ギルドと情報収集とテンプレ
大変長らくお待たせ致しました!
短いですけどどうぞ!
王宮を出た私達は早速情報収集を始めることにした。未開の地って訳じゃないけど年代が違うからきちんとした情報を集めなければいけないし、何より正しい情報が若葉を守ることにも繋がるからね。
「とはいえ桜よ。どこで情報を集めるつもりじゃ? ここらの土地勘などわしらにはなかろ?」
「確かに土地勘はないけど、私達がいた頃と何も変わってなければ、この国にもあれがあるはずなんだよね」
「あれとな?」
「うん。冒険者ギルドだよ」
ギルドへ向かいながら私は真緒に冒険者ギルドについて説明する。
「冒険者ギルド。正式名称、冒険者斡旋組合。そこは冒険者と呼ばれる者達を依頼に応じて派遣するいわば紹介所のような施設のことなの。ギルドは冒険者を実力に応じてそれぞれのランクに振り分けていくの。そして冒険者はその実力に適した依頼をこなしていくことで報酬を得て生活をする。強ければ強いほど高いランクを付けられて、その分難易度の高い依頼がくるが報酬も豪華になる。当然難易度が高いほど命の危険性も高いんだけどね。つまり冒険者ギルドとは命をかけてまで報酬を得たいという考えの命知らず達を集めて管理する施設なの」
「お、おう……。最後になんか余計な一言がついとるのじゃが……」
「まあ簡単に言えばこんなとこ」
「スルーかい……。しかし、それだけ聞いたらとても情報なんか集まるとは思えんのじゃが……」
「大丈夫。冒険者ギルドは普通全ての国にあるの。そして冒険者ギルドにはそれぞれのギルド間でだけ使える特別な通信機器があるらしいから情報共有はできている筈。ならどこの国のギルドも他国についての情報は持ってる筈ってわけ」
「なるほどのぉ。それなら行ってみようではないか。その冒険者ギルドとやらに」
真緒と適当に雑談しながら歩いていくとようやくそれらしきものが見えてきた。
「これだね」
「ほう。これが冒険者ギルドか。中々様になっとるのぉ」
冒険者ギルドの見た目は誰が見ても分かるように入り口の上に冒険者ギルドと書かれており、剣と盾のようなエンブレムがついている。これなら文字が読めなくても分かるね。まあ私と真緒は魔術で言語を理解できるようにしてるから大丈夫だけどね。クラスメイトは知らない。勉強でもすんじゃないの? というか昼間から騒がしいな。声が外まで聞こえてきてるぞ。
「とりあえず入ろうか」
真緒に声をかけて扉を押して入る。すると先程まで聞こえていた喧騒がぴたりとやんだ。中にいた人が全員こちらを向いているのが見てわかる。まあ私達は特に興味がないからスルーして受付に向かう。
「冒険者登録をしたいんだけど」
「あ、えと、はい! ではこちらの紙に記入をお願いします!」
「真緒って文字書けたっけ?」
「もちろん書けるぞ」
「いつ勉強したの……」
「そんなこと気にするでない。ほれ、お主もさっさと書かんか」
「それもそうだね」
ええと、書くことは名前と年齢、あとは職業か。私は魔術も剣もどっちも使えるけどどうしようかな。どっちも書くのはまずないとして……。
「ねえ。どっち使ってる?」
「剣じゃ」
「じゃあ私はこっちにするよ」
真緒が剣を使うから私は魔術の方にしようか。属性は水と風にでもしとくか。理由はなんとなく。
「これでいい?」
「はい確認致します。……サクラさんとマオさんですね。ではお次にこちらの水晶に触れていただけますか? ……はい、ありがとうございます。それでは登録してカードにするのに少々お時間がかかりますので、その間ギルドについて説明しますね。冒険者はランク順に分けられています。上から順にS、A、B、C、D、E、Fとなっています。新しく冒険者になられた方はFからスタートしていきます。皆さんには依頼をこなしていただきますが、もちろん依頼にもランクがあるので注意してください。受けられる依頼は自分のランクよりひとつ上のランクまでですが、Sランクの依頼はAランクの方でも受けられません。理由は当然ながら難易度によるものです。ランクを上げるためにはある一定以上の依頼を成功させないといけません。ランクが上がる際にはこちらからお伝えしますのでたくさん依頼を受けてください。ですがただ依頼を受けて成功させてもランクはDランクまでしか上がりません。Cランク以降に上がるためには昇級試験があるのでここも注意してください。ここまでで何かご質問はございますか?」
お、おう。いっぺんにきたな。けどなんかこの人最初と印象違くない? なんか最初慌ててた気がするんだけど。落ち着きが半端ないね。………あ、違う。この人最初の人じゃないや。いつの間にか変わってたのか。流石ギルド職員。おそらくベテランだね。それよりギルドについては私がセレンとナハトに聞いたこととほとんど変わってなかったから特に心配はないかな。
「私は大丈夫」
「わしも大丈夫じゃ」
「かしこまりました。それでは次に依頼の内容についてです。依頼は大まかに分けて四種類あります。ひとつは採取系の依頼。もうひとつは討伐系の依頼。そして護衛系の依頼。最後にその他の依頼となります。これは街の方々からの直接の依頼となります。あまり重要視されながちですが街の方々と関わることになるので信頼は得やすいかと。冒険者にとって信頼されないようになってしまってはおしまいですからね。受けといて損はないと思われますよ」
なるほど。
「また採取系の依頼や討伐系の依頼で獲られる素材につきましては依頼のときに説明させていただきますので、特徴が分からないことや討伐証明が分からないことはないかと思われますので聞き逃さないようにお願いします。そして討伐された魔物についてですが討伐証明以外にも素材になる部分もございますので、できるだけ綺麗に倒していただき持って帰ってきていただけるこちらとしてもありがたいです。報酬も上がりますのでオススメしますよ。持って帰って来れる用にアイテムバッグ貸し出しもしてますのでどんどん活用してください。説明は以上になります。最後に何か質問等ございますか?」
「大丈夫」
「わしもじゃ」
結構説明長かったけどほとんどが聞いたことあったから問題はない。
「かしこまりました。それではカードができあがったようなのでこちらをどうぞ」
と言って私達は緑色に縁取られたカードを受け取る。カードには何も書かれていない。
「カードに魔力を流していただけますか?」
言われた通りに魔力を流す。お、文字が浮かび上がってきた。名前と職業とランクが書かれてるね。なるほど。さっきの水晶は魔力をカードとセットにして登録するためのものだったのか。そりゃ盗難とかでなりすましが起きたら大変だもんね。よくできてるね。前にはなかった技術だ。
「盗難防止の魔術ですので本人以外には使えないようになってます。縁取られている色がランクを表しています。おふたりはFランクからのスタートですので緑となります。ランクが上がる度に色も変わりますよ」
それは楽しみだ。色が変わるのを見てみたい。まあそれはともかく今日はもう終わりだろうからさっさと用事を済ませてギルドから出ようかね。私が受付の人に本来の目的である情報収集をしようとしたときだった。突然ギルドの扉が大きな音を立てて開けられた。
「オラァ! どきやがれ!」
……なんか雑魚キャラの定番みたいなやつがきた。見た目は派手な革鎧を着たイカついスキンヘッドのおっさんだけど、こういうやつに限って見た目で冒険者を判断しそう。現に今私達のことを見て明らかに見下した顔をしている。
「おい。見ねえ顔だがお前らは一体何しに来たんだ?」
「決まってるでしょ。冒険者になりにきたの」
そう言うとこのハゲは大声で笑いだした。うるさいな。周りの冒険者も耳をおさえてるじゃん。
「お前らみたいな小娘が冒険者だと? こいつは傑作だ! 笑わせてくれるぜ!」
と言ってまた盛大に笑った。典型的な小物みたいでむしろこっちが笑いそうになるんだけど。
さてどうしよう。こういった典型的な小物には実力を示して周りをドン引きさせるっていうのが定番だろうけど、めんどくさいからしたくないんだよね。ここで目立てば直ぐに王宮に情報が行きかねないしなにより若葉に一瞬で私達のことがバレてしまう。それはできれば避けたい。でもそれは私の場合。そんなことを言われて隣の元魔王様が黙っているはずがない。
「ほう。ではお主みたいなデカブツは冒険者に向いていると? 的にしかなり得なそうな体躯で? 笑わせてくれるのぉ。力よりも頭の方が足りんと見える」
「んだとぉ?」
「なんじゃ、今言ったことが分からんかったのか? ならばもう一度言うてやろう。貴様には何もかもが足りないと言うておるんじゃ。わしよりも、桜よりものぉ。分かったらとっとと失せんかこのデカブツが」
「ほぅ? 言うじゃねえか小娘ごときが。なら冒険者の力というものを思い知らせてやるから今すぐ表に出やがれ!」
「そこまでですエルツさん! ギルド内での揉め事は禁止です! ましてや相手は新人ですよ!?」
ううん言うねぇ。受付嬢が止めようとしてるけど一向に止まる気配がない。私も止めるべきなんだろうけど面白そうだから放っておいて私は本来の目的を果たそう。
「ねぇ。少し聞きたいんだけどいい?」
「え? ええと……お仲間のことはよろしいのですか?」
「大丈夫。真緒は強いしあんな見た目だけのハゲになんか負けないでしょ。それより聞きたいことがあるんだけど」
「は、はぁ。なんでしょうか……」
「勇者召喚のことについて知ってる?」
私が聞いた途端受付嬢の動きが止まった。どうしたんだろう。
「えっと…ご存知ないのですか?」
「いや、私が知ってることは少ししかないからさ。ギルドで得ている情報と差異がないか気になってて」
嘘は言ってない。正直に伝えて周りを騒がせるより知ってることと知らないことがあるという風に思わせることが大事だ。案の定受付嬢は勘違いをしてくれた。
「そういうことでしたか。といっても私どもが得ている情報は微々たるものでしかありませんがよろしいですか?」
「大丈夫。それで勇者召喚のことについてどこまで聞いてる?」
「そうですね……。まず前回と違って今回は沢山召喚されるらしいですね。前回はひとりでしたが今回出現した魔王が前回と同じ強さとは限らないからという理由ですね。そして勇者は沢山召喚されますが、勇者のスキルと称号を持つものはその中のひとり、しかも女性だけだと聞いています。これは前回の勇者が女性だったことからきているとか。最後に見た目はほとんどが黒髪黒目なのだとか……そういえばおふたりも黒髪黒目ですね。何か関係があるのですか?」
「これはたまたまだよ。それで次に復活した魔王は昔に倒された魔王と同じものなの?」
「同じものと聞いていますね。魔物を従え人類に牙を向くと。ですが魔王の目的は今回も分からないとも聞いております」
「そうなんだ。誰か魔王の姿とか見たとか聞いてる?」
「いえ。そういうことは聞いておりませんね。ですが魔王はどうやら場所を移動しないのではないかと言われております。近くまで何度も冒険者が飛ばしましたので今のところは間違いないかと」
「その場所っていうのは?」
「誰もがご存知である立ち入り禁止区域。元魔王城です」
そうか。確かに魔王がいる場所といえば魔王城しかない。何を当然のことを聞いているんだか。でもこれで聞きたいことは分かったかな。気になることはいくつかあるけど聞くほどではないしね。
「そう。大体分かったよ。ありがとう」
「お役に立てたのであれば幸いです」
「他にもいくつか聞いてもいい?」
「私にお答えできることであれば」
「旅してると曜日感覚が狂ってきちゃうから聞きたいんだけど、今日って何年のいつ?」
「そんなものですかね? ええと…今日はカムラ暦三三四七年八の月十五の日です」
「……320年。そんなに……」
「あの?」
「え? あ、ううん。ありがとう。あとはここから魔王城までどれくらいあるのか地図で教えて欲しいんだけど」
「あ、はい。ええと、少しお待ちください……はい、お待たせ致しました」
受付嬢が机の中から取り出したのは結構大きめの地図だった。かなりでかいんだけどそれ机に入ってたの?
私がどうでもいいことに気を取られているうちに地図は完全に広げられており、受付嬢は私から見て左下の当たりを指さした。
「まずここが今いるアスレクト王国です。つまりこの国ですね。そしてここが魔王城です。馬車で移動しておよそ二ヶ月といったところです」
と、地図のおよそ真ん中当たりを指し示して告げる。遠いね。
「分かった。色々ありがとね」
「いえ。これが仕事ですので」
うん。いい笑顔だ。できる女って感じの人は笑うとギャップがあっていいね。それじゃあそろそろ行こうかな。この国でやることは特にないしさっさと魔王城に向かおう。
私が振り向いて真緒を呼ぼうとしたとき、何かが盛大に割れる音がギルド中に響いた。静まり返るギルド。その中心には……やっぱりいるよね。さっきのふたりがまだ睨み合ってる。
「小娘……! どこまで俺をバカにしやがる……!」
「バカになどしておらぬと言っておるじゃろう。ただの事実じゃこの脳筋ダルマが」
「やめてください! ギルド内での戦闘行為、及びギルド員同士での戦闘行為は禁止と何度言ったら分かるんですか! いい加減冒険者資格を剥奪しますよ!」
やっぱりこうなったか。真緒は喧嘩を売られたら全部買うからなあ。大人しく済むとおもってなかったけど……ふぅ。
「ねえ」
「なんですか!」
「試合場ってないの?」
「!? 正気ですか……!?」
「うん。それが一番早く決着が着くと思うよ。私も早く終わらせたいし、なにより私達に喧嘩を売ったんだ。ただで済ませるには私達は優しくない」
「……はぁ。分かりました。では試合場での決闘を認めます。エルツさん、マオさん、サクラさんは私に着いてきてください。観覧したい方はギルドの二階からどうぞ」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
盛り上がってきたね。真緒は私のところにバツが悪そうにしながらきた。悪いことをしたわけじゃないから怒らないって。
「すまぬ。ついやってしまったのじゃ」
「いいよ。私もムカついてたし。それに真緒が引き付けてたおかげで情報も得られたし」
「そ、そうか」
「うん。この国にもう用はないから決闘が終わったらすぐに出るよ」
「分かったのじゃ。それで……あやつの相手はわしひとりでええかのぉ」
「十分でしょ。ただ二度と手を出そうと思わないくらいに実力を見せつけてね」
「任せておれ。元魔王じゃぞ? そこらの小童になぞ負けはせぬわ」
どうやら心配いらなかったようだ。
「じゃあ行こうか」
どうやら準備ができたようだから受付嬢について行く。長い廊下を四人で無言で歩きながら私はハゲの観察をする。基準が分からないけど周りに当たり散らす態度からしてそれなりのランクがあるんだろう。まあそれも真緒には関係ないけど。
「着きました。この先が試合場になります。ルールは開始直前に私から説明致します。よろしいですね?」
「ああ」
「問題ないのじゃ」
「同じく」
「では参ります」
受付嬢が扉を開けて私達は試合場へと足を踏み入れた。なんだかんだ言ったけどいい機会だから、私達の実力を試させて貰おう。悪いなんて一切思わない。
――そして私達はどれほど異常なのかを思い知ることとなる。
前回投稿してから約4ヶ月も経ってしまいました。少しぶっ倒れていたので申し訳ない。次はなるべく早く出せるようにしますのでどうか長い目で見ていただけるとありがたいです。