~7~
ってか、何ですかコレ……。
晴人のアパートに一旦たどり着いた私たち。部屋の中央に何やら魔法陣のようなものが描かれている。
「美弥子、それの中央に立って」
晴人に指示され、描かれた円の中央に立つ。タッちゃんと晴人も一緒に。すると晴人は何やら呪文のようなものをブツブツ呟きだした。
すると描かれた円が急に光だし、私たちの視界は真っ白になった。そして、光が段々と小さくなり視界が元に戻ると、そこは晴人のアパートではなかった。
「ここ、どこ?」
「やあ、美弥子ちゃん。よく来てくれたね」
にゅっと顔をだしたのは晴人のお父さんだった。
ってことは、ここは晴人の実家!?
「健磐龍命様も、お帰りなさいませ」
晴人のお父さんがタッちゃんに恭しく頭を下げた。
「晴彦殿、晴人から連絡がいっているかと思うが、早速宝剣を使うぞ」
「申し訳ありません、健磐様。実は宝剣が先日から行方不明でして……。これがホントの治外法権(宝剣)なんちゃって……」
「面白くない冗談は止してくれ、父さん」
「なんと……。宝剣を失くしたと……?」
タッちゃんの顔がみるみる険しくなり、物凄い風部屋にが吹き荒れた。
「わあー、お鎮まりくださいませぇー」
慌てて晴人とお父さんが土下座した。
「アレを失くすとは、どういうことか!?」
「実は、先日大学の教授をしていると言う鷹野と言う男性が、歴史の資料として見せてほしいと言ってきまして、見せるだけならと思いまして出してきたところ、妙な術をかけられまして……」
それ、私を幽体化させた奴じゃないか!
「なんと不用心な。晴彦殿、その男が美弥子を術にかけたのだ」
「分かっております。今、式にその男の後を追わせております」
「そうか、一刻も早く見つけなければ、晴彦殿の処分も吝かではないぞ」
晴人のお父さんとタッちゃんが会話してるのだけど、タッちゃんがすごく偉そうに見えてきた。
「美弥子ちゃん、そこにいるんだよね。ごめんね、おじさんが不甲斐ないばかりに……」
さっき、『よく来てくれたね』って言ってたから、もしかしたら私の姿が視えているのでは?と思ったけど、どうやら違うようだ。
「美弥子、言っとくけど、守護神の健磐龍命様はこの神社の御神体だからな」
タッちゃんって、ホントに神様だったのね。晴人の言葉に私は慌てて頭を下げた。
タッちゃんは、私を見て微笑んで、
「そんなに畏まらなくてもいいよ。美弥子は特別だからね」
と言ってくれた。
タッちゃんの笑顔は破壊力満点で心臓がバクバクするわ。このままだとやはり心臓発作で早死にしそうだ。
「頼むから美弥子を虜にするのはやめてくれ」
晴人の懇願が聞こえた。
私みたいな人間がタッちゃんとどうこうなるわけないでしょ!?バカなの?
「まずは、宝剣を探すのが先だ。多分、鷹野のところにはないと思う、そうだろう?晴彦殿」
「その通りでございます、鷹野は宝剣とは別のところにいます」
タッちゃんは冷静に次にしなければならないことを判断している。さすが神様……。
「で、その宝剣がどこにあるのか見当もつかないし、どうするんだ?」
「いや、それが……。万が一のときのためにGPSをつけていたのだけど、どうやら剛老ノ滝にあるみたいなんだ……」
「じゃあ、早速そこに行けばいいんだな?」
「剛老ノ滝は現世と妖魔ヶ谷の狭間にあって、生身の人間がおいそれと近付けない場所なんだ」
晴人とおじさんの会話が凄く突っ込みどころが満載です。
「生身の人間は近付けないが、幽体である美弥子ちゃんなら近付くことができる。と言うわけで美弥子ちゃん、行ってきてくれるかな?」
「む、無理」
ちょっとコンビニに行くくらいの軽いノリで言われても、無理に決まってる。
「美弥子ちゃん、お願い?」
「俺からも頼む。美弥子、宝剣を取り戻してくれ」
晴人とおじさんに懇願されても、無理なものは無理。私が全力で拒否っていると、
「私がついて行ければ良いが……。そうだ。コイツを連れていくとよい」
タッちゃんが髪の毛を一本抜き取り息をフッとかけた。すると、それはタッちゃんに見た目ソックリな五歳くらいの男の子になった。狩衣を着ていて烏帽子を被っている。
「きゃー、ナニコレ可愛い~。ミニタッちゃんだ!」
今まで恐怖を感じていたことなど忘れて、ミニタッちゃんを見る。
「コイツは私の分身だ。少しは役に立つ」
「コイツとはなんだよ、俺のクセに。少しはじゃねぇだろ」
ミニタッちゃん、口が悪いようです。
「とにかく、宝剣がを取り戻さないことには妖魔退治できないし、行ってきて欲しい」
タッちゃんに言われたらなんか断れない。ミニタッちゃんもいることだし、渋々頷いた。