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再確認

「さて、これからは実技の時間になるわけだけど……生きてる?」


 今私の目の前には急いで走ってきたのか肩で息をしてるクラスメートが多数、主に女子生徒がごろごろと転がっている。


「まあ、時間ギリギリで食堂から走ってきたのじゃ。少しは休ませようではないか」


 同じく走ってきたはずの真緒は涼しい顔して横に立ってる。いや、よく見たら若干やつれてる気がする。昼食の時間中ずっと質問攻めにあってたからだね。当然私は余裕を持って先に来た。もみくちゃにされてた真緒を置いてきたとも言える。お、最後の1人が立ち上がったかな。


「それじゃあ改めて私はサラ。とりあえず、模擬戦でもする?」


 その言葉に全員の顔が死んだ。おぉ、結構面白いな。一斉に顔が変わるの初めて見た。


「冗談だよ。今日はそうだね……ええと、君、召喚されてからの数日で剣については少し触れたんだったよね?」


 適当に目の前にいた男子生徒に聞いてみる。


「は、はい。軽く型と近接武器の重要性を」


「それなら大丈夫だね。素振りとかは?」


「ええと、それぞれの体格とスキルに合った武器をとりあえず100回くらいは振ってました」


 ……どうしよう。思ったよりこの国の騎士は優秀だ。私にあんなボロカスに負けた奴らだけど、戦うことに対して何が大事なのかは教えてたみたいだ。


「困ったね。特にしたいことが思いつかない」


「ええ……」


「う~ん。とりあえずそれぞれに分かれて素振りしてもらおっか」


「身体強化は教えんのか?」


「それはもう少し魔力が使えるようになってからだね。若葉の場合は勇者としてのスキルと潜在能力の高さもあってできただけだからね。本来は身体が魔力というものに慣れてからなんだよ……どうしたの?」


 なんかやたら目を輝かせてこっちを見てる若葉。


「今、若葉って呼びました!? 呼びましたよね!? ね!!」


「あっ……」


 しまった。ついクセが出てしまった。16年間ずっと一緒に生きてきたから普通に名前で呼んでしまった……。まあ一度呼んでしまったものはしょうがないからそのままいこう。


「コホン、まあ、若葉のことは置いといて、今日は今までやってたことと同じことをしようか。何をやってきたのかを私達で見るってことで。はい解散」


「「「「「はい!」」」」」


 良い返事とともにぱらぱらと散っていくクラスメイト達。ふんふん、剣、槍、短剣、メイス……大まかにはこんな感じか。……メイスのスキル持ってる人いるのね。というかメイスの素振りって凄くない?


「まだまだぎこちないが、少しは振れておるな。特に男共はスキルでもあるのか様になっておるではないか」


「そういえばなんであんたがいるの?」


「いやなに、こちらも見ておけば魔術で何を教えてやればいいか少しは参考になるじゃろう?」


「それもそうだね」


 正直何を教えればいいのか全く分からないから真緒がいるのはかなり助かったりする。剣に関しては他人に教えられることも少しはあるけど、他の武器に関しては他人に教えられるほど精通してはいない。私が教えられるのは信念。剣を振るという意味だけだ。ただ異世界で何かを教えることは真緒も私も未経験だ。リル達に真緒が教えてはいたけどあれも真緒は初めてのことだった。ものを教えることの上手さは地球での生活で分かってるしね。


 それにしてもこうして見てると皆勉強ばっかりしてきたからか、あまり身体がついていってない人の方が多いみたい。若葉みたいに両方得意という方が稀有なのかもしれない。


「サラよ。お主の目標としてどれくらい強くなれば良いと思っておる?」


「……希望はどこまでもって言いたいけど。実際にはそうだね……少なくとも隊長と渡り合えるくらいにはなって欲しいっていうのは流石に厳しいかな」


「……流石に短すぎないか? 依頼期間は一ヶ月じゃろう?」


「最低限戦えるようにっていうことだったけど、私としてはそれなりに強くなって簡単に死なないくらいになって欲しいんだよね。それにそれくらいの実力がないとダンジョン踏破なんて上手くいかないよ」


 自分で改めて口に出してみても異常だと思える難易度の依頼。一ヶ月で数十人のクラスメート達をダンジョン踏破できるまで育成する。それが可能なのは勇者としてのスキルを授かっている若葉だけだ。


「成長速度が早いのは若葉だけ。ただもし勇者程ではないにしろ、他の人にもある程度の補正があったとしたら?」


「……そうか! 称号か!」


 ステータスとして記載される一見なんの意味もない欄の称号。だが実際は称号はあるだけでステータスや能力にバフや補正がかかる。


「今でもそれが知られてるかは分からないからそれが今でも有効だと信じるしかないけど、それがあるのと無いのでは結構差があるはずなんだよね」


「それなら一ヶ月という期間でもそこそこ良いところまではいけるのではないか?」


「変に期待させるのも酷だから皆には伝えないけど、スキルでの補正もあるし……多分間に合う……とは思う……思いたい」


「願望ではないか……」


 結局のところそれしか無い。一ヶ月でダンジョン踏破なんてかなりのバフと補正が無いと到底成し遂げるなんて不可能だ。


「とりあえず数日は様子見と体力作り、残りは詰め込んでいくつもり」


「ではわしもそのように動くかの」


 お互いに今後のことを再度確認したところで私達は分かれる。私は素振りをしているクラスメートの元へ。真緒はあの人のところへ。






 桜と分かれたわしは隊長の元へと向かう。昨日交わした約束通りに隊長の遊び相手になってやらんとな。


「では約束通りわしが鍛えてやろう隊長どの」


「ありがたいが少々呼びにくかろう。名前で呼んでくれ」


「それは良いが、そもそもお主名前なんじゃ?」


「おっと、そういえば私は自己紹介をしていなかったか。では改めて、私はアスレクト王国第一騎士団で騎士隊長を務めさせてもらっているグラウ・アンダートという。グラウと呼んでくれ」


「グラウじゃな。ではわしのことはキリハとでも呼ぶが良いぞ」


「ではキリハ殿。鍛えると言ってもどのようにして鍛えてくれると?」


 どのようにと聞かれても決まりきっておる。


「そんなもの戦ってに決まってるじゃろう。お主戦いたいと言ってたではないか」


「それは言ったが良いのか?」


「構わん。わしにとっても人間と戦うことは良い経験になるからな。気にするでない」


 嘘ではない。わしは魔王として君臨していたときから人間相手に戦った経験が数える程しかない。最後に戦ったのは桜だったから正真正銘最期の戦いというやつじゃな。


「それならば良いのだが……。ああ、戦う場所を変えるなら案内しよう」


「ふむ……」


 わしはチラリと桜を見る。どうやら桜はこれからあ奴らの体力作りのために走らせに行くつもりのようで、この運動場を空けるみたいじゃ。こちらに向かって頷いておったし好きにやらせてもらおう。


「いや、ここで構わんじゃろう。サラの奴が気を使ってここを開けてくれるようじゃからな」


「そうか。サラ殿には後で礼を言っておかねばな」


「要らんじゃろうな。元々の依頼ついでじゃ。お主が気にすることではない。では誰もいなくなったことじゃ、存分に戦おうではないか」


 この運動場に結界を張る。万が一攻撃が壁に当たって崩れたりしても面倒じゃからな。あとは部外者が入ってこられても困るというのもある。


「ところで他の騎士達はどうしたのじゃ?」


「あいつらには走り込みを命じた。昨日の戦いがあまりにも不甲斐なかったのでな。一から鍛え直しというやつだ。しばらく邪魔は入らんだろう」


「それは重畳。では……やり合おうか」


「ああ! 胸を借りるつもりで行くぞ!」


 ――こうしてひっそりと城の運動場で元魔王による残虐……ではなく、合法的な扱きが始まった。

大変お久しぶりです。およそ1年程空いてしまいました。もっと早めに投稿したかったのですが、今年の初めにいきなり仕事が忙しくなってしまい……落ち着いたと思ったら体調を崩してしまったりと中々思うように生活できず、ほんの少し時間を見つけては書いてを繰り返していたらいつの間にかこんな時期になってしまいました。


次からなるべく早めに投稿出来るようにしていきたいと思ってはいますので、気長にお待ちいただけると幸いです。


ちなみに真緒がギルドで戦ったことを数えてないのは、純粋に戦いだと認識していないのと覚えてないためです。


それではまた次の話で。


高澤

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