11章 TS
11章 TS
秀一はロザの元を訪ねた。
「頼まれていたラノベを買ってきたぞ。」
「ありがとう~!」
「今度は性転換ものに嵌っているのか。」
「TSっていうのよ。これもかなりの人気ジャンルなの。」
「TSの何がそんなに良いのかね。体が女でも心が男じゃ異性として見られない。」
「女の子の身体に男の子の心が入ってしまうって言うギャップが良いのよ。自分の好みの女の子になりたいっていう欲求を持つ男性も多いの。」
「心は男なのに体は女になりたいと言う願望か…。なんか矛盾しているような気もするが。」
「心は今のままで身体だけ異性になりたいっていう欲求を叶えるのがTSって言うジャンルなのよ。」
(僕も女性の姿に化ける事もできるからTS要素は持ち兼ねているが…。)
「仮に女の身体に慣れる能力があったとしても僕はなりたいと思わないな。お前は男の身体になってみたいと思うのか?」
「思わないわ。私が読んでいるのは全部男性がTSするものだし…。TSものの小説を書いてみようかと思うの!原稿用紙2枚ほど書いてみたわ。読んでみて下さる?」
「うーん。『~た。』で終わる文章が多すぎる。まるで小学生の作文を読んでいるようだ。」
「小説は書きやすさっていうのも大事だと思うの。作文形式だと書きやすいのよ。」
「ていうか、これのモデル僕だろ!」
秀一はロサの顔を引っ掻き回した。
「いた~い!!」
「お寺に住んでいる男妖怪が女の姿に化けて、引きこもり女たちのその面倒を見ているってほぼ僕の事じゃないか。」
「や~ね~。あなたは妖怪でもないし女にも化けてないでしょう?」
(妖怪なんだがな。……ひょっとして僕の正体に感づいているんじゃ…)
「引きこもり女たちを侍らせるハーレムものよ!主人公がTSすることで百合者として成立する百合ハーレム!」
「TSに百合にハーレムと欲張りだな。じゃあ続きを書いてみてくれよ。」
「この2枚で完結よ。」
「これだけかよ!」
ビリビリビリ!!
秀一はロザを痺れさせた。
「あんっ!設定はいいと思うのだけれどストーリーがこれ以上思いつかないの。誰かこの設定で書いてくれないかしら~。」
「せっかく良い設定だけ考えてもそれをストーリーにできないんじゃ意味がないだろ!」
「設定を入力するだけでストーリー考えてくれる機械ってないかしら。」
「あるかそんのもの!」
秀一の顔面を蹴り飛ばして突っ込んだ。ロザは顔面から岩に激突し、ずり落ちた。そのまま秀一は、自分の部屋に戻っていった。
「TSか…。これはこれでありかもしれないな。」
秀一は自分の部屋で人間の女の姿に化けてみながらニヤついた。