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久しぶりです。残念ながら生きてました。

これから早めに投稿できるよう頑張ります。

 十二月十二日。私は今日、十七歳になった。

 私の誕生日はいつもおじいちゃんとおばあちゃんと私の三人でお祝いするのが恒例になってたけど、今年は初めて友人を呼んで誕生日会を開くことになっている。これはおばあちゃんの提案だ。

 今までの人生で友人と呼べる存在を作って来れなかった私は、家に誰かを招くなんてことしたことがない。誕生日会どころか、友人を招くのも初めてのことだ。

 きっとおばあちゃんは、昔から私に友人がいるのか心配してたと思う。情けないことにこんな歳になるまで応えてあげられなかったけど……。

 だから今日は、これまでの心配を全部払拭させるため出来るだけみんなに声をかけさせてもらった。私には、こんなに素敵な友達が沢山出来ましたって胸を張って紹介するために。


「これだけ作れば大丈夫かな」


 仕込み等を入れれば約四日かけ作った料理達。全部一人でってわけにはいかなかったけど、過去最高の量と出来栄えであることは自信を持って言える。

 十一人も来てくれるのだ。少なすぎるなんてことはない。


「あとはケーキだけ……。おばあちゃん大丈夫かな」


 卵を切らしてしまい朝早くからおばあちゃんが買い出しを買って出てくれた。散歩のついでだからと。

 この時間だと開いてるのはコンビニくらい。だとすると一番近いのは駅前。寒いし遠いし……私も行けばよかったかな。

 そんな心配をしていると、タイミングを見計らったように玄関からおばあちゃんの声が聞こえてくる。


「ただいまかなちゃん」

「おかえりなさい……っておばあちゃん手から血出てるよ⁉︎」

「おや、気づかなかったね〜」


 ビニール袋を握る手には僅かな血痕。それにちょっとだけ服が汚れている。当の本人は特段気にする様子はない……むしろなんだか嬉しそうにも見える。


「な、何があったの?」

「ちょっと転んだだけだよ〜。卵が割れちゃってね〜。その時助けてくれた男の子が優しくてね〜」

「そっか……私も行けばよかったよ……。と、とりあえず手当てしよう」

「いいよいいよ自分でやるから。かなちゃんは料理に集中して〜時間もないからね〜」


 袋から取り出した卵を受け取って、洗面所へ向かうおばあちゃんの背中を見送る。

 怪我は心配だけど、おばあちゃんの言う通り時間はあまりない。

 今から作るのは誕生日に欠かせないケーキ。練習に練習を重ねて、やっと満足できるレベルまで到達することができた。その結果、当日作る分の卵が足りなくなっちゃったんだけど……。


「おばあちゃんありがと!」


 最後にそう声をかけ、私はエプロンの紐を締め直しケーキ作りへ取り掛かった。



 ※※※


 ──数時間後。

 完成した料理を並べているとチャイムが鳴った。

 さっきまでは普通だったのに、時間が経つにつれて体温が上がっていくのがわかる。そしていよいよその時が来た。


「お友達来たみたいだね〜。残りはおばあちゃんがやっとくからかなちゃんはお出迎えしてきな〜」

「う、うん!」


 廊下が長く感じる。ドアの向こうに初めて私を訪ねて来た人がいる。たとえそれが友人だとわかってても、この高揚は、ドキドキは、抑えられない。


「いらっしゃいませ!」

「おはようかなかな〜いらっしゃったよ〜」

「いらっしゃいませって! ここお店?」

「ま、かなの家だし間違ってないんじゃない?」


 一番乗りで家に来たのは、木葉、滝さん、加古さんの三人だ。

 家に招き入れる時はどんな挨拶がいいんだろう。料理以外のおもてなしを何も考えてなかった……。


「ど、どうぞ入ってください」

「おじゃまします〜これプレゼントだよ〜お誕生日おめでとう〜」

「私からも誕生日おめでとう」

「かなおめでとう」

「ありがとうございます……!」


 三人から渡されたのは、綺麗にラッピングされた小さな袋。中身はまた後で確認しよう。


「さてさてかなかなの部屋はどこかな〜?」

「右の扉です」

「隣の道場もかなのだっけ?」

「はい。おじいちゃんが柔道教室やってて」

「うわこのでかいダル猫人形買ったの⁉︎」

「おじいちゃんからのプレゼントです」


 木葉は私の部屋に入ると、隅に鎮座するダル猫のデカぬいぐるみに驚いている。

 おじいちゃんからこれを貰った時、私も同じ感じだったなぁ。突然大きい段ボールが家に送られて来たっけ。専用ホームページ又は専門店窓口での完全受注予約限定でしか買えないぬいぐるみ。どうやらおばあちゃんと一緒にお店まで予約しに行ったみたい。

 もちろん自分で買うか迷った。なんてたって拓人君と写真まで撮った商品だし……。

 しかし高校生のお財布事情では中々手の出しにくいお値段。今までの貯金を崩せば無理ではなかったけど、無茶ではあった。

 きっとおじいちゃんもおばあちゃんも一人で葛藤してた私に気づいてたんだろうな……。


「いいないいな〜柔らかくて気持ちいいな〜」

「……私にはこの猫に良さがわからん」

「ちょっと抱いていい?」

「どうぞ。加古さんも是非」

「う、うん……」


 いつだって布教活動は忘れてはいけない。ダル猫好きを一人でも増やさないと。

 三人にデカぬいぐるみを抱かせダル猫の良さを堪能させたところでリビングからおばあちゃんの呼ぶ声が聞こえてくる。


「ご飯の準備ができたみたいです」

「お腹空いた〜! かなかなの料理食べるために朝は我慢してきたんだよ〜!」

「あんた今日何のためにここにきたか分かってんの……?」

「かなかなの誕生日をお祝いするためでしょ〜。ご飯〜」

「お、おう……」

「加古さん大丈夫ですよ。来てくれただけでも十分嬉しいので。加古さんも遠慮なく食べてください」

「奏がそう言うなら……。というか香西は?」

「もうすぐ着くみたい」


 言いながら木葉が見せてきたスマホには、拓人君とのトーク画面。

 あれ……木葉とやり取りしてる時の拓人君スタンプばっかり。私のときはあんまり使わないのに……。

 そんなこと思ってると、充電器に繋いでいた私のスマホが着信を知らせる。相手は拓人君だ。


「もしもしたくたく〜? お腹空いたから早く来て〜」

「ちょっと滝さん⁉︎」


 拓人君からの電話なんて貴重で、私も全然したことないのに!


『……何で滝が』

「小さいことはお気になさらず〜」

『じゃ奏にもうすぐ着くとだけ伝えてくれ』

「了解〜じゃあ後で会おう〜」


 短い要件だけの会話だったけど……拓人君との電話……。

 ほんの少しだけ沈んだ気持ちのまま、おばあちゃんの待つリビングへ移動。

 料理はバイキング形式を採用したので、紙コップや紙皿など使い捨ての食器類も用意している。


「こんにちは〜いつもかなちゃんと仲良くしてくれてありがとね〜。お皿とコップそこにあるからたくさん食べてね〜」


 簡潔に説明だけしておばあちゃんは庭から外へ出る。これからおじいちゃんと道場の掃除をするみたい。


「美味しそ〜! どれから食べようかな〜」

「こら、せめて香西達が来るまで待ちなさい」

「わかってるよ〜。みゃーお母さんみたい〜」

「……それは嫌味?」

「まぁまぁ」


 拓人君気に入ってくれるかな……。好きな物を揃えたつもりだけど……。緋奈ちゃんの料理に勝てるかな……。

 さっきまで自信あったのに、時間が経つと不安になってくるよ……。

 なんて思ってると、庭の方から話す声が聞こえてくる。

 おばあちゃんが誰かと話してる? この声……緋奈ちゃんと拓人君⁉︎


「おおおおばあちゃん⁉︎」


 急いで庭に出ると、玄関先でやっぱりおばあちゃん達が話してた。

 私に気づいて手を振ってくれる緋奈ちゃん。一緒に来てくれた和坂さんと氷上さん。

 でも、それよりも……拓人君がおばあちゃんの手を握ってるのは何でなの⁉︎

読んでいただきありがとうございます!

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