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第二十一話 未来予知

 「で、どのような未来なの?」

 リィールさんが問いかける。

 「教えないわ。ここにいる者達で姿が見えたのはアルゲンしかいなかったから関係ないでしょ?」

 私の両肩に彼女の手が置かれる。彼女の発言が本当なら、後で教えてくれるのだろうか?

 「……そう。だったら良いわ」

 リィールさんはそう言うと、擬態を辞めたのか紫色の猫又に戻る。

 「さて、どうしたものかのう。住民が我々の手で虐殺が出来ないが、警官を死なせた以上。遅かれ早かれ爆弾魔に知られるだろうし、かといって、我々が爆発させて、住民たちが我々のせいだと認識すれば、血眼になって捜すじゃろうしな」

 元々私達の虐殺は穏便にことを済ますため、人の目に留まる事は少なく、音による周知も少ない。それに、住民が私達に近付いた時に彼等が起爆させれば、ダメージを与える事が出来る。そもそも、彼等が住民達に爆弾を仕込んだ理由は何だろうか?

 「どちらにしろ、今日がXデーってことか。だったら、こっちから仕掛ける? 向こうから攻めてこっちの被害が大きくなるのも嫌だs――――」

 黄色の猫又の発言を遮るかのように、派出所にいるはずのアールナさんが、腹部から大量出血が起こっている状態で瞬時に現れたのである。

 私は唐突に現れた彼女の姿を見て怯んでしまう。

 「アールナあああぁぁぁぁ」 

 リィールさんが嗚咽混じりに叫ぶと、ピンク色の猫又が奥から現れ、アールナさんの身体に触れる。すると、重傷の彼女はピンク色の膜に覆われる。

 「ニュム。アールナが、アールナが、治るよね」

 尾が五本あるピンク色の猫又の名前はニュムと言うらしく、リィールさんが取り乱しながら、彼女を摩る。

 「治るから、落ち着きなさい」 

 ニュムさんは溜息混じりに言う。

 それにしても、リィールさんの動転さは異常だ。他の猫又達は驚いたり、悲しんだりはしているが、彼女のように狂ってはいない。それほど彼女達の関係は親密ということだろうか?

 「カッ……」

 アールナさんは気が付いたらしく、少量の血を吐いて、意識を取り戻す。

 「爆弾魔……。私は彼にやられた……。そして、警官の死は住民に知られ……、私達を犯人として探してるわ……」

 私達が動く前に彼等が先手を打ったようだ。

 「それと……住民に爆弾のことを打ち明け、今日中に私達の死体を彼等に見せないと爆死すると公表してたわ」

 住民を脅迫して、猫又達の捜索。それが、爆弾を設置した理由。猫又の生息地域は全く分からないが、もし、世界の至る場所にあるとしたら、ここに搾った理由があるはずだ。

 「そうれはそうと、どうして、アールナが戻ってこれたの? そのような能力ないよね? それか、私達に隠してたとか?」

 リアさんが問いかける。私が知っている限りではテレポートの能力を持っているのはリィールさんだけである。彼女が自発的に送ったのだろうか。だとしたら、アールナさんの姿を見てあそこまで発狂しないだろう。

 「“逃奔押エフギウム”。リィールが造った基地転送ボタンじゃよ」

 フェータさんは懐から紫色を基調とした小型スイッチを取り出して、私達に見せる。

 「成程ね~。私達以外持ってるってわけか。まあ、住民が私達を探しているのなら、この場所が見つかるのも時間の問題か」

 「だね。私達が住民を始末するのが先か、それとも住民が私達を始末するのが先か。それ以外にも私達が屠留町を出たり、爆弾魔が痺れを切らして住民を勝手に爆破して全滅したりという様々な結末があるのだけどね」  

 青色の猫又が涼しい顔で言い放つ。

 「じゃあ、屠留町の人間を殺害したくない奴等は町から出て行けばいいってことか? 俺は流れ者だし、この町に愛着もなく、怨んでもないからな。町を出るかな」

 黄色の猫又はそう言いながら背伸びをする。

 「トニトルの言うとおり。命を惜しかったり、住民に興味がない輩は今直ぐに出て行っても構わん。しかし、明日の正午までに“蜘蛛ネア”の敷地にある“felesフェーレース”で集合じゃ。そこで次の拠点を決める。いいな」

 フェータさんが大声で言い放つとここの場にいる六割程度の猫又達が起き上がる。彼等は、すぐに出口に向かったり、誰かと話した後で散り散りに出口に向かって行く、纏まってこの場を出るのは良くないと思っているらしい。

 「思っていたよりも、ここから出る輩が多いようじゃ。彼等が完全にいなくなるまで、攻撃を仕掛けるのは止めるかのう。逃亡を選択したのに、戦闘になるのは可哀想じゃわい。それはそうと、トニトル。お主、出て行くのではないのか?」

 フェータさんは、いつの間にか地面に伏せて寛いでいるトニトルに向けて問う。

 「ん? この町出身の猫又達が、全員残ると思っていたけど、そうでは無いみたいだし、俺がいなくなってせいで、全滅したとかなったら嫌だからな。少しくらい付き合ってやるよ。まあ、やばくなったらすぐに逃げるけどな」

 そう言って、トニトルは大きな欠伸をすると、両目を瞑る。

 その仕草を見て、彼はただ単に眠たいだけなのではないかと思った。

 「相変わらず気まぐれな奴じゃのう」

 フェータさんは溜息混じりに言って腰を落とす。

 「アルゲン」

 リアさんから声をかけられたので、振り返る。

 「私が見た未来教えようか?」

 二時間後、私は彼女と共に何かをしているらしいが、一体何なのだろうか?

 「教えてくれ」

 その答えを聞いたリアさんは、私の耳元に顔を近づける。

 「爆弾魔と戦闘」

 それを聞いた私は落胆し、彼女は私から離れる。

 私は戦闘が得意ではないというのに、困ったものだ。

 「私の能力は気付いていると思うけど、電気操作。私が他人の記憶を読み取れたり、改竄かいざんしたりできるのは、脳内の電気信号を弄っているから。脳は種別や固体などで形状が違うし、たまに失敗することがあるから、脳の構造を知っている者や、死んでも良い様な奴しか基本的にしないんだ」

 そういえば、彼女が私の記憶を読む際に死亡する可能性があるとか言っていたな。初対面だったから“死んでも良い様な奴”扱いだったのだろうけど、今はどう思っているのだろうか?

 「アナタの方は能力とか使えるの?」

 「全く。ただ、裏狸に憑依した際に氷の能力を使っていたから、使用方法が分かれば出来ると思う」

 そう。この住民達を実験体にしてそれを試してみるつもりだったが、爆発物となった住民に、何らかの手違いで私が被爆する可能性がある。これが終わった後に、エマ様などに頼んで修行を積んだ方が人が死なないために平和的だろうが、果たしてそれが得策なのだろうか?

 「そ。じゃあ、爆弾魔の戦闘で生き残っているのは相手だけかもね」

 そう言い残し、リアさんは私から遠ざかる。

 その言葉の真偽は不明だが、爆弾使いの相手となると、肉弾戦は無謀であり、私の生存確率は極めて低いのだろう。だとしたら、爆弾魔と対峙するまでに、氷一粒生成出来る程度でも操れるようになるのが良いのだろう。それに、爆弾魔と対峙しているということは少なくとも、その間に私が死亡するというのは確実に無いという事だ。恐れずに住民を実験体として扱おうと思う。

 そう思うと、少しでも長い実験時間が欲しくなってきたが、まだ逃走を企てている猫又は少しだけ残っているため、焦燥を抑えて冷静に待とうと、心に言い聞かせるのであった。


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