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幽霊少女との触れ合い方

「……いない」

 翌日の放課後、科学室に入って見渡すが彼女の姿は無い。やはり夢だったか……

「さて……」

 椅子に座ってレポート用紙を取り出した。


 数分経過


「課題ですか?」

 扉が開く音も人がいる気配も感じなかったのに聞こえてきたその声に俺は飛び上がった。

 汚い斜線が引かれてしまったレポート用紙を捨てて声のした方を見る。

「あ、邪魔しちゃいましたか?」

 彼女である。夢では無かったようだ

「何処に行っていた」

「放課後まで暇だったので少し校内を見てました」

「そうか……」

 地縛霊では無いのか……いや、学校という地に縛り付けられたのかもしれない。

 ここまで考えて俺は自分の頰を叩く。違う、地縛霊でも幽霊でも無い。幽霊などいない。

 溜息をついて彼女に目を向ける

「お前、名前は?」

「えっと……わかりません」

「オームの法則、電流抵抗あと一つは?」

 いきなりの問いかけに彼女は少し戸惑って

「えと……電圧?」

 と、答えた。

「正解だ」

 俺はレポート用紙を一枚取り出して記録する。

『知識に関する記憶はある、無くなっているのは思い出に関わる物』

「何を書いてるんですか?」

「文字に書いてまとめる、研究の基本だ」

「え? 昨日の話冗談じゃ無かったんですか?」

 俺は彼女を見る。髪は胸の辺りにかかる程長く、顔は小さめ、胸も小さめ……特徴が言える程ハッキリと見えている。

 しかし、だ

「俺は幽霊なんて信じない」

「じゃあ私は何ですか?」

「それをこれから研究しようとしているのだ」

 俺はポケットからスマートフォンを取り出して画面を点ける。

 てきとうにゲームを起動して彼女を見る。

「何か変化はあるか?」

「いえ……特にはありませんよ?」

「そうか、微弱だったか……」

「ちょっと待ってよ、今の何」

 部屋を出ようとした俺の手を彼女が掴もうとした。

 もちろん掴めるわけもなく彼女の手は俺の手をすり抜ける。体によくわからない寒気がはしる。

「さ、寒い……あまり触れるな」

「……すいません」

 肩を落とした彼女を見て心が痛くなる。そんな顔をしないでくれ……

「……服の上から触ってみろ、理屈はわからないが緩和するかもしれん」

 寂しそうな顔は無くなり、彼女は恐る恐る手を出してきた。

「えいっ!」

 彼女が服の上から俺の腕を触ろうと、すり抜けようとした。

 しかし……

「……ん?」

「あれ?」

 俺も固まり彼女も固まる。彼女の手と俺の腕は重なったままだ。

 今回は前とは違う。彼女の手が俺の腕を掴んでいる、そういう意味で使ったのだ。

 つまり、だ。

「触れてる……な」

「触れてます……ね」

 俺は頭を動かす。この現象を見て、感じる。そして纏める、考える。

 前回と違うのは触れようとしたのが手と腕だということだ。

 手と腕の違い……触れる面積? 違うな。

 俺が考えている間に彼女は触れることが出来たのが嬉しいのかぴょんぴょん飛び跳ねている。あいもかわらず子供のようだ。

「おっと」

 飛び跳ねている彼女が着地に失敗してよろけて机に当たる。

 机が揺れて置いていた筆箱が落ちる。

「……なるほど」

 俺は呟いて白衣の内ポケットから実験用手袋を取り出して左手に手袋を着ける。

「おい、手を出せ」

 彼女は不思議そうな顔をして左手を出す。

 俺は差し出された彼女の手を手袋をつけた手で掴む。

 手はすり抜ける事なく腕と同じように触れ合う。

「わっ、手も出来た!」

「やはりか……」

 また喜びを体全体で表現する彼女をよそにレポート用紙に記録する。

『物を挟んでなら人間とも触れ合う事が出来る』

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