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6月15日

「どよ~~~~ん」


「どうしたの拓真。今日は土曜じゃなくて木曜日だけど」


「だって今日から球技だったのに雨なんだぜ!?そりゃあどんよりするって」


「ああ、そっか、男子は今日から体育の授業が球技になるはずだったね」



そう、今日は『高校の授業における癒し』ことバレーボールが開催されるはずの日だったのに、雨が降っているせいで保健体育の内容に変更されてしまったのだ。



昼飯を食べた直後の身体が睡魔に勝てるわけもなく、起立の号令をかけてからわずか10分でクラスの6割ほどが夢の世界へと旅立っていった。



俺は曲がりになりにも学級委員だったので、それをちゃんと確認してから安心して眠りに就いた。長いものには巻かれろって言うし。


授業中 みんなで眠れば 怖くない 今日の一句の完成である。




「ああ~~バレーボールとかいう神スポーツがぁ~~」



「何でそんなにバレーボール推しなの?テニスとかサッカーじゃダメなの?」



「喋りながら出来るし、6人チームだから友達同士で組みやすいし、あとサーブをちゃんと入れるだけで勝てる。サッカーやバスケより100倍楽しいわ」



「やってることが女子と全く変わらない気がするんだけど」


「男は女子より単純だからな、性癖サーブマジで楽しいからやってみて」



「ちょっと待って何その見るからに不穏そうなワードは。嫌な予感しかしないんだけど」



「その名の通り、自分の性癖を叫びながら打つサーブだよ」



「うわあ、この世の終わりみたいなレクリエーションやってたんだねキミたち……」


「何が苦しいって、サーブが決まって連続ポイント取ると色んな性癖を叫ぶ羽目になるのがマジ苦しいよ」


「聞いてないし。というか先生も止めようよそれ」



「去年やった時爆笑してたからなあ……今年もやるだろ」


「はぁ……どうして男の人ってこうも変に性欲に対して素直なんだろうね」


「いいじゃないか、欲望に素直なのは大事だし、何なら今年は先生にも性癖を叫ばせるのが個人的な目標だからな」



「先生既婚者のはずだよね?大丈夫?そんなこと叫んだら奥さんに殺されないかな?」


「まあまあ、その辺は男の友情だから」


「ごめん、形成してる内容が汚すぎて反応に困る」


「男の友情なんて大体はそんなもんだよ。


他人と仲良くなるには結局人の悪口言うのが一番だし、同級生と仲良くなるには下ネタトークで盛り上がるのが一番手っ取り早いから。」


「……ぶふっ!」


「はい笑ったー楓アウトー」


「いや、だってさ、こんなに勢いよくツッコミだらけの文章ぶん投げられたら誰だって笑うでしょ!」


「ちなみに去年の持ちネタは『失敗をおっぱいで慰めてくれる優しい年上お姉さん』だけど」


「分かった、分かったからもうやめて……あっはっは!あはひゃ、ああもうお腹痛い……」


まるで梅雨に濡れて美しく咲くアジサイのように、楓が満開の微笑みを咲かせる。



俺がもしも恋愛に疎すぎるピュアボーイだったなら、この笑顔を見ただけでうっかり楓に惚れてしまっていたかもしれない。


そう錯覚させるほど可愛らしい楓の笑顔に、俺は間違えて見惚れそうになってしまった。


本気で笑った時の楓の顔は綺麗すぎて未だに直視しづらいのだが、問題はその笑いのツボがゲスイところにしか存在しないことである。


「こんなにいい笑顔してるのにな~~本当にもったいない」


もし今この写真を切り取って、これはどんな時の顔ですか?と他人に聞いたら、



『好きな人と一緒に帰っている時の顔』とか、『推しがメディア進出を決めた時の顔』とか答えてくれると思うんだけどな。



どうして正解は『男子のバレーボールが性癖暴露大会と知った時の顔』なんだろう。


マジで全てが台無し。美顔の無駄遣いにも程がある。



「だって、、『失敗をおっぱいで慰めてくれる優しい年上お姉さん』なんて、そのまんま私と駄々被りなんだもん……あっはは!!」


「え?……」


「もー、拓真。そんな遠回しに私が性癖ドストライクとか言っちゃダメだよ?」



「まあその……何だ、俺が悪かった」



どうしてだろう、見た目はほとんど変わっていないはずなのに急に哀愁漂う顔に見えてきてしまった。



「え?何の話をしているんだい?」


「目を覚ませ!今のお前はポジティブ気質だけども若干愛が重めな貧乳幼馴染だ!!」


あ、やべえノリに乗って口が正直に喋りすぎt―――




「ん?今何か言ったかい?」


「あ、あのー、楓さん?目が笑ってないのですけども」



やべえよやべえよ、楓パイセン怒らせちゃったよどうしよう。


目が笑ってない時の表情ってこんなに怖いというか異質というか、まるで現世に居てはいけない怨霊のような表情だ。


もしかしたら俺はつるぺたの幽霊に呪い殺されてしまうのかもしれない。



「拓真?アナタは絶対に巨乳になった私の胸の隙間に顔を埋めさせて窒息死させてあげるからね?」


「どうしよう、喜怒哀楽のどの感情を使えばいいのか分からねえ」


「しまったなー、携帯の録音をちゃんと用意しておけばセクハラで脅迫することが出来たのに」


「それはマージでやめて。楓というよりクラスの一部愛好家から呪詛で殺されかねないから。


話せばわかるから、な?そういう実力行使はやめような?」


「大丈夫?その台詞、死亡フラグにしかなってないけど」


「遺骨は海に撒いてくれ」


「海に撒くのは骨じゃなくて灰だよね?」


「あ、ヤバいまた素で間違えた……」


やはり雨の中を歩いているせいで気分がどよ~~んとなるのが悪いのだろうか。


イマイチ言葉にキレがない気がする。



「やっぱり雨ってのは気分下がるよなぁ。気圧も下がるし、寒いから体温も下がるし。


そして言葉のキレも下がるし」



雨だからというよりは、雨のせいでバレーボールが出来なかったから気分が悪いのだけれど。



「まあまあ元気だしなって。手でも繋ぐかい?私体温高い方だから温かいよ?」


「実にありがたい申し出だけど、パスだな」


「あらら、意外。拓真ってこういう時は素直に頷くイメージだったけど」


「俺は予知しちゃったんだよ。手を繋ごうとした瞬間に傘の柄がぶつかってずぶ濡れになる俺の図が」


「へー、私は濡れないのね」


「そりゃあお姫様だからな。


現にこうやって俺の方が車道側を―――


バシャアッ!!!!


丁度その時、トラックが弾いた水しぶきが、俺たちを目掛けて直撃した。



「車道側を歩いて楓が濡れるのを防いだからな!!!!」


あーもう、最悪である。


楓が濡れないようにとっさに傘を斜めに向けて水を弾いたものだから、傘で防げなかった分の水しぶきをモロに喰らってしまった。


「おー、やるじゃん拓真。惚れ直したわ」


「一度目すら来てないのにウソ言うな。楓はそんなに濡れてないか?大丈夫か?」



そんな冗談を言ってもらえるなら、格好つけた甲斐が少しはあったかもしれないな。



「大丈夫。拓真がデコイになってくれたから」


「せめて護衛にしてくれよ、囮じゃねえよ俺は」


「今の働きで私の下僕から護衛に3ランクアップしたね」


「上がりすぎだろ。というか今まで下僕だったのかよ」


「これ以降のランクアップ機能は是非製品版を買ってお試しください」


「今日までの会話全部体験版の内容だったのかよ!


内容濃密すぎてよく分かんないことになってんぞ!!」



「まあ、雨には濡れてないけど、私の身体は別の意味で濡れちゃったかもしれないね」


「あー、それは。



いわゆる尿意ってやつかな。やっぱりオムツ履いて登校した方が良いんじゃ――」



「何でよ!!もういいよオムツの話は!!先月のでお腹いっぱいだから!!」



「じゃああれだよ、この話で今月のオムツ成分補給完了!ってことで」


「なんで私はオムツ成分を定期購読しなきゃいけないのよ!!」


「今なら12か月コースを契約していただいた方全てに、製品版をプレゼント!!」


「何でオムツが製品版プレイのための必須アイテムなのよ!!」



やっぱり面白いよな、楓。


性癖バレーボールとオムツの話しかしてないのにここまで話が盛り上がれる人間を俺は楓以外に知らない。




いや、知りたくもないけどさ。

毎日3000pvを達成しているなんて去年の自分にいったら感動してそうですが、


去年の作品の最高ランキングが日間12位(その時はたった100ptで12位になれた時代)だったので、


あくまでそれを超えることを目標にしています。


今回からもうちょい行間を空けて読みやすくしてみました。



話の内容だけでなく、読んでいて気になった文章なども感想や誤字修正機能などで指摘してくださると嬉しいです。


もちろん感想とブクマは永遠に募集しています。

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