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ひきこもり娘たちの更生員  作者: 日本のスターリン
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1章 空条ローザ

 このお寺には7人のひきこもり娘たちが暮らしている。しかし、お寺は広くて部屋が沢山あり、自分の部屋に引きこもっているため引きこもり娘たちの間に互いの面識はほぼない。引きこもり女たちは山や山奥の河原で取ったものと秀一の持ってくるもので生活している。

 秀一はひきこもり娘の一人空条ローザの元へ訪ねた。


「神主さん、いらっしゃい。」


 秀一は自分の事を神主と名乗っている。ここはお寺であるが、常識のないひきこもり娘たちは誰一人それがおかしい事に気が付かないのである。秀一は妖怪・猫又であるが、その正体を隠し、不思議な超能力を持った人間を装っている。

 空条ローザは全ての髪の毛を一纏めにしている鮮血のように真っ赤で身長より長い髪を持つ美女である。このお寺にいる引きこもり娘たちは散髪にも行かないので皆髪が尋常じゃないくらい長い。しかし、彼女たちにも髪に対するこだわりはあるようで秀一に高級シャンプーや高級トリートメント・高級コンディショナーを買ってきて貰っている。

 

「はい、シャンプーとトリートメントとコンディショナーを持ってきたぞ。」

「ありがとう~!髪は女の命!ましてやアイドルの髪は命より重いのよ!」

「誰がアイドルだよ!」


 秀一がハリセンでローザの顔を思いっきり叩いた。


「きゃあ!顔はやめてよ顔は!顔はアイドルの命なのよ!」

「アイドルじゃないのに。」

「私はアイドルの卵なのよ!」

「アイドルを目指しているのは分かるが、それならそれでアイドルになるための努力をして欲しいものだ。」

「お肌や髪の毛の手入れは毎日ばっちりよ!この美しい肌と美しい髪は努力の結晶よ!毎朝全身をお手入れしてる美肌と、朝な夕なお手入れしてる私の美しい赤毛…。この美しい赤髪は努力の結晶よ!真っ赤な長い髪の毛を毎日6時間もかけてお手入れして、髪型をセットするのに毎日2時間も掛けているんだもの!美しい赤髪を切りたくないから前髪も全ての髪の毛を一纏めにしてるのよ!こうすれば髪で美しい顔が隠れずに済むから一石二鳥よ!切らなくても地面につかないように大きく湾曲させたこの髪型は究極のヘアスタイルよ!」

 「話が長いんだよ!」


 秀一は猫のような爪でローザの顔を引っ搔き回した。猫又なので猫のように爪を出ししまいできるのである。


「いった~い!!!顔はアイドルの命なのよ~!!顔は止めてっていってるのにぃ!!」

「だからアイドルじゃないだろ!」


 今度はローザに飛び蹴りでローザに突っ込んだ。


「んっ…!そう、顔は止めて!ボディーだけにして!」


 ローザも秀一にどつかれることが内心喜びを感じている。

 そんなローザは窓を開けた。


「見て!この風に靡く美しい赤髪を!このために髪の毛をずっと伸ばしてるの!この長い髪の毛を朝な夕なお手入れするのは私の生きがいよ!」

「相変わらず見事な髪だな。流石自慢の髪だな、本当に綺麗だ。」

「でしょ~!もっと褒めてちょうだい!!」

「調子に乗るな!」


 ローザの顔面に鉄球を投げつけて突っ込んだ。


「痛たたたた!!!顔は止めなさい!顔は!」

「髪の毛だけに毎日8時間も費やしていたら一生働けないぞ。ひきこもりで他にやる事が無いからそんなに長い時間をかけられるだけで。」

「いいのよ。売れっ子アイドルになったらそれくらいの贅沢は当然なはずだわ!短時間アイドルで1日4時間しか働かないアイドルを目指すの!」

「アイドルになるだけで無理そうなのにそんなアイドル絶対無理だ。毎日1時間仕事するだけで月100万円以上稼ぐのより無謀だ。」

「アイドルになるのが無理そうって私の外見が美しくないって言うの?」

「そういう問題じゃないだろ!」


 秀一はピコピコハンマーで突っ込んだ。


「お前の外見は確かに美しいが、外見だけじゃアイドルにはなれないぞ。アイドルになるにはアイドルに相応しい資質がある。」

「外見だけじゃないわ!料理も上手よ!」

「ああ、料理だけは得意だったな、お前。たしかにスマッポみたいにアイドルが料理する時代だもんな。でもアイドルで重要なのはそんな事じゃない。根気が必要なんだ。歌やダンスのレッスンに耐えられる自身はあるのか?」

「もちろん、あります!」

「その根拠はなんだ?」

「とくにないです。」

「ふざけんな!」


 秀一は妖力で電撃をローザに食らわせた。

 ビリビリビリ!


「きゃあああああ~!も~うぅ!髪が枝毛になっちゃったわ~!」

「全く…。」

「私、人間関係以外はわりと月並みにできるしダンスや歌も大丈夫よ。」

「月並みじゃ駄目だし、アイドルには人間関係も重要だぞ。」

「売れっ子になれば人は後からついてくるの!だから平気よ。」

「やれやれ、これだけ楽天家なのになぜこんな暗いお寺に引きこもっているんだか。」


 秀一は飽きれて次のひきこもり娘の部屋に向かおうとした。


「まって!まだ行かないで!」

「付き合いきれん。」

「私を見捨てないで!私にはあなたしか居ないの!」


 ローザは赤い髪を理由に幼いころから孤児院で虐められていた過去があった。この地域では昔から赤い髪は不幸になると言われているのだった。


「私はこの自慢の赤い髪が原因でずっといじめられてきたの。両親も頼る人も居なくてここにたどり着いたの。あなたは私の赤髪を見ても軽蔑せずに、この自慢の赤髪を褒めてくれたわ!あなただけが私の心の支えなの!」

「分かっているさ。お前を見捨てたりなんてしないよ。」


 そういって秀一はローザを宥めて次のひきこもり娘の部屋に向かった。

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