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ひきこもり娘たちの更生員  作者: 日本のスターリン
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2章 利根川ロザ

 秀一はひきこもり娘の一人利根川ロザの元へ訪ねた。

 利根川ロザも鮮血のように真っ赤で身長より長い髪を持つ美女である。


「神主さん、いらっしゃい。」

「はい、シャンプーとトリートメントとコンディショナーを持ってきたぞ。それと、小説も何冊か買ってきたぞ。」

「わ~い!ありがとう!」

「言われた通り、全部転生物を選んで買ってきた。しかし、転生物のどこがそんなに良いんだ?」

「誰でも一度は『生まれ変わりたい』とか『もし生まれ変わったら』とか考えるものでしょ?」

「そうかなぁ。」

「そうなのよ!だから転生物は人気があるの!書きやすいから書く人も多いジャンルなのよ!」

「転生物のどの辺が書きやすいんだ?」

「実際にちょっと読んでみたら?」


 秀一は買ってきた本数冊を読んでみた。


「全部同じじゃないかよ!」


 ロザを蹴り飛ばして突っ込んだ。


「これのどこが面白いんだ?全部ファンタジックな異世界に転生して、前世の記憶というアドバンテージで無双するだけの話じゃないか!」

「そこが面白いのよ。」

「前世の記憶で異世界の現地人と差を付けるって…それってズルじゃないか!チートだよ!」

「そこが良いのよ。だから皆同じような話を書いてるの。」

「どこが良いのよ!こんな同じような設定の話を何冊も読んでもつまらないだろ!」

「世界観が全く違うのよ。主人公やヒロインの性格。転生前・転生後の主人公の境遇。同じジャンルでも全く違うの。例えるならボードゲームね。一口にボードゲームって言っても数多な種類があるの。それと同じで一口に異世界転生物って言ってもどれひとつ同じものは無いの。」

「なるほどねえ…。」

「ハーレム小説とかもそう。主人公が似たり寄ったりのハーレム状態になるのは一緒。だけどヒロイン一人一人の性格や舞台設定・世界観はその作品によって全然違うわ。」

「女子学校に男子一人が編入する事もあれば、複数の女たちが勝手に住み着いてくる展開もあるわけか。」

「そうゆう事よ。」

「でも転生とか前世とかはどうしてもありえないと思うんだよね。」

「小説にリアリティを求めるのは野暮だけれど、実際に前世の記憶を喋る子供の事例は数多くあるのよ。」

「死んだ人間の魂が再び現世に別人の魂として蘇るのはおかしいと思うんだよ。もしそのような輪廻転生があるなら人口の数は常に一定じゃないとおかしいと思うんだ。そもそも人類全員がなんらかの転生しているなら前世の記憶を持っている人がもっといると思うんだ。」

「じゃあ、前世の記憶を持ってる子どもたちの存在はどう説明するの?」

「幽霊に取り憑かれているじゃないかと思う。幽霊が子どもに取り憑いて自分の記憶を吹き込んでいるんだと思うんだ。」

「ちょっと待って!前世は信じないのに幽霊は信じるの?」

「死んだ人が生まれ変わって蘇るよりは、死んだ人が憑く説の方が現実味がある。」


 実に妖怪らしい価値観である。


「そもそも幽霊なんているのかしら?」

「お前は知らないだろうが、慣性の法則と言う物があって止まっているものは止まり続ける力が働いているんだ。しかし、止まっているものがなぜか勝手に動く現象がたびたび目撃されている。これは非常に興味深い。慣性の法則に乗っ取れば幽霊は止まっているものにエネルギーを加えている事になる。実体のない幽霊がどうやって物体にエネルギーを加えているのか。そもそもそのエネルギーはどこから引き出されているのか。人間は食事してエネルギーを吸収しているが幽霊はそれができない。食道も胃腸もないからだ。そもそも脳が無いのにどうやって記憶を保持したり、意識を持ったりしているのか。…そう考えるだけでもロマンがあるだろ。」


 死霊や悪霊が本当にいると分かっている上での秀一なりの哲学である。


「前世・来世の方がロマンがあると思うわ。」

「食事などでエネルギーを吸収しなくてもエネルギーを生み出せると言うのは非常に魅力的でこれ以上ないロマンだと思うがなぁ。死人はもう死なない。幽体になりエネルギー0で意識を保持したり、物を動かしたりできるなら、それは無敵の不老不死だ。全人類のロマンだと思うがな。」

「面白い考え方ね。私オカルトも好きなの。でも転生物の小説の方が好きだわ。」

「小説ばっかり読んでいないで外にも目を向けろよ。外に出れば心霊現状を見られるかもしれないぞ。」

「事実は小説よりも奇なりっていうものね。でも私は小説の方が好き!」

「外にでろよ~!」


 ハリセンでロザの顔を叩いた。


「痛~い!外には出ないわ!外に出なくても良い小説家になるの!」

「じゃあ小説を書けよ!」

「一応書いてみたのもあるのだけれど…。」


 ロザは原稿用紙数枚を見せる。


「どれどれ……。って!全部原稿用紙1枚にも満たないで終わっているじゃないか!」


 ロザの顔を引っ搔き回して突っ込んだ。


「きゃあああ!!!顔は女の命なのにぃ!単行本にできるくらいの小説は本をもっと沢山読で知識を磨いてから書くわ。」

「いつ書くんだ?」

「読むのに忙しくて書く暇がないの。」

「やれやれ。とんだ言い訳大王だ。」


 秀一は飽きれて次のひきこもり娘の部屋に向をおうとした。


「まって!行かないで!あなたといる時だけが幸せなの!」

 

 ロザは幼いころから差別されており、村八分にされていた。


「この赤い髪を理由に村中から差別されて、お父さんは私たちを捨てて逃げ出し、お母さんは私を虐待したわ。『あんたみたいな子を産んであたしは不幸よ!』って…。私は自分の赤い髪が好きだったけど、自分で自分の赤髪を恨んだし憎みもしたわ。でもあなたは私の赤髪を認めてくれたわ。」

「お前の赤い髪は本当に美しい。髪の毛が真っ赤なのは何も恥ずべきことじゃない。むしろ誇らしく思って良い事だ。安心しろ。僕はいつでもこのお寺にいる。」


 そういって秀一はロザを宥めて次のひきこもり娘の部屋に向かった。

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