4月19日-1
「暇だなぁ」
「暇だなぁ……ヒマダナァ……ヒマダナァ……」
あれ、おかしいな。
俺は自室で独り言を呟いたはずなのに、どうしてやまびこが聞こえてくるんだろう。
「やっほーーー」
「やっほーーー……やっほー、ゴホッゴホッ」
あれ、おかしいな。
やまびこって、咳こむことあったかな。
「やっほーーー……ヤッホー--……ヤッホ-」
「あ、そこから仕切り直すのね」
「さて、私は今暇でしょうか?」
「暇じゃなかったらここで漫画読んでないよな」
今日は土曜日。しかもまだ8時半。
なので、俺はまだ布団から出ることが出来ない。
なのに、楓が俺の部屋にいる。
ん……???
「え、俺のお母さん、俺まだ寝てるのに楓俺の部屋に入れたの?おかしない?」
「おばさんの代わりに拓真を起こしてあげて〜〜って言ってたよ」
自由過ぎるだろ。目を覚ますのは俺じゃなくて俺の母親だよ。
いや俺もか。だってまだ布団かぶったまんまだし。
お、綺麗に575になった。季語がないので川柳だな。
「ねー、新しく何か漫画買ってよー」
「買ってるぞ?読むか?」
「あ、今は良いです……」
「チッ」
クソ、こいつ俺がエロ漫画の話をしてることに気づきやがったな。勘のいいガキめ。
「そういえば思い出したけど、楓って二次元アンチなのに、どうして漫画ばっかり読んでるんだ?」
「だってーー現実はもっと面白くないんだもーん」
「いや酷え言い草だなオイ。もうちょい色んな趣味を開拓すれば良いんじゃないのか?」
「これでも私、自分が飽きっぽいの自負してるから、誰かと一緒の趣味じゃないと長続きしないんだよねー……」
「チラチラこっちみんな」
「私に背中向けてるのによく分かったね」
「男は大体身体の音や足音に敏感になるんだよ。深夜にケータイ使ってたら突然母親が部屋に来てケータイを取り上げていく恐怖を味わえお前も」
ゲームの音で掻き消されるような母親の足音に比べたら、今楓の首が振り向いて服と擦れ合った音など余裕で聴き取れる。
「うわ……想像しただけで気まずいんだけど」
俺の母親、俺に対しては第六感、いや第七感まで働いている気がする。
「他にもあるぞ。深夜にリビングでゲームをするために、ちゃんと両親が寝静まったかを確認するせめぎ合いが毎日行われているからな」
「へー、男の子って、そこまでして戦わなければいけない理由があるんだね」
「当然。ふとした瞬間に聞こえる物音が、機械の音か母親の足音かを判別出来ないと○○されるからな」
「戦場で培った経験なんだね……」
どうみても俺が100%悪いことは気にしてはいけない。
「まあ話は逸れたけど、一人で出来る趣味同士で繋がるって発想は無いのか?SNSとか」
「私にオフパッカーになれと?」
「言ってないだろ、せめて女子会開けよ」
「知らない人と会うの神経使わない?慣れたら別にいいけどさ」
「確かにな」
「それにさ、チャットではまともな人だったとしても、リアルで会ったらマトモじゃない地雷みたいな人だっているじゃない?佐藤 楓って人がそうなんだけど」
「くっそー、俺の言いたいセリフ取られた」
「待て、私に自虐させろや」
………???
「今のツッコミ、何だ?」
「多分考えたら負けのやつだね」
この世には、考えるべき物事と、考えるべきでない物事がある。これ真理。
「あれ、なんの話だったっけ」
「拓真が私の趣味探しの為になけなしの金を払ってくれる話」
「奢る前提なんやな。いうて金なら割とあるぞ俺」
「そうだよね、ゲーム買う以外にお金使わないもんね」
「むしろ楓が使いすぎなんだよ。よく金足りてるな」
「え?足りてないよ。10万くらい」
「ヤバイやんそれ。5時間分じゃん」
「……カス」
「はい、すんませんした」
「出世払いだから。実質奨学金だから」
「悪かった、悪かったから蹴らないで」
相生拓真、魂の一句。いやだから 川柳だって 季語ないし。
「せめて2時間分くらいじゃない?私の場合」
「え?人をカス呼ばわりして、そのボケ持ってくんの理不尽じゃない?」
「いやいや、ボケじゃないから。事実だから」
「……?余計に真実味が増すけどいいのか?」
「あっ………」
無自覚かよ。面白いなコイツ。
「しゃーない、口止め料として15分あげるよ」
「要らねえよ。というかもう15分使っちゃったよ」
「またのご指名お待ちしてま〜す」
「しかも指名オプション付けてたんだ俺」
「妙に詳しいね?」
「ややや、やってないからな俺は!」
「やってたら犯罪でしょうが……」
「まだ!」
「しかもやる気なのかよ」
「あー、喋り疲れた、お茶持ってくるから待ってろ」
「あれ?朝ご飯はどうしたの?」
………あ、ガチで忘れてたわ。
「どうする?あーんしてあげよっか?」
「離乳食かよ」
授業が暇すぎて書いてたら一時間で書けました。ビックリ
感想マジで欲しいです、モチベになるので。