7月3日(月)-1
「夏だ!」
「そうだな。梅雨開け宣言したもんな」
「プールだ!」
「そうだな。プールより海に行きたい派だけどな、俺は」
「テスト一週間前だ!」
「そうだな。ああ、再来週が待ち遠しいな。」
「ところで、拓真はテスト勉強大丈夫なの?」
「ん?大丈夫だったとしたら楓の部屋で現在進行形で土下座しているこの俺の姿は何なんだ?」
「開き直っちゃダメだよねそこ。というか恥ずかしいと思わないの?そんな格好して」
「恥ずかしいです!でも恥をかくだけで点数貰えるなら何でもやる所存です!!」
「そこまで来ると2,3周回ってむしろ潔いよね」
今日は普段と違い、俺が楓の部屋にお邪魔する流れとなった。
遊びに来ようと思ったからではなく、ノートを写させてもらうためである。
「助けて!問題集といても全然分からないの!!」
「普段から板書をちゃんと写してないからそうなるんだよ……」
「貸してください~ユアノートぉ~~」
「ダメ。英語で」
「Could you lend me your notebooks?」
「はいよ、第3文型で頼まれたから今日は3冊までね」
「え!?そういう仕組みだったのこれ!?」
楓からノートを受け取り、爆速で俺のノートへと内容を丸写ししていく。
それにしても、やっぱり楓のノートは分かりやすい。
行間をキチンと開けつつも授業の要点だけはしっかりとひとまとめにされていて、綺麗な文字と相まってまるで参考書を見ているような気分になる。
「それにしても、めちゃんこ良い匂いするなこの部屋」
「どうしたの?もしかして性癖にクリーンヒットしちゃった?」
「何でこんなにボディソープみたいな香りしてんの?消臭力でも焚いてんの?」
「消臭力は焚けないでしょ」
「すまん、アロマと混同しちゃった」
「アロマねぇ……友達の部屋に行ったとき凄かったよ。うひょー!!みたいな」
「今の『うひょー!!』から俺は一体何の匂いを読み取れというんだ」
「えー、なんか言葉にするのが凄く難しくて」
「あれか?耳たぶを耳朶と書くとエロいみたいな、そんな感じか?」
「それとは多分意味合い違うよね。別に発情はしてないからね私。
何て言うか、一言で言うと感動する匂いだったよ。え?ねえ嘘、やだ、こんなの初めて……みたいな」
「やっぱりそれ尿意なんじゃないのか?やっぱりオムツを――」
「何でよ!!オムツの話はもういいってば!」
「しー。あんまり騒ぐと俺たちがオムツではしゃいでる変態だってことが親御さんにバレちまうぞ」
「オムツで騒ぐってプレイにしてもマニアックすぎるでしょうが……」
喋ってから気づいたが、普通に楓のノートの方を褒めればよかったのにな。何でこっちの話題を振ったかな俺は。面白かったからいいけどさ。
「拓真が真面目に勉強しているところ、今年に入ってから全然見かけてないんだけど」
「まあまあ。朝自習はちゃんとやってるからまだ大丈夫……なはず」
授業を受けているときに、うっかり授業や勉強なんかよりも大切なものの存在が何かないかを考えて一人きりの世界へ閉じこもってしまうだけだから!
「板書のスピードが早すぎんだよ。5分も気を抜けば先生の話を聞くよりも板書を移す方に集中が移るから全然話を聞けないし」
「まあそれはあるよね」
「何で2年間で高3の内容まで勉強しなきゃいけないのか。進学校とはいえ詰め込みすぎだろ。阿呆かな?」
「左腕汚れるの面倒だから板書してないだけだよね」
「いやそれは正直言って、、ある」
だって汚れるんだもんノートに書くとき!
国語ならともかく、他の科目で縦書きにノートを取ることなどあり得ないから左の小指側の側面がすぐにシャーシンの黒で塗りつぶされてしまうのが何とも面倒くさい。
ほらほら、頑張って!拓真に出来るなら私にも出来る!
私にできる事なら拓真にだって出来る!
ごめん、俺男だから子どもは産めないんだよね……
いや、出来る!オメガバースの世界線ならできる!!
「俺はΩかよ」
「私はαだろうねぇ」
「誰が分かるんだよこんな話。
オメガバースじゃなくてシャドウバースとかの話題にしとけよ」
「誰も理解できないネタをブッコんでいくスタイル、ヤバいわよ!!」
「それはプリコネRだよ」
「拓真って2次元の守備範囲拾いすぎじゃない?守備職人?」
「そりゃあ小さいころからオタク文化を前面に浴びて育ってるからな、大体の2次元文化は全部カバー出来るぞ」
もすかうがテレビで流れていた時に空耳歌ってたら「え、拓真どこでこの歌覚えたの?」って母親にマジトーン聞かれて死ぬほど焦った嫌な記憶が蘇った。いかん世代がバレちゃう。
「3次元の文化は全然カバーできないのにね」
「俺結構その辺気にしてるんだからな?俺にも一応デリケートゾーンはあるからな?」
「えっ……
股間?」
「何だよ今の間は」
「いや……ふふっ、使ったこともないのに、痒くなるんかーってね」
「やかましいわ、楓の胸よりは使う機会あるやろ」
別に俺は身分を弁えているタイプのチェリーボーイなので、全くもって気にする必要はないんだけどな。
「へーそうなんだ。じゃあ今の『ふん、どうせお前の胸なんかよりも俺のおっぱいの方がデカいぜ』アピールいらなかったよね?」
「俺一言も言ってないがな?
というかまずバストサイズなんて計ったことないがな」
胸筋鍛えているマッチョとかならともかく、普通の男性のバストサイズなんてどこに需要があるんだ。
目の前にいる人にあったわ。
「じゃあ一旦スリーサイズ計ってきていい?」
「オッケー分かった。ノートは?」
「どうせ5分くらいで戻るから置いといて」
「あいよー」
なんかこう、席を立つ理由が俺のスリーサイズを測るためっていう謎の意味不明さが俺たちっぽいよな。
書いているうちに話が長くなっちゃったので一旦ここで切ります。
明日の朝には多分また続き挙げておくので見て頂けると嬉しいです。
実は感想やブクマなどを更新されないかなーとチラチラ見て楽しんでるので是非何か書いていってください。