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だからなにもしな…

孤独に枕を濡らしても進展なし。


「遠すぎるっての…」


塔の根元は山々の向こうにあり、たどり着けるか不安になってくる。


根元なんか、街一つ二つ入ってるんじゃないかって感じの太さがありそうで、富士山を電柱にデフォしたみたいな視覚的暴力。


「いっそ、バイクとかグライダーとかで距離稼げたらいいのにな」


歩くのはもう飽きたが、スポーツ店に有るわけもなく徒労に終わる。


だいたい、飛んだ経験ないし、高いとこ無理でしたよ。


―昼間から、ポテチを二袋ほど空にする。


「荷物捨てて走るか」


保身優先の癖に出来ない事を口走ったり中二病を発症しかけた危険な兆候である。


結果、二日に一度は歩かなくなるなどして、ウサギとカメのカメがさんサイドの進行はさらに遅くなる。


最終的に、テントも広げずアスファルトに寝そべりポテチ貪り、そのまま昼寝。


自宅でも有り得ないくらいのレベルでコンビニ駐車場でだらける事数日。


「…あの、大丈夫ですか」


人類から猿に退化しましたくらい、いい感じに壊れてきた所で、第一旅人と遭遇。


「ふひゃぁっ!?」


寝ぼけた頭が理解した時の体たらくはまさに赤面ものであった。



「ユウノさんの気持ちは解らなくもないですけどね」


「忘れてくれと言いました」


ボリボリゴクゴク。


「道端に女の子が落ちててラッキーとか思ってたらガッカリですよ」


「安否確認アリガトウございやす」


「死んでなくて安心しましたけど」



イケメン好青年と思いきや二十代ネナベのカトケ(加藤恵)さんでした。


「ユウノさん、アレ目指してたんですよね」


「十日くらい前までは…」


コンビニのアスファルト悲惨。ゴミ箱の中はポテチの富士山が…。


人間食べ物があれば、何も考えなくても生きていける。


「元に戻りたいとかは考えたりしませんでしたか?」


「オレは無いかな?完全なネカマプレーしてなかったから一応男のまんまだからなぁ」


白黒ネカマ所か、ネカマ未満女キャラなだけの女装状態?


「…こっちは本格的になりきりプレイしてたから結構深刻ですよ」


いつの世も、ゲームの鍋の底は深く、お釜は地層の中の化石なみの発掘率ですからな。


―シッタカしました。はい。


とりあえず、オッサンだからキミ女若い娘の姿でなくてよかったね?


逆もそうだけど、カトケさん的には女の子のがよかったらしい。


今カトケとして普通に話してくれちゃ居るが、女の人として話されると違和感スゲーから、それこそ下心とかでなく中身の性別的に安心できるのが同性って事だろう。


ただ、相手にも選ぶ権利はあると思うぞ。


ネナベ云々以前に、カトケの見た目に中身の過去を無視して恋に走る可能性もあるが、カトケは元々ない機能部分が不具合で“構え”が出来ないそうだ。

言わせた訳じゃねぇから、イメージね。


入れ替わり系で乳揉む奴はいるが、チンチン弄る女子はそうはオランのだな。

オレは、村も無いほど人気がないとこで、右手逸るほど元気もねぇよ。


「二人集まっても、何にも解らないですね」


「オレは、ビニ弁を食える事が驚いたけどな?」


温度管理されてねぇし誰も手を出した形跡ないから避けてたんだけど、普通に食べてきてたらしいのが怖いよ。


「料理は得意じゃないし、糸引いたりしてなければ大丈夫かなって…」


勇者だよこの娘。


「そこは意地でも料理が得意と語るべきだと思うけど?」


「レンジもキッチンもない場所でどう発揮するんですか」


「焚き火主体のサバイバル生活だと、ダメかね」


「男の人はすぐキャンプとかやりたがったりするけど、私には無理です」


アイドルの無人島生活は、派手な飾り付けして女子力発揮してたりしたけどね。


「まあ、オレもキャンプの経験はないし、それらが苦手なのは女の人だけでもないけどね」


「物を揃えてる上級者がなに言ってるんですか?」

自衛隊とか軍隊がつかいそうな背嚢みたいなリュックを指差しているが、こんなの、ホームセンターとか漁りまくれば大概手にはいるからね。


カトケは、普通サイズのテントに丸けた毛布と着替えを持ち歩いていた様子。


「そこらなら、カセットコンロも揃えられるとは思うけどな」

「そんなかさばるものを持ち歩ける訳ありませんよ」


それ以前に、ビニ弁あるから不要でありましたか。


「ユウノさんの言う固形燃料も意外に使えるみたいですけどね」


「火力ないし、直火焼きはちょっとどうなのかわからんけどね」


オレは、ジッポオイルやら石鹸サイズの固形燃料は絶やさないようにしてる。


店で一人用鍋頼むと、鍋の下で燃えてる奴が固形燃料ね。


一斗缶サイズの固形燃料なら、煮炊きに便利だろうが持ち歩けないし、街中に薪になる物って落ちてないんだよ。


「この先に向かうなら、ホームセンタで拾うといいよ」


「なんだか、ユウノさんは行かないみたいな言い方してませんか」


「正直な話、不足の事態になるまで行かなくて良いんじゃないかと思ってる」


何もないが、コンビニに養われ老いるのもアリじゃないかね。

使命がある訳でもないし、オレが行かなかったからって、世界がどうにかなる訳じゃない。

塔がダンジョンだったら、攻略は数日じゃ済まないはず。

下手したら年単位の時間が必要なんじゃあないか?


塔に行けば、出会い別れも、胸震える出来事もあるかもしれない。


ここに至るまでにも、映画ではない体感できる感動を、望まなかった訳じゃない。


「もし、殺す殺さないの場面になったら、オレは“殺せない”だろうからなぁ」


情けないが、これ一番大事。


いや、考え過ぎかもしれないけど、ここら辺りにいれば、敵になる生き物は居ないし迷う必要がないなら、苦労もせずに楽して生きたいと思ってしまっても仕方がないじゃないか。


いくら身体が若くなっても、所詮はオジサンでさ、若返っても、生きる時間が倍増しただけみたいな?


逆にオジサンのままなら、割と頑張れたんじゃないかと思うわ。


「ユウノの背後さんと言うか、中身のオジサンさんがついて来れてないから、具だけの抜かれた肉まんが残されてるみたいな?」


「逆にそれだと、スゴく解り辛くありませんか」


オヤジギャグとは得てしてそうゆうものだ。


気の利いた事言おうとして、捻りに捻って明後日の方向にとんでくから、結果に伴わないのだよ。


20代なら、他人にも口に出して言えないが、オッサンだから言える事もある。


「こうして、立ち止まったら実齢を思い出す時間ができて、あの先の向こうをきにするより、“オレなに今に浸ってんだよ”ってゆう現実に囚われたらああなるみたいな感じ 」


「現実思い出したら、人がいないコンビニでも寝転んだりはしないと思いますが」


「そこは、問題なく説明出来る」


要するに、ただの不貞寝から始まっただけよ。



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