7月31日-1
例えば、こんな青春を。(https://ncode.syosetu.com/n7722fx/)というタイトルで、二人が告白するif(?)の短編を投稿しました。
できればそちらにも感想やブクマなどしていただけると嬉しいです。
「今日こそ海行こうよー」
「嫌だ、俺は今日ソシャゲイベントの最終日で忙しいんだ」
行こうと息巻いたはいいのだが、外が連日の猛暑日だったこともあって、俺の海に対するモチベーションというのはダダ下がりしつつあった。
ほら、わざわざ暑すぎる日に海で遊びに行くなんて日焼けしちゃうじゃないですか。
まあ日焼けなんて俺は全く気にしたことないけどな
「もう!ゲームで忙しかったり、勉強で忙しかったり、忙しいフリで忙しかったり!
いつだったら遊びに行けるのさ!」
「忙しいフリで忙しかった日だろ。というかその日行く気満々だったのにむしろ楓のせいで行けなくなったのが悪いんだろうが」
「まあまあ。私が予定を忘れてたからね、それはしょうがないよね」
「どこがしょうがないんだ?」
「それはさておき、どうすれば拓真を海へ引きずり出せるの?」
「そうだな……じゃあここが海だと仮定しよう」
「うんうん。それで?」
「えーい、バシャッ。わーい、プカプカ。きゃはははっ!!ざばーん」
「あれ?もしかして、楓ならこんなので満足するって舐められてる?」
「違えよ。今のは俺と楓を取り巻く群衆の騒音の真似だよ」
「え!?そっち!?」
「ほんで、まあ気を取り直して」
「はい」
「じゃあ楓は海に行ってナンパされて困ってるお姉さんの役やってくれ」
「お、いいねぇ。私が喜ぶ配役分かってんじゃん」
「んで、俺はお姉さんが来ている水着の役やるから」
「素股!!!それ素股だから!!」
ノータイムでパーフェクトなツッコミを飛ばされた。すげえ。
「0秒でそのツッコミ、、やるな(笑)」
「いや、やるな(笑)じゃないんだよ?拓真は女の子に何をやらせてるの?」
「性癖の新規開拓ですかね?」
「私でやらないでよ……」
「じゃあ他に誰でやれと?」
「他の誰でもやるな。困るから。
というかそもそも海に行こうって言う話だったでしょうが」
「しゃーない。行ってあげますか」
「というか、元はと言えば拓真が【私のおニューの水着が見たいぜっ!】ってところからこの話始まったよね?どうした?」
「いや……外暑いし……面倒だし、人混みマジ無理」
「どっからその設定持ってきた?今の今までそんな属性持ってなかったよね?」
「男子3日会わざれば刮目してみよってやつだな」
「そんな余計な属性いらないから。そうやってやらない理由ばかり探し続けてるから未だにモテねえんだよ」
「……はい、行きます、、、」
血も涙もない正論によって、俺の快適自宅ライフは奪われることになった。
俺がモテない理由の一割ぐらいはお前のせいだろ。
予め水着を着てく方が荷物が減るということで、先に身支度を済ませて外で楓を待つ。
アイツうっかり下着の着替え忘れてトンデモないことにならないかな。
鉄の意思でネタにしてやるというのに。
「ほーい、お待たせ」
「おーう、待ったぞ。
あれ、もしかして今日の服ってこの間買ったヤツ?」
「そう!拓真が選んでくれたヤツだよね」
「アレって俺が選んだ扱いになるの?」
「え?そうじゃない?候補は私が提示したけど、最終的には拓真が選んだ方の服でしょ」
「いや、まあそうだけど、、」
『楓の服を俺が選んだ』というのが何だかもどかしいというか、童貞くんの俺には刺激の強い言い方だ。
いつかそのうち彼Tシャツとか言って俺の制服で登校し始めたりするのだろうか。それは校則違反だよ。
『童貞をころしそう』という単純な理由だけで選んだシースルーの黒いワンピースが今更になって俺を揺さぶりにかかる。
さっきまで持ってたはずの鉄の意思はすっかり溶けてしまった。
「今日は一つ結びなんだな」
「海で濡れちゃうからねぇ、帰ったらちゃんと洗わなきゃ」
「行く前からそっちの心配かいな」
「何を!?髪は女の命だって、教科書にも書いてあるでしょ!?」
「ねえよ、どこで売ってんだよ」
冗談はともかく、楓はこの髪にもかなり自信を持ってるらしい。
それに見合うくらい、ツヤのある髪の毛が今日も陽に照らされて光っている。
どこを切り取っても美しいとか美のイデアかよ。羨ましいな。いや、羨ましいか?
いや、流石に今回は羨ましいな。俺も美しくなりてえな、内面だけでも。
「冗談はさておいて、そういえば海に行くなら一つ提案しておきたいんだけど」
「ん?なに?」
「今日だけ、ガチで付き合ってるという設定で行かないか?」
「何そのセーフティーネットありありな告白は。ネット貫通させるくらいこっ酷くフッてやろうか?」
「やめて。それは例え嘘でも俺のメンタルが耐えらえない」
「そうだよね。本気でやりなら拓真はド直球に『好きです』って伝えるタイプだもんね」
「あれ?もしかして、無駄にハードル上げられた」
「わーい、楽しみにしてるね」
「まあまあ。未来の俺ならそのくらい余裕だろ」
便乗して俺も未来の俺へと告白を丸投げすることにした。頑張れー未来の俺。
「話戻すけどさ、それって私が恋愛ごっこから始まる恋愛が嫌いと知ってて言ってる?」
「戻せてねえよ。お前の地雷原にはどこに地雷があんのか全くわからねえわ」
「2次元全般と胸くらいじゃない?あとは知らん」
「お願いだから自分自身のことくらい把握しといて……」
「んで、本当のところは?」
「もしも楓がナンパされた時に、『お誘いは有難いけど、私には彼氏が……』って言いかけて『え?俺たち付き合ってるの!?』みたいな気まずい空気になったら嫌過ぎるだろ」
「それどうみても拓真が戦犯だよね。ネタにしてもガチにしてもそこは話乗ってあげようよ」
「俺は自分自身を信用してないからな」
言葉に対して内容がショボ過ぎる。流石にこれでは大は小を兼ねられない。
「そういうことね、最初聞いたときビックリしたわ」
「むしろそれ以外に何があるんだよ」
「いや、拓真が私に欲情してうっかり襲っちゃう未来が目に見えてるから、強姦じゃなくて和姦ということにしたいのかなーって」
「そこまで未来予知できてるならもうちょっと頑張ろうよ未来の俺。
というか合意があるかどうかなんてそれはお前が決めることだろうが。
いやそもそも襲わねえわ」
本当は襲わないんじゃなくて襲えないだけのヘタレなんですけどねー。
それはそれでおかしいな。涙が出ちゃう。男のくせに。
???ちょっと待て、俺の意思は何処に行ったんだ。
「本当にー?ガキが……舐めてると潰すぞって思ったりしないの?」
「そうはならんやろ。少なくとも俺よりはお前の方がずっと大人っぽいよ」
「早くウチの胸も大人っぱいにならへんかなー」
まるでお腹に宿った我が子を愛でるかの如く、楓が平らな部分を撫でまわす。
ああ、またしても涙が出ちゃう。今度は別の意味で。
これからも毎日投稿するので、応援していただけると嬉しいです。




