実験・電磁波
翌日、またまた放課後。
「あ、今日は少し遅かったですね」
「レポートを出していたからな」
「今日は実験するんですか？」
「ああ……楽しそうだな」
彼女は笑顔で頷く
「人と話せるだけで嬉しいんです」
「そうか」
彼女の発言から彼女の姿、声は俺にしか見聞き出来てない事が予想出来る。これも実験の必要があるかもしれない。
とりあえず今は前回の実験だ。俺は教授から借りた電磁波を発生させる機械を取り出した。
「今から少しづつ電磁波を強めていく、異変を感じたら言ってくれ」
「はい」
幾らか強めた所で彼女は声を出した。
「何だかピリピリします」
「ピリピリ？」
「はい、何か纏わり付いているような……身体に入り込んでくるような？」
「ほう……よし、ここまでだ」
俺はレポート用紙に記録する。
『電磁波に触れる事も可能』
まあ、これはただの好奇心からなる実験だ。特別気にする必要もない。
「今日はもう終わりですか？」
「そうだな……」
俺は時計を見る。夕方ではあるがそこまで遅い時間でも無いな。
「そういえば明日は休みでしたっけ？」
「日曜日だしな」
つまりは今日帰りが遅くなっても問題は無いわけだ。ならば……
「今日はもう一つ実験をしよう、ついてきてくれ」
「はい！」
科学室の扉に手を触れようとすると勝手に扉が開き、俺の顔に直撃した。
「いってー」
「ああ、すまんミスター」
片手で雑に詫びを入れながら入って来たのは教授だ。
「そういえば教授、最近来てませんでしたね」
ほぼ毎日来る教授が二日連続で来ないのは珍しい。
「ああ、最近一人産休になってな……そいつの分の雑用がな」
「なるほど、大変ですね」
「ああ……で、お前もう帰るのか？」
「はい、今日は少し用事があるので……戸締りお願いしますね」
「おう」
俺が軽く頭を下げて出ようとすると教授が声を出した。
「ミスター」
「何ですか？」
「えっとだな……」
教授は気まずそうに頭を掻いて
「いや、何でも無い。 すまん」
と持っていた珈琲牛乳を飲んだ。
「はあ……」
不思議に思いながらも俺は科学室を出た。
