12章 リズムゲー
秀一はチェリーの元を訪ねた。
「頼まれていたゲーム『タイコの鉄人』を買ってきたぞ。」
「あらあら!ありがとう!」
「どんなゲームなんだ?」
「じゃあ、やってみて!百聞は一見に如かずよ!」
秀一はゲームをプレイしてみる。
「……リズムゲーか。」
「そう!テンポに合わせてバチを叩くの!」
「…………これ?面白いか?」
「え?」
「ただ音楽に合わせて叩くだけじゃないか。これのどこが面白いんだ?ゲーム性ないじゃないか。」
「タイミングよく叩くのがこのゲームのゲーム性よ。タイミングよく操作するのが面白いの。」
「アクションがないアクションゲーだな。操作性が求められるのに画面は単調な譜系が流れるだけ全く面白味が無い。陳腐でチープ。」
「音ゲーの良さは慣れなきゃ分からないわ!同じ曲を何度もトライするのが面白いのよ!好きな曲を選んで何度も練習すると楽しいわよ!」
「何度も同じ曲を聞いていたら耳にタコができるね!」
「そんなの迷信よ。」
「何度も練習するとか暗記ゲーかよ。こんなの暗記している暇があったら地理・歴史を勉強した方が為になるんじゃないか?」
「暗記ゲーじゃないわよ。一曲に付き数百コマンドがある上に、何万曲もあるのにそれを全部暗記するなんてできないわ。確かにパターン読みはあるけど、暗記じゃなくて感覚よ、感覚。」
「感覚?」
「そうよ。音楽は芸術だもの。繊細な感覚を研ぎ澄ますのがリズムゲーよ。」
「こんなのやるくらいなら本物の楽器やった方がよくないか?楽器の勉強しろよ!」
「『勉強しろ勉強しろ』ってあまりしつこく言われると耳にタコができるわ!」
「さっき迷信だといっただろうが!!」
秀一はチェリーの顔を引っ搔き回して突っ込んだ。
「んっ!痛ぁ…!楽器とゲームは違うわよ。リズムゲーは好きだけれど楽器はやりたくないわ。」
「なぜだ?」
「面倒だもの。」
「面倒がるな!」
秀一はチェリーを電撃で痺れさせた。
「あんっ!」
「ていうか音楽が好きならただ音楽を聴くだけじゃ駄目なのかね。」
「リズムに乗ってるのが楽しいんじゃない!」
「あぁあぁ、道歩きながらイヤホンやヘッドホン付けて頭振っているアレな。痛々しいだけだな。」
「家でやっているんだから良いじゃない!誰の目も気にしないわ。」
「ここは家じゃないだろ!」
秀一はチェリーの顔をハリセンで叩いた。
「いたたたたたたた!好きな曲をノリノリで聞けると楽しいのよ。ただ聞くだけとは一味違うわ。」
「典型的なゲーム脳だな。」
「ゲーム脳なんて迷信よ。」
「そんなにゲームが好きならゲームセンターに行ったらどうだ?」
「ゲームセンターはちょっと…。人のいる所には行きたくないわ。」
「ゲーム好きなんだろう?ゲームセンターにはいっぱいゲームがあるぞ。」
「…………。
ゲームセンターなんてゲーム脳が集まるところよ。」
「さっきと言っている事が違うぞ!」
秀一はチェリーの顔に水晶玉を投げつけた。
「いたぁい!」
「こんなんじゃいつまで経ってもひきこもりから卒業できないな。」
「それでもいいの。あなたがいてくれるなら…。」
チェリーは秀一に聞こえないように小声で呟いた。
秀一は聞こえない振りをして、自分の部屋に戻っていった。