20.ツ〇スターゲームをしましょう
ツイス〇ーゲームとは。
赤や黄色、青とった丸印が規則正しく並べられたシートを床に敷いて遊ぶゲームである。
一人が指示を出して、二人以上の参加者がその指示通りに動く。例えば『赤に左足』といった具合に。その時、身体の他の部位……膝やお尻といった部位が床についてはならない。両手両足だけを使って、参加者が全員崩れ落ちるまで耐え続ければ勝利となる。
これは身体全体を使うため、それなり以上の体力を使う遊びでもある。普段はしないようなキツイ態勢で数分耐えなきゃいけないからね。
しかし今回に限っては、そんなことは問題ではないのだ。
「男女でツ〇スターゲームとか馬鹿じゃないですか?それとも泥酔でもしてるんですか?」
遅れてきた清並が、俺たちの言いたいことをばっさりと言ってくれた。
まさにその通りだ。これは遊びだが、高校生という思春期真っ盛りの男女が行えば、一転して危ない遊びになってしまうのだ。
だって男女の互いの身体が絡み合うんだぜ?文字だけ見ても卑猥じゃないですかやだー。
「じゃあ王様ゲームにするか?それともポッ〇ーゲーム?でもせっかく準備したんだ、純粋に楽しもうじゃないか」
そもそも何故このシートを持っていたのか問い詰めたところ、来たるべきのために常に持ち歩いているそうだ。
「いやいや……にしたってこの割り振りは洒落にならないだろ……」
指示出し:委員長、大辺・大葉ペア
指示出し:清並、紫瞳・夢有ペア
さて、色々と突っ込ませてもらおうか。
まず真人、俺を殺したいならそう言ってくれ。このペアは俺を精神的にも物理的にも殺してしまうこと請け合いだ。後者の執行人は清並ですね。だってあの子、まばたき一つしないで俺のこと見てるもん。
次に真人、お前死にたいのか。というか大葉に首を絞められて、既に死んでないか?何で自ら死にに向かうようなことをしたんだ……相談してくれよ、友達だろ?今からでも相談して下さいお願いします。
あと真人。だからお前、夢有から事の真意を聞きだす話はどこいった。
委員長、なぜ許可を出した。
清並、俺を殺すな。これはくじで決まったことだ。
大葉、いいぞもっとやれ。
そして夢有、もっと嫌がって。赤面してる場合じゃないから。俺から見ても顔が紅いの分かるぞ。
あなた好きな人がいるんでしょ?こんなことやってる場合じゃないでしょうが。
「いやマジで止めようぜ。冗談にならないから……しかも風紀委員がやるとか、真面目に指導ものだぞ」
「別にいやらしいことをする訳じゃなし。それに行き過ぎたときは、私が責任を持って止めるから安心したまえ!今は童心に帰って楽しもうではないか!」
ワハハと笑う委員長。
この人がノリノリだから、大葉も清並も強気に出られないんだよなぁ……今日の朝こそあんな感じだったが、いざとなれば有能な人らしいし……。
「なあ夢有、お前も言いたいことがあったら言っていいんだぞ?遠慮なんてしちゃいけない」
さっきから黙りこくっている夢有に声かけ……ヘルプを求める。
今や意見出来るのは彼女だけだ。
「遠慮、しなくていいの……?」
「もちろんだ」
「……うん、それじゃあ……私も、思いっきりやるねっ!」
……あれぇ?
「よーし、じゃあ早速始めよう!第一回、風紀委員ツ〇スターゲームの始まりだ!」
……あれぇ?
△△△△△△△△△△△△△△△△
「じゃあ読みますよ……紫瞳さん、左足を青に」
始まった。始まってしまった。
清並の超低音ボイスも相まって、まるで呪文をかけられている気分である。あ、これから社会的に死ぬだろうから間違ってないね。
まずは普通に、左足を一番端の青丸へと乗せる。
使われている色は全部で四色。それが一列ずつ、四×七の長方形の形に並んでいる。
既にわざと負けたりするようなことがあれば、永遠に続けるという布石を敷かれていた。真剣勝負で手抜きは許さないという委員長のお達しだ。
だからとにかく、夢有との接触を避けねばならない。俺に出来るのはそれくらいだ。
「次に夢有先輩……赤に右足を」
「は、はひっ……!」
声裏返ってますよ夢有さん。恥ずかしいなら止めようと一言声を上げてくれればいいもの……を……?
「……あの、夢有?」
「にゃ、にゃにかな紫瞳くんっ!?」
「いや……なぜそこを選んだ?」
夢有は指示通り、赤色に右足を置いた……俺のすぐ近くの赤色に。
あれー?俺は一番端の青色を選んだ訳だから、夢有は俺とは逆方向の、向かい側にある端の赤色を踏めば良かったんじゃないかなぁ?
このシート、四×七の長方形なんだけどなー……。
「お、思いっきりやろうと思ってね!?ほ、ほら!真剣勝負だから……亜紀、頑張りゅ!!」
「いいぞ夢有!ナイスファイトだ!」
『ナイスファイトだ』じゃねえんですよ!!
何で急に勝負を意識しだしたの!?君そんなキャラじゃなかったよね!?雰囲気に飲まれて、完全にてんぱってるようにしか思えないぞ!
こ、これはまずい……初手から夢有の息遣いが聞こえるほどの距離感になってしまった……っ!何なら温もりさえ伝わってきそう。
というか俯いて自分の制服握り締めてるじゃん。だから恥ずかしいならやらないで!
どうするっ……!?
俺は距離を取るために端を選んだというのに、それが裏目に出て、夢有に追い込まれてしまった……っ!
俺の後ろにはシートすらない、まさに断崖絶壁。つまりどんな色が出ようと、必然的に夢有との距離を俺自ら縮めなければならない……っ!
「ぐ、ぎっ……紫瞳ざんっ……右手を緑に……っ!」
清並の歯ぎしり音がやべぇっ!
しかも緑……一番右端の列じゃないか……っ!
すぐそこには右足をシートに乗せている夢有。
考えろ……最善手を考えるんだ……右手だけに?やかましいっ!!
俺はまだ、死にたくないっ……!!
「ここだ……っ!」
俺が選んだのは、これまた端の端の緑色。というか実質、ここ以外に選択肢がない。夢有がいるし、態勢的に辛いし。
ふっ……やれるっ……まだ俺は戦えるぞぉ!
「よし、次は夢有の番……」
「し……紫瞳くんっ……」
「へ……?」
夢有の泣きそうな、熱っぽい声が聞こえて、見上げてみた。
そう……俺は今、右手をシートにべったりと付けている状態なので、どうしても腰を曲げて体勢は低くなる。
だから見上げた。見上げてしまった。
すぐ近くには、立っている夢有。
その足元でかがみこんで、その夢有を見上げた俺。
彼女は学生服……つまりスカート。
スカート。
スカート
……夢有のスカートの中を……見
「し”と”う”さ”ん”?」
次回。俺、死す。
 




