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0章〜ベルとエル〜

「しょーーーり!!!!」

「魔物相手も、最近は慣れてきましたね」

「いまのはなかなか手強かったけどなあ。仁はどう感じた?」

「んなこた今どうでもいいだろ。おいガキ2人、名前は」

倒した魔物にはめもくれず、仁は今さっき追われていた二人に名前を聞くが、

ビクッとするだけで、口を開かない。

「仁、こわがられてる!」

「るせえぞあやめ!」

「まあまあ・・・とりあえず顔見せてくれないか?お二人さん」

優しく接する白斗に対して、多少躊躇いはあったものの、おそるおそる二人はフードをとった。

一人は頭に獣耳。もう一人は耳が通常よりも長い見た目だった。

「獣人に・・・エルフ・・・ですかね?」

「・・・そういえばこの辺に色々な種族が共生してる小さな村があるとか聞いたね」

「待て。ってことはーー」

想像は簡単についた。だからこそ仁も途中で言い淀んだし、白斗もそれ以上言葉を出さなかった。子ども二人の目に、涙がたまる。

魔物に村が襲われたのだろう。魔物と戦うすべはどこの村や街でも練られている。

だが、それでも圧倒的に力のある存在を前に、対処しきれない部分があるのもまた事実。

子ども二人が魔物に追われて村の外まで逃げている。それだけでその村がどうなったのか、予想は容易い。

「・・・・・・俺と仁は、この子らのいたであろう村に行く。二人はこの子らを連れて近くの大きな街で宿でもとってくれ」

白斗はそれだけ言うと、地図を広げて村の位置であろう方角へ歩き出した。

「え、白斗さん?私達もいきますよ!」

「そうだよ私らもーーっていたっ!なんでチョップすんの仁!」

「俺と白斗だけで充分だっつってんだよ。そこ二人を守る役も必要だろうが。とっとと行け」

仁はそれだけ言うとシッシッと楓とあやめに連れて行くように指示して、白斗の隣を歩き出す。

甲高い声の抗議が後ろで鳴っていても、彼らに気にする様子はなかった。





村は、全滅していた。

住民を食べ尽くしていた魔物達は跡形もなく殲滅した。

が、それでも、そこに住んでいた者の命は帰って来ない。

「・・・・なあ仁、魔王を倒せば、この世界は救われるんだよな」

「それでゲームクリアだ。俺達も元の世界に戻れる」

「この世界は、ゲームじゃない」

「感情を殺せ。情をうつしすぎんな。病んで、心が折れちまった時が俺たちの死ぬ時だ」

「お前ーー」

よくそんな風に冷静に割り切れるなとと、叫びかけた言葉がとまった。

仁の顔は俯き、固く握り締められていた。無理矢理、納得しようとしているだけだ。

「元の世界でよくやってたことじゃねえか。上司に不満があれど、理不尽なことがいくらあれど、その度に感情を殺してやりすごしてたろ?それと一緒だ」

ふざけた口調。それが強がりであることなんてすぐに白斗にはわかった。

「・・・・仁」

「?」

「いち早く魔王を倒して、世界を全部平和にして、元の世界に戻ろう」

当初の当たり前の目標を、白斗は声に出す。絶対に成し遂げるという意志のもとに。

「元の世界の奴らも、俺たちのこときっと心配してるぞ」

「おれはお前と違って、そんなに友達いねえよ」

その言葉とは裏腹に、了解とばかりに仁は手を振った。

それから二人は、できる限りの埋葬だけして、荒れ果てた村を尻目に他のメンバーのいる宿に戻ることにした。



そこから宿に戻り、村がどうなっていたかを情報共有した。

エルフと獣人の子どもにも伝えた。が、ある程度予想はしていたのだろう。

10歳くらいの見た目の二人だが、涙を目にはためていたが、泣きわめいたり大きく取り乱したりはしない。強い子達だと、勇者一行は感心する。

「で、どうすんだよこいつら」

「こいつらじゃないよ。獣人の子が『ベル』で、エルフの子が『エル』っていうんだって」

「いや、問題はそこじゃなくてだな」

仁とあやめがグダグダと言い争いを始めだしたが、結論は白斗の一言で決まった。

答えは『連れて行く』。

「『身寄りがない子に安全を保障してくれる場所まで連れて行く』・・・といっても、このあたりにそんな施設あるんですかね?」

「教会みたいなところだな。まあ気長に探すってことにはなるな。この世界の知識が俺たちにはまだ無いわけだし。・・・で、君達に質問だ。少し危険な旅にはなるけど安心出来る場所まで、俺達が連れて行く。ついてきてくれるか?」

楓と白斗が小さな二人に問いかけると、1度互いに顔を見合わせてから、2人は大きく頷いた。


こうして、勇者一行は4人から6人となった。


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