※74.5
74話の夜の話
髪を乾かして部屋に戻ると、スマホにメッセージが届いていた。
『奏さんこんばんは。お兄ちゃんの妹の緋奈です』
緋奈ちゃんからだ。
続けて送られてきていたダル猫のスタンプが可愛い。
このスタンプは第二弾の実用性を重視したダル猫のスタンプで、可愛いながらも普段の生活で気兼ねなく使える商品となっております。値段は120円です。
『こんばんは。奏です』
私も同じ「こんばんは」スタンプを送り返す。
『今日はすいませんでした。色々と……』
「ごめんなさい」のスタンプ
『謝らなくていいよ。緋奈ちゃんとお話しできて嬉しかったからね!』
『私もです! おとちゃんもダル猫の勉強するって張り切ってました』
『それはダル猫ショップに行くのが楽しみだね!』
「わくわく」のスタンプ
『ですね! まだまだ語りたりません』
「きらりーん」のスタンプ
『それはまた会ったときにするとして。言い忘れてたことがあったんです』
『どうしたの?』
『知ってるかもですけど、再来月お兄ちゃんの誕生日なんですよ』
「ハッピーバースデイ」のスタンプ
えー! 知らないよ! 拓人君全然言わないし!
『そうなの⁉︎』
「びっくり」のスタンプ
『知らなかったんですね……。お兄ちゃん自分から言わないからなぁ』
「やれやれ」のスタンプ
わ、私も教えてないけど。
『それでですね、一緒にお兄ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行けたらなと思うんですけど、どうですか?』
『こっちからお願いしたいくらいだよ!』
「お願いします」のスタンプ
『決まりですね! お兄ちゃん、奏さんが自分の誕生日知らないって思ってるから、驚かせてあげましょう』
「わくわく」のスタンプ
『当日まで秘密でお願いします』
「お願いします」のスタンプ
『わかった。気をつけます』
「敬礼」のスタンプ
『拓人君、何がほしいとかあるのかな?』
『お兄ちゃんなんでも喜んでくれますよ。お母さんとお父さんは毎年図書券あげてます』
「やれやれ」のスタンプ
『緋奈ちゃんは?』
『文房具だったり、洋服とかですかね。あとはケーキも作ってあげてますよ』
「どやっ」のスタンプ
『あ、奏さんと一緒にケーキ作るのとかいいかもしれないです!』
『私も同じこと思ったよ!』
「いぇーい」のスタンプ
『まだ時間はあるのでじっくり考えていきましょう』
「にやり」のスタンプ
『そう言えば奏さん、今日お兄ちゃんのベッドで匂い嗅いでました?』
『っ⁉︎ ち、違うよ!』
『そうなんですか? 私はよくやるので。お兄ちゃんいい匂いしますよね』
え……? 緋奈ちゃん何を言ってるの?
思い返してみれば、あのときふんわり感じたフルーツの匂い。
もしかして緋奈ちゃんの……?
『これお兄ちゃんには内緒で。家に来たとき奏さんにもやらせてあげますから』
「お願いします」のスタンプ
わ、私は別に……そんなの……。
『……わかった』
「グッ」のスタンプ
『そろそろお兄ちゃん帰ってくるので、ご飯の準備します! 奏さんおやすみなさい!』
「おやすみ」のスタンプ
『うん。おやすみ』
「おやすみ」のスタンプ
「今私、いけないことをしちゃった気がする……」
拓人君に隠し事なんて。
「次はいつ行けるかな……」
枕に顔を埋めて、そう呟いた。
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