プロローグ
知っている駅だ、たぶん●袋駅だろう。それしかわからない。
改札を出て、商店街に向かう。
今は朝なのか夕方なのか…空は真っ赤だ、太陽はどこにあるのだろうか。
交番を過ぎて商店街の入り口に差し掛かる、お坊さんなのだろう、組体操のように何十人も並んでいる、重なっている、まるで塔だ…高い。
UEEEEEEEEEEEE
お経だ、何のお経だろう、わからない、とにかくお経だ。
UEEEEEEEEEEEE
道行く人の数人が、彼らに手を合わせて、うつむきながら商店街に入っていく
お坊さんと似たような服を着た女性たちが、紙を配っている。
「VASHAAに従いなさい」
そう書いている。
VASHAAとは何だろう…きっと怖いものだ、恐ろしいものだと思った。
UEEEEEEEEEEE
お経はまだまだ続いている。きっとここはそのVASHAAの街なんだろう。
商店街の中は普通だ、きっと普通の店がいっぱいあるに違いない、喫茶店もあるし、お茶の葉を売る店もある…ほら、普通の商店街だ。
ぜったいに路地には入らない、はいったらきっと怖いことが起きるんだ。
「さあ、いらっしゃい。さあ、いらっしゃい。」
シャッターが閉まった何かの店の前で、たぶん70歳過ぎだろう、おばあさんだ。無表情でその言葉を繰り返している。
何があるのか…「さあ、いらっしゃい。」の言葉に従ったらどうなるのか、興味があるけど、それを打ち消す。
UEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
お坊さんたちの塔から離れれば離れるほど、お経が高くなるような気がする。
前方から…パレードだろうか…きっと人間じゃないんだろうな…だって、通行人たちがうつむきながら避けているから、きっと、いや絶対に良くないモノなのだろう。
ああ、よかった、すぐ右横に小さな喫茶店がある、そこに入ってやり過ごそう。
店内に入ると、入り口の傍、窓際の席しか空いてなかった、座る。
ウエイトレスがうつむきながら、注文もしていないのにコーヒーを置いて、うつむいて去っていく。
ほかの客もうつむいている。
パレードが通りかかる、
絶対に見ないと決めた、寝たふりをしよう。もう目をつむるしかない。
「その目で見なさいその目で見なさいその目で見なさいその目で見なさい」
なぜか頭に声が響くが、従うものか…
この商店街を無地に通過して、おばあちゃんの家にいかなくてはいけない。
ここで壊れるわけにはいかないんだ。
そのためには…まずは眠れ…眠ったふりでもいいから眠るんだ。