4.確認しましょう(少女視点)
「はぁ……」
あう……またため息なんて、良くないのに……。
別に憂鬱って訳じゃない。無事に進級も出来たし、学友だって沢山いて、文句の言いようもない充実した高校生活。
困ることもあるけど、楽しいことは間違いない……でも、やっぱり……。
「むぅ……どうすればいいのかな……」
「まーたあの男子生徒のこと考えてるの?亜紀」
「へっ!?か、珂月ちゃん、いたの!?」
「ずっと目の前にいたわよ。あなたの目は後頭部にでも付いてるの……?」
ジトリとした、呆れた眼差しを向けてくる大葉珂月ちゃん。
彼女は私と同じ風紀委員で、一年のころからの親友だ。私の性格上、いろいろと問題やトラブルを持ち込んでしまうけれど、素っ気ないながらもアドバイスや手助けをしてくれる……でも、最近はちょっと冷たい気がするのです……。
いえ、その要因が私にあるのは重々承知しているけど……最初は親身になって相談を聞いてくれた。でも二年になってからは特に、そのクールで大人びた性格も相まってこんな感じに……。
反抗期の子を持つ親って、こんな気持ちなのかな?
「その、珂月ちゃん?ちょっと相談したいことがあるんだけど……」
「いや。私、遠くを眺めるのに忙しいから」
「段々と理由が雑になってく!?」
前はわざわざ包装用のプチプチを自宅から持ってきて、それを潰すのに集中したいと私の相談を避けた。
なんでぇ~……一年の頃は、素っ気なくも話を聞いてくれたのにぃ~……。
「……だからさっき言ったじゃない。またあの男子のことって。それ関連の話はもう聞きたくないの。私はのろ気話を聞きたがる質じゃないのよ」
「の、のろ気じゃないよ!真剣に悩んでるもん!!」
家にいても、風紀委員の活動をしていても、更には授業中にだって彼が頭にちらついてしまうのだ。これは由々しき事態ってやつだよ!
こんな感情は初めてだ。だからこそ、どうすればいいのか分からない。自分なりに色々頑張ってるつもりだけど、全く進展がないし……。
若干涙目になっていた私を見てか、あらぬ方向を見ていた珂月ちゃんも何とかこちらを向いてくれた。
「はぁ……二年に上がる直前、亜紀の気持ちに答えは出したじゃない。好きなんでしょ?紫瞳のことが」
「か、珂月ちゃん!そんなハッキリ言わないでよ!エッチ!はれんち!!」
「だぁもう、ホント面倒くさいなこの子……!」
きゅ、急に好きとか言っちゃダメだよ!心の準備とか……少女漫画でも、すごい大切な場面でしか言ってなかったし!
た、確かに私は彼のことが……す、好き……うぅ~……顔が熱いよ……。でもそれは分かってるもん!それに気づくのさえ半年かかったけど……教えてくれたのも珂月ちゃんだったけど!
「じゃあその恋を叶えるために告白するなり諦めるなり行動を起こせばいいと思います。はい、Q.E.D証明終了、お疲れ様~」
「待って待って珂月ちゃん!やってる、私ちゃんとやってるよ!諦めたくないもん!!」
風紀委員が借用している教室から出ていこうとする珂月ちゃんを必死に止める。というかまだ活動中だから帰っちゃダメだよ!そんな、『恋愛話しているお前が言うな』みたいな顔しないで!
だけどそれよりも、私がそれなりに行動していることの意外さが勝ったようで、どうにか珂月ちゃんを席に戻すことに成功した。