0章〜始まりのあの日〜
この物語は、魔王を倒した後に始まる物語だ。
目が覚めたら異世界にいた。彼らにとってその感想が正しかった。
気がつけば中世風の城。大広間と言われるであろうその空間に彼らはいた。
社会人サークルの団体である彼らは、年齢や職業もバラバラだった。その人数は、計20人。
「我らの世界を救ってほしい」
王と思われるその人物のあまりに身勝手な頼み。
ふざけるなと元の世界に返せと一度は突っぱねた。
だがその願いの必死さ、王の悲痛な声を聞いて、承諾せざるを得なかった。
彼らはそうやって勇者となり、魔王を倒す旅に出た。
「ほんっとに異世界なんだよなぁ」
見渡す限り大草原。冒険の休憩中に、そんなことを呟いたのは黒崎 仁。
24歳の青年だ。
「なんだ、今更だな」
そう言って笑うのは、仁と大学からの友人である宮本 白斗。
二人とも元の世界では社会人で、現在は勇者である。
魔王討伐のために異世界からきた20人は、特殊な能力を身につけた者もいれば、何の能力も持っていない者もいた。その割合は約半数といったところか。能力持ちの人間は魔王を倒すため、勇者として魔王を討伐するために王国を出た。とはいったものの、全員まとまって行動するわけではなく、王国の騎士団に入り、周りと自分を鍛えながら魔王を討とうとする者もいれば、傭兵集団を雇い、魔王討伐の私設部隊を作ろうとする者など、目的は同じであるが、やり方は人それぞれだった。
仁や白斗達が選んだのは、もっとも単純なやり方。
「数人パーティで魔王を倒すって・・・・ゲームでもいまさらやんねえぞ?普通に考えりゃ軍隊作って襲ったほうがうまくいきそうなもんだ」
「いや仁、俺は昔から思ってたんだがな。数人パーティで動くというのは、実に理にかなってるんだよ。つまりどういうことかというとだなーー」
「ーーお前って見た目見た目は普通のイケメンよりなのにオタクくさいところあるよな」
目をキラリとさせて語る白斗をみて、ため息をつく仁。
すると二人ぶん、クスリと後ろで笑う声がした。
「白斗さんはそういうところありますよね。まあそういう残念なところがあっての白斗さんなのかもしれませんが」
ふふっとほがらかに笑うのは元の世界では大学4回生だった藤宮 楓。
「まあ見た目誠実そうだから一般受けがいいのは白斗くんだよねー。仁は目つき悪いもん。ヤンキーのレベルだよ」
そう言ってアッハッハと活発そうに笑うのは、桐丘 あやめ。元の世界では高校3年生。
この4人で旅をしていた。それぞれ元の世界にいた頃にはなかった能力を持っている。
「なんでてめぇは白斗にはくん付けで俺は呼び捨てなんだ?お?あと目上への敬意どうした?」
「いたいいたい!アイアンクローはしないでよお!」
そんな会話をしていると、草原で影が二つ見えた。ある存在から、必死に逃げている。
その二つの影は、フードを深く被っているが、背丈から子どもだと推察できた。そしてそれらを追うものは元いた世界にはいなかった存在ーー『魔物』に襲われているのが見てわかった。人型の形をした鬼のようなソレは、必死に走る子どもの影を追っていた。
勇者4人は、瞬時に動いた。