15.風紀委員と話しましょう
『紫瞳は帰宅部だったよね?特に習い事をしてる訳でもないし、時間はあるでしょ~。だから風紀委員に入ってくれないかな。ご家族からも許可はもらってるからさ』
普通に考えて俺の許可が先じゃないですか?
いや、ホントに待ってください。聞きたいことが多すぎます。
……えと、まず何で俺を勧誘するんですか。
『色々と理由はあるんだけどね~。うちの風紀委員会は人数が少なくてさ、男子生徒なんて一人もいないの。だからどこにも所属してない紫瞳を誘いたいなって』
帰宅部の男子生徒なんて俺じゃなくても、いくらでもいるでしょう。
まだ五月も始まったばかりですし……それに、確か風紀委員会の副委員長は、あの夢有でしたよね?だったらすぐ人手なんて足りると思いますが。
『またまた~。男が一人もいないなんて、何か察してもいいんじゃない?察しが悪いとモテないよ~?』
……だから、何で俺なんですか。
視力が低い俺じゃ、見回りもろくに出来ませんし……完全にお荷物でしょう。
『あら、お荷物になる自覚はあるんだ。じゃあ……今のうちにお荷物になって、色々と気付いていってほしいな~』
……
『っていうのが、君を誘ってる大部分の理由かな~。厳しいこと言うようだけどね』
……先生ってホント、生き方を損してると思いますよ。そんなことしても給料は上がらないでしょうに。
『私にとっては”そんなこと”じゃないからね~。それで、入ってくれるよね』
いや、言い方……
それに、今の段階で夢有に近づきすぎるのは怖すぎるとういか……ああ、分かりました。でも、他の風紀委員が了承したら、ですからね。
『大丈夫だって。入るのに条件だの試験だのがある訳じゃないからさ。私も口添えするし、大船に乗ったつもりでいてよ~』
「風紀委員会は男子禁制です。お引き取り下さい」
ばりばり条件あるじゃないですか先生。
まず性別からアウトもらったんですが。
「こら、キヨちゃん!変な嘘つくんじゃない!せっかく男子生徒が来てくれたのに、もったいないじゃないか!」
「お言葉ですが委員長。ここに来る男子生徒なんて、みんな穢れた下心しか持ってないんですよ。邪魔なだけです」
もったいないって、人を対象に使う言葉だっけ?
初対面から十数秒、すでに俺を放置して二人の女子風紀委員が言い争いを始めていた。字面だけ見ると、二人の女子が俺を取り合ってるみたいに感じるね。実態はただの放置プレイだけど……真人なら気絶して喜びそう。
というか、最初に門前払いした人が委員長じゃなかったのね。
「あ~紫瞳?ごめん、いきなりこんなんで」
「……大葉?お前も風紀委員だったのか」
「紫瞳が来るのは亜紀から聞いてたよ。歓迎されてるかどうかは……まあ、見ての通りね。ただ一人、あの新入生が猛反対してるってとこかな」
清並綺麗。愛称。キヨちゃん。
それが俺を門前払いして、今もなお俺の入会を拒み続けている一年の名前だという。
絹糸のような白い髪をツインのおさげでまとめていて、名前通りの清楚な風貌だとか。ちなみに赤十字の髪留めをしているらしいのだが……俺には怒りのマークに見えて仕方がない。
さっき血管が浮き出てんのかと思ってビビりました。
そして幼さを残す童顔でありながら、あの容赦ない物言い。基本的に誰にでも敬語であるのが、逆にそれを際立たせていた。
「んで、あの高身長で茶髪ロングの人が委員長。ピョンとはねたアホ毛がチャームポイントね。あの人は紫瞳の入会にも前向き……あくまで男手の観点からだけど」
「……」
「……悪く思わないであげてね、今の風紀委員はホントに男がいないからさ。男手が必要なのよ」
「別に、泣いたりしてないし?」
いつもより視界がぼやけてる気がするけど、泣いてないし?
物みたいにもったいないって言われたけど、気にしてないし?
「……え、まさか夢有を含めて四人だけか?全員女子で?」
「本当はもっといたんだけど……そうね、今はこの四人で全員よ。あとは全員辞めて……辞めさせたわ」
いや、怖いんですけど。
俺も辞めていいですか?まだ入ってすらいませんが、辞めてよろしいか?
「まあでもジャージ先生の推薦なんだから、キヨも聞く耳を持つわよ。今はちょっと荒れてるだけで……ほら、まずは座って話しましょ」
「……分かったよ……って、夢有?そんなとこで何やってんの……?」
なんかずっと風紀委員室の隅で体育座りしてたんだけど……いやだから怖いよ。一瞬幽霊が見えたのかと思ったわ。
ここに来てから怖いって感想しか抱いてないってのが怖いよ。
「……紫瞳くん、何でさっき敬語だったの……?わ、私何か悪いことした……!?それなら謝るから、ごめんなさいするから……!敬語はやだよぉ……!いつもみたいに接してよぉ……!」
怖い




