7章 羽生チェリー
秀一はひきこもり娘の最後の一人の羽生チェリーの元へ訪ねた。
羽生チェリーも鮮血のように真っ赤で身長より長い髪を持つ美女である。
「はい、シャンプーとトリートメントとコンディショナーを持ってきたぞ。それと頼まれていたゲームソフトも買って着たぞ。」
「ありがとうね。神主さん!」
「しかし、ゲームのなにがそんなに面白いのかね~。」
「プレイしてみたら?お勧めのRPGがあるの!」
秀一は言われるがままにゲームをプレイしてみた。始まりの町からゲームが始まり、始まりの町の村長に魔王退治を頼まれた。
「これだけ?全然ストーリーが進まないじゃないか。」
「もっと村人に話し掛けなきゃ駄目よ!村人に話し掛けかな進まないイベントが沢山あるんだから!」
「RPGはかなりめんどくさいな。通行人全員に話し掛けなきゃならないなんて。」
そしてようやくストーリーが進んだ。マップを移動しているとモンスターにエンカウントした。
「はじめのモンスターは弱いのよ。」
「経験値とお金が貰えた。……………経験値が入るのは分かるんだがなぜお金も貰えるんだ?あの化け物がなぜお金なんかもっているんだ?」
「そういうものなのよ!仕様です。」
「そういうシステムなのな~。」
秀一はさらにストーリーを進めていく。
「詰んだぞ。通行人全員に話しかけたのにストーリーが進まない!」
「そういう時は何度も同じ通行人に話しかけるのよ。台詞が変わっていてストーリーが進む事もあるの。」
言われたと通りに通行人に再度話かけた。すると台詞が変わった通行人がいた。さらにもう一度話しかけるとイベントが進んだ。
「同じ通行人に3度も話しかけないとストーリーが進まないってどういう事だよ。他の通行人は何度話しかけても同じ事しか言わないのに!しかも、またお使いかよ!このゲームお使いが多すぎだろ!」
「お使いはRPGの基本よ。何かをしてくれと頼まれたり、何かを持ってきてくれと頼まれたり、何々を倒してくれと頼まれるのが一番よくあるパターンね。」
お使いを済ませ、秀一はダンジョンに入った。
「このダンジョンはアクションゲームよ!マオリブラザーズみたいなものね。」
「敵にぶつかるとHPが減るのか……。あ~落っこちた!」
「下手ねえ。」
「HPが残っているのに落ちると即死かよ!」
「まだ残機が残ってるから大丈夫よ。」
「あぁ~また落ちた!落ちると即死ゲームはやめてくれよ!HPは残っているのに!」
「そういう仕様なの!ゲーム音痴ね。操作が全然だめだわ。」
「そんな事言ったってゲームはプレイしたことが無いんだからコントローラーの動かし方やタイミングなんて全く分からない!」
「その金のキノコのアイテムを採ると無敵になれるわよ!」
「おお!!黄金の戦士だ!!敵にぶつかってもHPが減らないぜ!無敵無双だ~!」
ひゅ~ポトン。
「あれ~?!落ちて死んだぞ!?」
「そりゃ落ちたら死ぬわよ。」
「なんで無敵状態なのに落ちたら死んぬんだよ!」
秀一は電撃でチェリーを痺れさせた。
「あは~ん!もぅ~、そういう仕様なの!無敵なのは敵キャラに対してだけ。」
さらにゲームを進めていくと章ボス戦が始まった。
「強すぎる!相手のHPが全然減らない!アイテムがいくつあっても足りない!」
「あぁ~これ負けイベだから。」
「負けイベ!?なんでそんなイベントがあるんだよ!ていうか負け前提のイベントなら前もってプレイヤーにそう告知してくれよ!アイテムの無駄使いだろうが!」
「そういうイベントなのよ。負けイベントを瞬時に見抜くのもゲーマーの度量よ。」
「負けイベントなんてムービーかオートプレイで良いんだよ!」
秀一はさらにゲームを進める。
「なんだ!敵のHPが全く減らないぞ?負けイベか?……あれ?ゲームオーバーになってしまったぞ!」
「これはいわゆる『初見殺し』ね。負けイベじゃないわ。負けイベは見極めが難しいの。」
さらにステージは進んでいき、ついにラスボス戦。
「ラスボスは始まりの村の村長かよ!始まりの村の村長がラスボスとかどんな糞ゲーだよ!もうラストだからアイテムを使いきっちゃえ!!」
そしてラスボスを倒しEDに入った。
「やったこれでクリアだ!って途中で味方にした元敵がラスボスを倒した事でパワーアップして裏切ってきただと~!?ラスボス戦の後にさらなる敵キャラが出てくるとかアホかよ!」
当然ゲームオーバーになる。
「ラスボス戦からやり直しね。」
「こんなのやって居られるか!」
「クリアするとレアアイテムが貰えて、周回プレイする時無双できるようになるのに!」
「そんな前世のアドバンテージを得た転生者みたいなチート無双しても面白くないだろ!」
「私も前世の記憶を持ったまま生まれてきたかったわ……。もしくは来世は現世の記憶を持って生まれ変わりたいわ…。」
「生まれ変わりなんてあるわけがない。」
「来世は今より悪くなることはないと思うからいっそ死にたいわ!」
「バカもん!!!」
秀一はチェリーの顔を引っ掻き回した。
「いった~い!冗談よ。」
「冗談でも不謹慎な事を言うな!!!」
「私はずっといじめられてきたの。道を歩けば石をぶつけられ、近所の子には自慢の髪を切られ…。」
チェリーの前髪は無理やり切られたせいか不揃いになっている。
「父親のいない母子家庭だったけれど母は育児放棄したわ。そして食べ物を求めて家出したらここにたどり着いたの。」
「お前が不幸な生い立ちなのはよく理解している。だがな。自殺なんて考えるのは…。」
「自殺なんて考えていないわ!だって今は私とっても幸せだもの!あなたのおかげでとっても幸せ。あなたと暮らせて本当に嬉しいわ。」
チェリーは秀一のほっぺにキスした。
「やめろおおおおお~~~~~~!!」
秀一電撃でチェリーを痺れさせた。
「きゃあ~~~~~!!もぅ照れなくてもいいのに!」
「僕は照れていない!」
秀一は頬を赤らめながら自分の部屋に戻っていった。