ステータス
夕日が沈み、暗くなった道をとぼとぼ歩く。
そういえば靴下で飛び出してきたなーと自分の足を見ながら思った。
色々ショックな出来事があったあとでもお腹はすくようで、帰り道にコンビニへ寄った。
少し回り道になるがミルクの瓶の看板をしたコンビニの中へ入る。立っているのも疲れた気分なので飲料品の入った冷蔵棚からウーロン茶を1本とりお弁当売り場へと向かう。
自分の好きな唐揚げ弁当があったのでそれをとってレジへ向かう。お値段600円だったが小銭がなかったので1000円札で支払うが残り2000円しか入っていなかったのでお金をおろさなきゃと思ったがすぐ近くにあるATMに向かうのも気怠く感じ、まぁいっかとさっさとコンビニから出てしまう。
走ってカラカラの喉にウーロン茶を流し込む。水分をとるだけで全身に血が回り始めたような感覚がする。
ウォッチャーの絡みついていた足はかなりの気怠さが残っているが歩けないほどではなかった。
それでもあの絡みつかれた時の冷たさは思い出すだけもぞっとする。
ため息をつきながらアパートの部屋の前についた。ポケットから鍵を取り出そうとして鍵をかけずに飛び出したことを思い出した。1DKの部屋につけっぱなしのノートパソコンだけが光っているのがわかる。
部屋の電気をつけて飲みかけのお茶を飲みながら椅子にもたれかかり、ふーっとさらに大きなため息がでる。
しばらくそうしてぼーっとしていたがお腹がすいていることを思い出してノートパソコンをどかしたあと、ビニールの袋から唐揚げ弁当を取り出してみる。この唐揚げ弁当は大きな唐揚げが3つにポテトサラダとオカカのふりかけがかかったご飯の上に海苔が乗った結構ボリュームな弁当だ。値段の割に満足のいく、お気に入りの一つだ。
弁当を食べ終えお茶を飲みほしてまたはーっとため息をつく。
やっと頭が回ってきた。
まずおさらいしよう。
見慣れないアプリが勝手にインストールされていた。
このアプリはウォッチャーなる敵から身を守るためのツールだった。
実際に襲われたし、その脅威もわかった。
ただ問題なのが自分の召喚した守護者がただの四角いかたまりで全く守ってくれなかった。
さて、今度襲われたらどうしよう。まじでどうしよう。
これっきりで終わりならいいがまた襲われる可能性も0じゃない。
新しい守護者とか呼べないのかな?
アプリを開きメニュー画面を押す。
〈召喚〉
〈ステータス〉
〈スキル〉
〈フレンド〉
(見るからに新しく召喚するっていうのないよな・・・召喚ってさっき襲われた時使った実際に自身の守護者を召喚する項目だし・・・、いやもしかしたら命令方法が悪かったのかもしれない。使い方が間違っていたからちゃんと守ってくれなかっただけかもしれない。)
自分に言い聞かせるように心の中で思う。とりあえず自分の守護者を確認しようとステータス画面を開く。
名前:ブロック
種族:ゴーレム
属性:土
存在値:10010/10010
攻撃力:D
防御力:S
素早さ:F
魔力:F
(うっわ・・・)
なんだこの偏ったスペック。
素早さ、魔力Fってなんだ。確かに動いてなかったし魔法を唱えれるようには見えなかった。
そして防御力S。上限がSSSとかあるか知らないがSってことはかなり高いのだろう。
攻撃力はD。ついさっきウォッチャーをブロックで殴って倒したことを思い出す。
(攻撃力Dで二発で倒せる?実はウォッチャーってめちゃめちゃ弱いのか?)
いままでプレイしたことのあるゲームと比較してステータスが低ランクでモンスターが二発で倒せるなんて考えられない。まぁゲームみたいにいきなり弱いスライムからなら二発で倒せるだろうが現実世界で最弱モンスターから来てくれたなんて甘い考えでいいのだろうか。
そして存在値というところに目を向ける。画面がゲームっぽくなっているためゲームのように考えていいのだろう。そうなるとこの存在値っていうのはどこにも表示されていないHPやライフポイントのことを指すのだろう。
属性は土。
(まぁ妥当だろう。色も茶色だったし。属性っていくつあるんだろう。ゲームとかだと大体6つか8つだよな。)
火は赤、水は青など先入観で属性は土だろうなーと思っていたが案の定だった。ゲームするときは移動速度上昇の恩恵がある風属性とか火力でサクサク敵を倒せる火属性が好きだったが、現実で自分を守ることを主体に考えてみれば土属性でよかったのかもしれない。硬そうなイメージあるし。
実際防御力Sとかパラメータでわかるってし。
種族はゴーレム。
(種族ってことは見た目が影響しているのだろうか。確かに種族って考えるとあの四角はゴーレムって位置付けになるのだろう。)
自分が思っていた石でできた巨人とか機械っぽい人型兵器とかを思い浮かべるがどう考えても自分の守護者がゴーレムには思えない。
(石でできてたらすべてゴーレムなのだろうか。種族があるってことは種族ドラゴンとかありそうだな・・・どうせならもっと強そうでかっこいいのがよかったな・・・)
画面に映る立方体がくるくる回っている。どうみても強そうにみえない。壁にしかならねぇ。いや、壁にもならなかったなぁ・・・
(いやまて、このアプリまんまゲームだ。この手の育成ゲームっぽいのには決まって進化が用意されていることが多い。もしかしたら進化してこいつも強くなるかもしれない)
少し気になったので開きっぱなしのノートパソコンを引っぱり、自分の前にもってきて、ガーディアンツール攻略wikiを見てみる。
先ほど読んでいたウォッチャーに対するページから「ステータスの解説」と書かれたページへとぶ。
種族:
自身の守護者の形態を現す俗称
〈ナイト、ビースト、ドラゴン、ゴーレム、ウェポン、エンジェル、デビル、アンノウン〉の8種類が確認されている。
(やっぱりドラゴンあるのか・・・ドラゴンってだけでなんか強そうだな。ナイトってことは守護者っぽく騎士でも呼ぶだろう。ビーストはまんま犬とか猫とかだろうか。ウェポンってことは剣や槍を召喚して自身でウォッチャーと戦うのか?というか剣や槍って種族って言葉は正しいのだろうか・・・。アンノウン?その他ってことかな)
などと言葉から色々想像してみる。こういう説明文から想像するとなんだか楽しくなってきた。
属性
その守護者が宿す属性を現す。守護者によっては複数属性を持っているものも確認されている。
属性はすべて〈火、水、風、土、光、闇〉の6種類。
(属性って二つ以上持ってることあるんだな。1種類しかないってやっぱり弱いんだろうか・・・)
種族と属性の説明を見て自分のブロックを見てみる。相変わらずくるくる回っている。すごくがっかり感が増してきた。いや、大丈夫。なにが大丈夫かわからないが自分はダイジョウブだ。
存在値:
守護者が世界に存在できる値を現している。0になると強制的に送還されてしまう。
存在値は召喚中の時間経過、守護者がダメージを受ける、特定のスキルを使用すると減少し、召喚していない時間に応じて回復する。最大存在値はウォッチャーおよび守護者を撃退すると増加し、召喚解除以外で消滅すると減少する。
(なるほど。存在値っていうのはHPとMPと経験値を合わせた数値と考えていいだろう。中途半端に10と出ているのは先ほど倒したウォッチャーの分か。しかしウォッチャーだけでなく他の守護者を倒しても存在値は上がるのか・・・)
オンラインゲームのように人の守護者を狙ってくる人などいるのだろうか。いやほぼ必ずいると思っていいだろう。wikiの入場者数は1万を超えていた。同じ人が何回も見たとしても結構な人数がホルダーとなっていることになる。そしてそれだけ人が多いと良からぬことを考える人も必ずいる。
(とりあえずそういう人と会わないよう願うしかないな。)
攻撃力などのステータスはゲームとそのまんまだった。
ただわかったのは、下がFで上はSまでだということ。
つまり俺のブロックは素早さ魔力が最低クラスで防御力は最高クラスということ。もうちょっと安定したステータスがほしかった・・・。
下を読み進めていくと種族について詳しい説明があった。
ナイト:
人の形をした守護者。安定したステータスとほかの種族に比べて存在値の回復が早いことが特徴。
ビースト:
獣の形をした守護者。素早さが高い傾向にあり、守護者自身を強化するスキルが豊富。
ドラゴン:
竜の形をした守護者。高いステータスと非常に強力なスキルが特徴。ただし存在値消費量がかなり多い傾向が見られる。
ゴーレム:
岩の巨人やロボットなど多彩な形をした守護者。高い防御力を持つ傾向にある。種族の特徴として状態異常スキルなどの特定スキルの影響を受けない。
ウェポン:
武器の形をした守護者。高い攻撃力とツールホルダー自身を強化するスキルが特徴。
エンジェル、デビル:
天使(悪魔)の形をした守護者。魔力が高いという傾向がある。スキルが豊富で天使は守り向け、悪魔は攻撃向けという傾向がある。
アンノウン:
どれも当てはまらない系統の守護者である。(例:スライムやキノコの形をした守護者など様々な形の報告が挙げられている)特にこれといった傾向がなく、スキルにユニークなものが多い。当りはずれが激しい。
説明文をよんで考えて頭の中でまとめてみる。頭の中で適当にまとめてみるのが小さい時からの癖だ。まとめてる最中は周りの声が聞こえなくなるほど集中しているらしい。
(種族は形だけじゃなくて色々特徴がやっぱりあるのか。ゴーレムは高い防御力と状態異常無効化か。)
そういえばウォッチャーがブロックの角をぶつけられて痛がっていたのを思い出した。
(守護者って痛覚あるのかな・・・状態異常スキルがあるってことは痛みで動けなくなるとかあるのだろうか・・・)