5章 一条ジェシー
秀一はひきこもり娘の一人一条ジェシーの元へ訪ねた。
一条ジェシーも鮮血のように真っ赤で身長より長い髪を持つ美女である。
「お帰りなさいませ、神主さん…。」
「はい、シャンプーとトリートメントとコンディショナーを持ってきたぞ。それと頼まれていたアニメのDVDも買ってきたぞ。」
「ありがとうございます…。」
このお寺にはアンテナもケーブルもないがDVDレコーダーとそれを見るためのテレビだけはあるのである。
「前にレンタルしたアニメとは全く別ジャンルだな。どうゆう基準で選んでいるんだ?」
「前のアニメを作った監督と同じ監督が作ったアニメなんです…。」
「その監督が作るアニメは面白いのか?どんな監督なんだ?」
「タニカンって言う監督です…その監督がすごく面白いんです。」
「そんなにその監督が作るアニメは面白いのか?」
「いいえ、全然です。ただ監督の言動が面白いだけです。その監督の作品を見るのは怖い物見たさです…。」
「なんだよ!それ!それならレンタルで良かったじゃないかよ!」
秀一はハリセンでジェシーの顔を叩いて突っ込む。
「ありがとうございます!」
「なぜわざわざ買ったんだ。レンタルで済むものを!」
「それが駄目なんです!タニカンさんはこのアニメが売れなかったら引退するって宣言してるんです。だからどんなにつまらなくても私が買い支えてあげないといけないんです!」
「引退宣言なんて詐欺みたいなもんだろ。何回も引退宣言しているアニメ映画の監督だっているくらいだしな。」
「…実際にこのアニメは売れてないんですけど、それでも確かに引退するそぶりはないみたいですね…。」
「アニメの監督の引退宣言なんてそんなもんだよ。」
「それより神主さんにみてもらいたいものがあるんです。」
「なんだ?」
「ちょっと着替えますので待ってて下さい…。」
ジェシーは真っ赤な髪をポニーテールにし、真っ赤なチャイナ服のような衣装に着替えてきた。
「なんだその恰好は?」
「魔まマのコスプレです。ちょうど赤毛の女の子が居たので作ってみました。その子の赤毛は小豆色っぽくて、鮮血のような私の赤髪とはちょっと違うのですけれど…。似合いますか?」
「まっまぁまぁ。」
「そのキャラの胸のサイズがかなり小さくて私の胸には合わなかったんですけれども…。」
「胸を大きく見せることはできても胸を小さくすることは難しいからな。」
「もっと私のコスプレを見て下さい…。」
ジェシーは真っ赤な髪をポニーテールにしたまま、ビキニとホットパンツに着替えてきた。
「今度はヨーコというキャラになってみました。」
「良いじゃないか。似合う似合う。」
「今度は胸が大きいキャラで私の胸じゃ少し足りないかも知れません。」
「人間の価値は胸の大きさで決まるもんじゃないからな。」
「そうですよね…。」
ジェシーは秀一の手をつないだ。
「なんだ!?」
「ごめんなさい…。あなたの手を握りたくて…。」
「………。」
「私は小さいころにこの山に置き去りにされて、はじめて出会ったのがあなたでした…。あなたは私を拾って下さいました。あなたには感謝しても感謝しきれません。」
「お前が不幸な境遇なのはよく知っている。」
「私…あなたの事がすきです………。」
「ん?なんか言ったか?」
「いええ。何でもありません。」
(こんなところでアニメの主人公みたいにならなくてもいいのに………。)
「僕もお前が好きだよ……。」
「え?」
「ラブじゃなくてライクだがな。」
そういって秀一は次のひきこもり娘の部屋に向かった。




