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山の都で神様が!?  作者: 月光小夜曲
6/9

~5~

 すれ違った(大事な事なので二回言いました)のだ。さっきまで私を追いかけ回していた晴人が、私に気づかないのだ。

 これはもしや晴人が私のことを諦めてくれた?そうだとしたらラッキーだわ。寿命が伸びる!ファンクラブの子たちに襲われなくて済む。


 自称守護神の方はというと、私の方をみて不思議そうな顔をしている。

「おい、晴人。美弥子、ここにいるよ?」

 うわ、自称守護神余計なこと言わないでくれ……。

「え?美弥子?そこにいるのか?」

 はい、いますとも。見えないフリしてスルーしようとしてるだろ?スルーしてくれて全然構わない。

「ウソだろ?……やられた」

 晴人の表情がみるみる怒りに満ちてくる。

 いや、どうした?

「美弥子、俺は今、お前の姿が見えない」

 は?何を言い出すんだ?とうとうイカれたか?

「晴人、私のことなんか嫌いになってくれて全然構わないけど?」

「美弥子、よく聞いてくれ。美弥子の姿も声も分からない。守護神がいなければ会話もできない。教授に何かされなかったか?」

「何かって、耳元でイケボ囁かれたけど。え?それがどうした?」

「それだけじゃないだろ?」

 怒気を孕んだ自称守護神の声。思わず身を竦める。

(しるし)付けられただろう?」

「徴?何のこと?」

 私の姿が見えている自称守護神が私を上から下まで眺める。

「あ、あった。首元に」

 自称守護神が私の首元を指差すと、私の姿が見えないと言っていた晴人の手が伸ばされる。しかし、その手は私に触れることなくすり抜ける。

「いやああぁ、気持ち悪いいぃぃ」

「おい、どうにかできないのか?守護神」

「んー、この術は厄介だよ。解くとなると、妖魔の持つ勾玉を神様に奉納して、御札を集めなければならない」

 ちょっと待て。なんだそれ。妖魔?勾玉?自称守護神の言ってることが現実からかけ離れすぎて、ワケわかんない。フィクションは本の中だけにしといてくれ。

「私は別に、晴人から見えなくてもなんともないからこのままでいいわ」

 その方が安全に過ごせそうだし。めんどくさいことはしたくないし。

「とにかく、だ。美弥子、驚かないで聞いて」

 自称守護神が続ける。 

 これ以上、驚くことあんの?

「美弥子は、今幽体なんだよ。体は多分、教授のところにある」

 はあ?幽体?なにそれ、美味しいの?

「今の美弥子は、幽体離脱と同じ状況にあるんだ。だから、美弥子の姿は人間には見えない。そして美弥子の体がそばにないということは、離れている時間が長引けば長引くほど本体が弱る。1ヶ月後の美弥子の誕生日までに体に戻さないといけない」

 ちょっと待て。本当にちょっと待て。それって私が死んじゃうってこと-!?

「私が……死ぬ……?」

「そういうことだよ。あの教授、なんてものを美弥子にかけたんだ!?」

 晴人も自称守護神も怒ってる。

「じゃ、じゃあ、早く教授のところに戻って……」

「無理だよ。大体あの教授、ここの奴じゃない。だから危機感持てって言ったのに」

 なんだよ、それ。そんなこと言ったって……。

 思わず涙が溢れてきた。

「美弥子、泣かないで。きっと助けるから。僕と晴人で」

 自称守護神がそっと肩を抱いてくれ、頬に伝った涙を拭いてくれた。晴人は私の姿が見えなくてイライラしているみたいだけど。

「優しいんだね。ありがとう、自称守護神」

「自称じゃなくて、ホントに守護神なんだけど。晴人のだけどね。それからタッちゃんって呼んでね」

「ありがとう、タッちゃん」

「美弥子……。必ず助けるからな」

「あ、ありがと。晴人」

 今は、晴人の言葉さえ嬉しかった。

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