎる。何で謝ってんだ?


「ほら、他の生徒からの視線が凄いって話。俺が夢有と話せって言ったばっかりに……こうなることも予想出来たはずだったから」

「あー、そういうこと……」


 つまり朝言っていた、俺への注目が集中してしまっているのは、自分の責任だと言っているのだ。

 夢有は良い意味で有名人だ。なんせ学年一、学校一の美少女と噂されるほどで、その優しい性格にも文句の付け所がないとか。

 そんな人が昨日今日と、俺に分かりやすいアクションを見せている。その対象である俺が視線(多分悪い意味の)を集めるのは、確かに予想出来たことだろう。


 まあ、でも……。


「真人が思い詰める必要はないだろ。話し合いの場を作ってくれたのは真人なんだし……感謝こそするけど、悪く思うことはないって。むしろ、ちゃんと話合えなかった俺が悪い」

「楠……」


 それに注目を集めてしまうという懸念材料を忘れていたのは俺も同じだ。いやだって、夢有怖かったし……そんなこと考える余裕ないし……ぶるぶる。


「はい。そういうことで辛気臭い話は終わりだ。お前はいつも通り、雄たけび上げながら走り回ってる方がいい」

「そんなこといつもやってないけど!?」


 やっと通常の煩い調子に戻ったようだ。あれ、これ戻さない方が静かだったんじゃ……。


 それに……真人は失念してるみたいだけど。

 俺、視力めちゃくちゃ低いからね。視線なんて分からないし、と言うかのっぺらぼうから視線なんて感じようもない。



 だから大丈夫。あの時のような嫌悪感も恐怖感もない。

 ()()視線なんて怖くないのだ!


 











 

 ……で、二つのクラスが体育を行うために校庭に出た訳だけど。


「夢有が楠のこと、すごい見てるけど」

「真人おいお前の責任だぞ!視線怖い!分かんないけど怖い!何とかしろ!」

「さっき思い詰めるなって言ってなかったっけ!?」


 女子たちの集団に混ざった夢有がこっちを見てるらしいです……。

 え、大丈夫かな俺。殺されないよね?


 




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