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5月26日

「あ~~さむ、焼き芋が美味しい季節だな」


誰に言いたいわけでもない独り言を呟いて、朝の8時に家を出た。


俺が朝早くに起きた時は楓と登校することもあるが、別に毎日そうするわけではない。


楓と喋るよりも布団に包まっている時間の方が有意義だと無意識に脳が判断したとき、鳴っている目覚ましを止めて幸せな2度寝に入るというだけの話だ。


それに楓とはいつでも喋れるのに、どうしていつでもできる事の為に幸せな時間を削る必要があろうか。


そんなのは社会人になってからで十分だ、というのが勝手な俺の持論である。


以前この話をトシにした時に、何だそれ、勿体なさ過ぎだろというツッコミを頂いた。


全くもってその通りだと思うが、それよりも寝たいと思った時には既に行動が終わっているからしょうがないのである。




「さて、どうしますか楓さん」


「どうするも何も、やるしかないでしょ……」


「嫌だあああああ!死にたくない!!」


「え?進路調査って精神的な死に追い込まれるくらい過酷なイベントなの?違うよね?」


今朝配られたプリントの中に、進路希望調査票というものがあった。


「眩しすぎて見えない」とか、「来年の事を言うと鬼が笑うので分かるわけがない」とか書いてボケたいのだが、書いたが最後本気で親から怒られるのが目に見えているので断念しておく。


「そういえば、楓ってどこの大学行くんだ?」


「う~~ん、正直どこでもいいけど、やっぱり頭のいい大学の方が良いかな~って」


「まあそりゃそうだわな、話合う人の方が多いもんな」


「もしかして、私の事を遠回しに変人だとバカにしてる?」


「遠回り過ぎるだろ。Dくらい遠回りしてんぞ」


「え、どういうこと?」


「Dってほら、真っすぐの道を遠回りしている様に見えるだろ」


「……あー、なるほどね、いや例え分かりづらすぎやろ」


「楓の事だから、第一志望に【お嫁さん♡】とか書くかと思ったわ」


「どう考えてもそういうタイプじゃないよね私。むしろ正反対だよね」


「え?俺がヒモになるの?」


「お前を第一死亡にしてやろうか?」


「俺以外にとばっちりで殺される被害者さん可哀そうすぎるだろ」


「そもそもアレでお嫁さんとか頭湧いてること書いてる人たち絶対にロクなヤツじゃないよね。マイメロディとか好きそうだよね」


「ガチ偏見やめろ。いいじゃんかよ、カワイイし」


「じゃあ聞くけどさ、もしも鞄にマイメロディのキーホルダー付けて登校してる女の子いたらどう思う?」


「……意外とヤバいかもしれんな」


アニメにハマって2次元キャラのキーホルダーとかなら百歩譲って分からんでもないが、マイメロディだからな。絶対に闇深そうだよな。


「ちなみになんだけどさ、楓が求める男性の条件って何なの?」


「そう、それが難しいのよね。金を取るか愛を取るか。究極の選択じゃない?」


「なんで選択式なんだよ。両方取れば良いだろ」


「天才!?」


お前が馬鹿なだけだぞ。


「じゃあさ、どっちかと聞かれたら拓真は……金って答えるよね、そういう人だもんね」


「おい待て、勝手に俺を心の貧しい人認定するな」


「じゃあどっち選ぶの?」


「金だわな」


「でしょうね」


「そらそうやろ。むしろセックスレスなら体力も疲れないし最高じゃねえか」


「あれ?でもそしたら子どもは出来なくない?」


「言われてみればそうだな、それは困るな」


「へー、拓真でも子供は欲しいって思うんだね」


「浪漫だからな」


「いやー、流石に子どもの名前で【浪漫】くんはちょっと……」


「名前じゃねえよ。何でもう自分の子どもの名前考えてるんだよ」


「ああ、そうなんだ。拓真ってその辺用意周到だから既に決めてるかと思ってた」


「相手すらいないのに名前考えだしたらヤバいだろ。源氏名考えてるホストか俺は。


……いや源氏名でも浪漫はヤバいだろ」


「久しぶりに活きのいい2段ツッコミが出たね」


これ自分でボケて自分でツッコむ自作自演だから思ったより恥ずかしい。やめようと思えばいつでもやめられるんだけどな。タバコかよ。


「楓の場合はどうなんだ?金か愛か」


「う~ん、微妙寄りだけど金かなぁ、やっぱり。結婚生活の愚痴は最悪拓真に聞いてもらえばいいし」


「おい待て、惚気だとしても愚痴だとしても結婚してるのに俺とサシで呑みに行ったらアカンやろ」


「大丈夫、流石に指輪は外していくから」


「そこじゃないよな?アレか?寝取られ願望でもあるのか?」


「はいでたー、思春期特有の全身性欲回路~~」


「お、性欲爆発猿人シリーズ第二弾だ」


「シリーズものじゃないから。全刊集めても何にもならないから」


「週刊性欲爆発猿人、創刊号はなんと100円!」


「売っても赤字だよ。企画会議の時点で没にしておこうよ」


「というか寝取られジャンル知ってんのかよ」


「私だよ?知らないわけないでしょ」


「誇れないなぁ、それ。俺の部屋には置いてなかったというのに」


「その情報マジでいらないから。アレ系のジャンルはどう考えても女性側が欲求不満すぎるよね絶対」


「アレ系に限らず漫画の登場人物は全員性欲爆発猿人だからなぁ」


「そりゃそうだろうねぇ」


おお、人生で絶対に使わないと思ってた性欲爆発猿人という言葉がこんなにも早く使える日が来るとは。


「二次元のヒロインって凄いよな。妊娠するかどうか自分で決めることが出来るもんな」


「絶対違うよね。むしろあれだけ避妊せずにしてて全然子ども出来ないともはや不妊症の恐れすらあるよね」


「なるほどな、女の子たちは自分の不妊体質を気にしてあんなに若いころから子作りに励んでたのか」


「エロ本をそんな視点で見る人絶対いないと思うんだけど」


「昔から言うだろ。エロと戦争は文化を発展させるって」


「そんなヒドイところから生まれた文化なんて潰れてしまえばいいのに」


「何でだよ!エロってのは人や動物はおろか植物や道具、はたまた幽霊や妖怪なんかとも仲良く共存できる奇跡の文化なんだぞ!?」


「いや、流石に人以外はちょっと……」


マイナーなジャンルになればなるほど、絵が良くないと売れないから必然的に絵が綺麗な方がヒットするという罠。人の業は深い。


「話を戻すけどさ、拓真も結局私と同じ大学を目指すってことでいいの?」


「え?何それ?新手の拷問か何か?」


「別に勉強は拷問じゃないでしょうが……なんか今日の拓真、当たり強くない?」


「分からん、進路調査のせいで気が狂ってるのかもしれん」


「普段の2割増しくらいだね」


「普段の俺狂いすぎだろ」


「ちなみにさ、勉強を私が教えてあげるって言ったら乗り気でやるでしょ?」


「やらねえよ。お前の教え方で分かるやつ一人もいないだろ」


楓は天才肌というべきなのか、一度例題を解くだけで類題まで完璧に出来てしまうよく分からないタイプの人間なので、他人への説明がメチャクチャに下手くそなのだ。もちろん被害者は俺。


以前教えてもらったはずの数学のテストでは、何故かノー勉で挑んだ前回よりも点数が下がるというバグを起こされた。勉強して成績が下がるって何事だよ。


「えーでも一緒に勉強した方が効率上がらない?」


「そりゃあそうだけどさ」


【一緒にテスト勉強しよ~】と言いながら、本当にひたすら黙々とテスト勉強をするのが俺たちのやり方だ。そこにお喋りなど存在しない。だから正直俺はあまりやりたくない。


「一度勉強し始めるとさ、3時間くらいぶっ続けでカリカリやってんじゃん?」


「まあ、時折やってるね」


「あれ何?集中力ってそんなに持続するもんだっけ?」


「時間忘れちゃうんだよね、もうちょいやろう、もうちょいやろうって思ったらいつの間にか3時間経ってたわ~~笑笑みたいな」


笑笑って何?俺は苦笑だよ。おもんな今のツッコミ。


「あり得なさ過ぎて俺の中で勝手にオムツ履いてることになってるんだけど」


「ヤバいね、下着2枚体制じゃん」


「実際のとこどうなの?やっぱり履いてるの?」


「逆に履いてたらヤバいよねそれ」


「大丈夫だ。楓がどんな性癖を持っていようが、俺はお前の味方だぞ」


「オムツの話でその言葉出てくんの絶対にありえないと思うんだけど。


ってかまずオムツの話って何?」


「周りから見たら今の俺たちってオムツ連呼してるヤバい2人組だよな」


「周りから見なくてもヤバいよ」


「これで今日のご飯がオムレツだったら完璧だな」


「そうやって勝手にフラグ立てていくのやめようね?」


いやいやまさか、そんなはずはあるまい。



「ただいま~~」


「おかえり。今日のご飯はオムライスだよ」


「ぶっ……」


割と危なかった。

生活リズムが乱れまくってたので危うく毎日投稿が途絶えるところでした。危なかった。

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