3章 夜神ローサ
秀一はひきこもり娘の一人夜神ローサの元へ訪ねた。
夜神ローサも鮮血のように真っ赤で身長より長い髪を持つ美女である。
「秀一君、いらっしゃい。」
ローサは秀一を名前で呼ぶ。
「はい、シャンプーとトリートメントとコンディショナーを持ってきたぞ。それと頼まれていた90式戦車の組み立て済みのプラモも手に入れたぞ。」
「まぁ!ありがとう!」
「全くこういうのは自分で組み立てろよな。」
「あたしは無能なのよ。無能な働き者は処刑されるの。だからあたしは無能な怠け者にならなくちゃいけないの。」
「それよく見かける話だが、実際に軍人が言ったのかは定かじゃないんだぞ!」
ローサに突っ込みチョップした。ローサは自称ミリタリーオタクのニワカである。戦車が好きだがミリタリーの知識は殆どない。
「戦車が好きなら自衛隊に入ればいいじゃないか。」
「戦争映画が好きだからって戦場に行けって言ってるようなものね。あたしは弱いのよ。」
「体を鍛えればいいじゃないか。時間は有り余っているだろ。」
「弱いのは心よ。あたしはこの赤い髪の毛をずっとバカにされてきたの。聞こえるような陰口や執拗な嫌がらせを受けたわ。そんなの耐えられないの。だからここに逃げてきたのよ!」
「お前の髪の毛は最高に美しいよ。」
「そう言ってくれるのはあなただけだわ!親はあたしの命より大切な髪の毛を剃ろうとまでしたのよ。」
「お前の髪の美しさは誰よりも分かっている。バカにする者がいたら僕が許さない。」
「秀一君…。」
「プラモを見ていて、気になる事があったんだが、戦車と自走砲の違いってなんだ?」
「え?自走砲って何?」
「まずそっからかよ!」
秀一はハリセンで突っ込んだ。
「じゃあ装甲車と戦車の違いは分かるか?」
「当たり前でしょ!装甲車がタイヤで戦車がキャタピラでしょ?!」
「いやややや!キャタピラの装甲車とタイヤの戦車もあるんだな。」
「え、そうなの?」
「知識が浅はかすぎるだろ!」
秀一はローサの顔を引っ搔き回した。
「あ~ん!酷いわ酷いわ!顔に!」
「ミリオタだって言うなら何を知っているんだよ。」
「日本に空母がない事や日本がクラスター爆弾を全部破棄した事は知ってるわ!」
「クラスター爆弾って何だ?」
「………。」
「知らないのかよ!」
秀一はローサを蹴り飛ばした。ローサは外まで飛んでいき岩に顔面からつんのめて、岩を顔面で削るようにズリ落ちた。
「ああぁぁ…!あたしの美貌が壊されたぁ~!」
「好きな物くらい熱中したらどうなんだ。」
そういって秀一は次のひきこもり娘の部屋に向かった。