なにもしないぞ?
「ポテチ…コンビーフまである」
ビル群に下りてみた日かるいカルチャーギャップに頭が痛い。
「完璧街ん中きてた方がイージーモードだったじゃねぇか…」
靴下から下着まで何から何まで全部ある。
商店街や大手スーパーが存在している以上、更に色々揃っていておかしくない。
期限が書いてないのが気がかりだが、各地にあるとしてもこうした食料だけで当面は過ごす事は可能だ。
有限である以上、いつか奪い合いになる可能性はあるが…。
「当面はレトルトにしても、移動中はカレールーとかのが持ち歩きし易いか」
塩コショウ・砂糖などの調味料をエコバッグに詰め込みながら、期限なしの缶詰めを開いて確認していく。
アイスや冷凍食品も健在で機械が稼働している。
「異星人が人間を新たな環境に投げ込んでテストしているとか映画あったな」
古いB級映画を思い出し、今更ながら監視カメラを気にしてみれば、何一つ動いている様子はない。
事務所はこじ開けられ荒らされて、レジは開け放たれて、お金は残されていなかった。
最初に来た人間は、食料を集めてるよりも金銭に執着していたようだ。
「…まぁ、使えるか解らないが気にはすまい」
誰も居らず屋根もあるが、ここに止まり拠点とするには、あれ具合をみると他の危険が高い気がした。
外には、ご丁寧にレトルト食品が捨てられている。
変わりに何を詰めて行ったのか、大変分かり易い状況を残してくれて助かる。
まあ、使えない以上コレクション活動も一時の夢だろう。
「レンジとかは死んでるから、ご飯は難しいか」
金物屋かアウトドア系の置いてある店を探して飯盒でも探す方が現実的だと思えた。
ただ生米は重いので現地調達に頼る必要がある。
移動中の食料に向いてるのは、シリアルが一番だろうか?
牛乳がないと味気ないのが難点だが、一々火を起こす必要がないのは楽だ。
「ライターはあるとなると…」
カウンター裏のタバコに視線をやる。
外国タバコの一部意外、三等級エクーなどのタバコなどはまるで手付かずのまま。
「…禁煙にしても、火種くらいにゃなるか」
フィルターのない三等級タバコを、紙皿とかの入った二個目のエコバッグに放りこむ事にした。
「…てかダサいな」
エコバッグ二個担いで旅とか…。
情けなくも、オレの目も欲にくらんでいるに違いない。
因みに、自動車や自転車なんかはどこにも転がっていない。
大概の店は錆びたシャッターが落ちているが、中に商品があるか怪しいものだ。
なにより、玄関破りをするにはかなりの勇気を必要とする。
ここのコンビニも入口が破壊されてなければ、眺めて終わっていたかめしれない。
社会人としてのモラルとか、語ると邪魔くさいだろうか。
「羽織り袴にエコバッグ×2を装備」
出会い頭に切りかかられる可能性もなきにしもあらず。
「さて、どこに行くか…」
最小限とは言い難い荷物を抱えコンビニを出る。
破壊の爪痕が残された、危険な香りがする場所からは早々に撤退するに限る。
コンビニが各地にあるなら良いが、後々ここに戻らないとならない可能性もある訳だ。
「ちょっと、そこらのビルとかに隠しといてみるか」
―缶詰めとか。
結局、ダンボール二箱ほどの物資をビルに忍ばせオレは歩き出した。
一晩だけだがこの街に人はいない、人のいた痕跡もあのコンビニだけ。
動物は鳥ですらいない。
地層の中に化石があるかも怪しい。
「…本格的におっかないわ」
一体自分は何に巻き込まれてしまったのか?
「…ジヨーズとバイオハザードだけは勘弁してほしい」
そして、一時間も歩かない内に詰め込みすぎたエコバッグを投げ捨てたい気持ちに駆られるのだが…。
▼
「複数の人間の野宿の跡…と」
街をいくつか変えて痕跡しか見当たらない不足の事態に遭遇。
スタートで出遅れたのは痛い。
いくつかの遺跡を探索しようとしたが、完全なる見掛け倒しで、入口からホールがあるだけで先がない。
唯一の救いは、あたらしい墓を見かけてない事だろうか。
あと、富士山のような高い山がない。
遙か南に、天に伸びる異様に高い遺跡が一つあるが、未来の夢の軌道エレベーターまではいかないだろう。
何故なら、文明は21世紀あたりのものしかないからだ。
あるとしたら、ダンジョンで神かラスボスがいるはず。
人の痕跡は、アソコを目印に進んで居るようだ。
完全に出遅れた。
必要な情報とかがほとんど残されていない。
「…寂しくて死にそうだ」
ここ大事、マジな孤独はヤバいよ。
こちとら、話し相手もネットもないんだから、引きこもりとか楽なもんよ。
それに、コンビニ様々です。
思った通り各地にあるわあるわ。
手付かずの比率も高くて助かる。
コンビニだけで一生暮らせそうなくらいありそうだ。
ただ、老衰したら一気に餓死るからオススメできない。
段々と焚き火の痕跡が増えてきている以上、今は誰か組んでないとしても、遺跡を目指していけばなんとかなるんじゃないかと思う。
そうでなきゃ、永久に孤独だし。
それに、長いこと一人でいたから、ユウノにも慣れてオッサン消えてきたわ。
「…そういや長いこと風呂入ってないしな」
たまに水浴びはしてるけど、頭洗うにもお湯じゃなくて水だけだしな。
リンスインシャンプーやボディーソープもそこらで拾えるから、わざわざ持ち歩かないけどな。
痛み止め確保してあるけど、使った事ないけど、なんとかなるもんだ。
後、アダルトショップは何処にもないし、右手を動かすような性欲もないんだが大丈夫だろうか?
この世界、種の保存とか組まれてる?
いや、焚き火後にコンビニで手に入るゴム製品が転がってたりはしたけど不安になるわ。
ホームセンターで筒状の折り畳み式テント拾えたりしたが、自転車に関しては余り頼れない。
アスファルトが途切れた山野で邪魔になるから、持ち歩くのは背中にリュック一つ分。
移動速度が上がらない事には追いつけないが、何も分からなくとも一応は調べない訳にはいかない。
あ、ダンジョン系ファンタジーゲームをクリアした覚えってほとんどないねぇ。
謎解きも苦手分野だったし、アクションRPGとか、弱キャラでチクチクするタイプだしな。
―詰んでね?
「…悩んでも仕方ないか」
街に着いたら、手近な遺跡総当たりするから、意外に時間をくらふ。
手当たり次第に外れ。
でも止めない。
某ネズミ率いるランドと違い待ち時間がないから、1日あれば回りきれる。
そして、例外なく浅い。
やる気あるのか運営
日がくれたら、湯を沸かし、粉スープの中に甘くないシリアルをいれて夕飯。
筒状テントで夜明けまで寝る。見張りは要らない。
必要ない。
サバイバルでもなく、解くべき謎も見つけられない。
「オレ、もしかしたら…」
独り言の最後は言葉にもならずただ眠るだけ。
物語的にいらない子なんじゃ…。
よくあるじゃん?
仲間のために頑張ってやっと合流したのに、帰れされたり、家に入れてもらえず犬小屋与えられ足りする弄られキャラとか。
まず、とんでもない俺様鬼畜様でも居ない限りは、知り合ってなければ弄られもしないわけよ。
「ヒロインもないし、ヒーローもない」
これが飲まずに居られますかってーの。
―涙を。