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その翌日から数日かけて、返事を書いた。
『光栄あるエドマンド・ジョン・ホワイトストン殿
お手紙をありがとうございます。設計事務所のお仕事がそんなことになっているとは思いも寄らず、とても驚いています。あなたは前向きで、有能で、いじめられそうな要素なんか一つもないのに、貴族だからいじめられるだなんて、信じられません。事務所の人たちは貴族に偏見があって、あなたのことを誤解しているのですね。
でもどうか、元気を出してください。誰がどう思おうと、あなたの熱意は真実なのだから、きっと彼らに伝わるはずです。それまで少し時間がかかっているだけなのだと思います。
あなたが大変な時に何もできないでいる自分を呪わしく思います。ただ、上手くいくようにと、毎朝、毎晩、神さまに祈っています。
先日、妹に会うためにネザーポート屋敷を訪ねました。メイは怪我も治り、顔色もよく、元気そうでした。今困っていることは特にないそうです。休みのたびに、ライト家に戻っているとのことです。ネザーポート屋敷の馬車で送り迎えをしてもらっているようです。妹にこのような待遇をしてもらって、なんと感謝してよいのか分かりません。わたしは正直なところ、ネザーポート屋敷にご迷惑をかけないためにも、妹にはもうライト家に戻ることはやめて欲しいと思っています。けれど妹は実家に帰りたい、というよりも、帰らなければならないと思い込んでいるようです。わたしが説得しようとしても、耳を貸してくれません。
お気づきかもしれませんが、わたしと妹との関係は良好とは言えません。メイはおそらく、わたしのことを憎んでいます。そしてわたしよりも、ライト夫人を信じているのです。
わたしはこれからも足を運んで、説得を続けるつもりです。メイがネザーポート屋敷の方たちと交流するうちに、分かってくれる日が来るのではないかと思っています。
ところで、メイの実家への仕送りについてですが、その分をわたしがメイに支払うことにしました。ですので、メイのお給料はどうか相場通りにしてください。ネザーポート屋敷の他のメイドさんたちと不公平があってはいけませんので。差し支えなければ、わたしから執事さんに申し入れをしたいと思います。このことはメイも了承しています。
ライト家の問題ばかり、長々と書いてしまいました。ご不快に思われていなければよいのですが……。
ところで、メイはホワイトストン卿夫人のことをすっかり好きになってしまったようです。あの方は素晴らしい方だと、身の程知らずにも申しておりました。
実はわたしも、ホワイトストン卿夫人にお会いしました。ネザーポート屋敷で、ホワイトストン卿夫人は使用人ホールに降りていらして、わたしとメイの前にお座りになり、わたしたちに質問をされたりして、しばらくお話をなさいました。ホワイトストン卿夫人は始終にこにこと微笑んでおられ、わたしたちの話に頷いたり、ご自身やホワイトストンさまのお話をしてくださったりしました。お美しいだけでなく、独特の魅力をお持ちの方だと感じました。
クリスマス休暇についてですが、これはおそらくどこのお屋敷でも同じだと思うのですが、使用人は休みではありません。恒例の催しや、クリスマスディナーの準備のために、普段より忙しくなります。ですので、クリスマスにホワイトストンさまがネザーポート屋敷にお帰りの際に、コッツワース屋敷にお立ち寄りいただいたとしても、使用人一同はバタバタとしており、ゆっくりとお話をすることは出来ないかもしれません。ちなみに、コッツワース屋敷では一月の二週目に使用人のための舞踏会が開かれます。そしてその後に、使用人は順番に長期休暇を取ることになります。
ホワイトストンさまがお仕事で無理をし過ぎているのではないかと心配しています。どうか、お身体を大切にしてください。
コッツワース屋敷のジューンより』




