ラフィンドの町。
次回の更新は遅くなります。ご了承ください。
4/26、読みやすいように行間をあける訂正をしました。
森を抜けると、そこにはとてつもなく広々とした畑が広がっていた。
「うわぁ・・・」
思わずそんな声がでた。
「ユウナ様はラフィンドは初めてですか?」
「はい。すごいですね。こんな風景初めて見ました!」
若干興奮しながら答えた。だって本当にすごいんだよ。
翌日の昼前、僕たちはラフィンドの町の目の前まできていた。
あれからの旅は順調だった。執事さんはその日の夕方には目を覚まし、今日はもう馬車をうごかしていた。時々モンスターが襲ってきたけど、「鋼の牙」の敵じゃなかった。
僕はそれを見ながら出てきたモンスターについて説明書から色々教えてもらっていた。
「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」ってね。己はまだ未知数だけど。
そんなことを考えてたら町はもう目の前だった。
ティアさんが関所の兵と少し話すと一人馬を走らせていった。その後すぐに馬車は町の中へと走りだす。街の中は区画整理されていてきれいな町並みだった。
「わぁ。きれいな町並みですね。」
思わず外を眺めながら話してしまった。でも町が素敵だから仕方ないよね。
でも市場が活性化してるってかいうからもっと混沌としてると思ってた。
「そうですね。私もこのきれいな町並みを気に入ってるんですよ。」
そういうティアさんの顔はとても嬉しそうだった。それが急にいたずらっ子のような顔になる。
「市場のほうは市場のほうでまたすごいですよ。」
自らハードルをあげたね?
「へぇ。じゃあ期待しちゃいますよ?」
「はい。期待しててください。」
馬車は広い大通りを中央に向かって進んでいく。するとぽつぽつと屋台が見え始めた。中央に近づくにつれ屋台はどんどん増えていく。それに伴い人通りも増えていく。そして・・・
「うわぁ。うわぁ。」
僕は今日何度目になるだろうかわからない感嘆の声をあげた。
中央は屋台と人とで溢れかえっていた。なんだかお祭りみたい。
人も多種多様で、身長はちっちゃいのに大人な人や、ほとんど狼男みたいな人もいれば、猫耳さんもいる。
「ここが中央市場です。グランヴェリアの台所、商人の聖地、食の都なんて呼ばれることもあります。」
そんな話を聞きながら僕はひたすら市場の様子を見ていた。
「期待に応えられましたか?」
「もちろんです!」
「それはよかった。」
そう言って笑ったティアさんの笑顔は今までで一番だった。そんな彼女がとても素敵にみえた。
一瞬どきっとした。
僕の中の誰かが「ほれてまうやろー!!!」って叫んだ。
「この市場には自警団がいるんですよ。シルヴェルト家の私兵も連携して治安維持や交通の整理をしています。みなさんとても優秀なんですよ。」
「すばらしいですね。それなら皆さんも安心して買い物ができますし、僕も買い物してみたいです。」
「ふふ。」
「どうしました?」
「この町を褒めてもらうと自分のことのように嬉しくて。」
ティアさんは本当にこの町が好きなんだなぁ。
その後僕は外を楽しみながら、ティアさんはそんな僕を終始笑顔で見ながら、目的地である屋敷に到着した。
「「「おかえりなさいませ。お嬢様。」」」
・・・さすが貴族様。お出迎えが半端じゃない。
入り口で左右に分かれて使用人たちが挨拶をする。こんなのテレビでしかみたことないよ。
あ。ここにも猫耳さんや犬耳さんがいる。かわいいなぁ。
建物に入る前に、鋼の牙は報酬を受け取って冒険者ギルドへ報告に行った。
残った簀巻きエロシンはマッチョなお兄さんに担がれていった。
僕はお昼時ということもあって食事に誘われた。こっちの世界の、しかも貴族相手のマナーなんて自信のない僕は断ったんだけど、断りきれなかった。
マナーは向こうの世界のものを、それでもわからないものは説明書に解説を頼んで何とか乗り切った。
味?それどころじゃなかったよ。
食後、客室に通された僕はティアさんに改めてお礼を言われた。そして・・・
「これは助けていただいたお礼です。どうぞ受け取ってください。」
そういわれて差し出された袋の中には、金貨が30枚も入っていた。
「僕はこういうのの相場がわかりませんが、これは明らかにもらい過ぎですよ。」
「どうか受け取ってください。私はこの金額でも少ないと思っています。もしあそこでユウナ様が通りかからなければ、私は拉致されたか、最悪死んでいたかもしれません。そんな状況を考えたらこれは先ほども言いましたが少ないぐらいなんです。」
「しかし」
「言い方が悪いかもしれませんが、私はこの金額に見合う価値がありませんか?」
「僕の負けです。ありがたくいただきます。」
ちょっと強引だけどやっぱりいい人だ。どこかの神様にも見習って欲しい。
「馬車は明日にでも出しましょう。今日は泊まっていってください。夕食もぜひ。」
なんか口では勝てそうにないのでもうあきらめて受け入れることにした。
「ありがとうございます。」
「では夕食まで市場を見てこられてはいかがでしょう?私としてはぜひみてもらいたいです。」
「いいですね。さっそく買い物をしてみたい希望が叶います。」
「じゃあ一人案内にメイドをつけますね。ベル。」
「はーい。」
髪の毛がワイルドだけどかわいい女の子が出てきた。あ、猫耳だ。
「ユウナ様に市場を案内してさしあげて。」
「わかりましたー。ユウナ様、ついてきてー。」
「では行ってきます。」
「楽しんできてください。」
そう言って僕は市場へ案内してもらった。
「改めてみるとすごいねぇ。」
「そうですねー。ここはくるだけでもたのしいばしょですー。」
お屋敷からここまで、お屋敷の建物出口にさしかかったら地下のほうから「マッチョは嫌、マッチョは嫌ぁぁぁぁぁ」っていう声が聞こえてきた以外は特に何も問題もなかった。
世の中には知らないほうが幸せなことってきっとあるよね。
屋台にはいろとりどりの果物や野菜が置かれていたり、何かの肉を焼いているところがあったり、食べ物関係が多い。驚いたのは、自分たちの世界にもあった果物や野菜もちらほらとあること。っていうより半分くらいがそんな感じ。何かを買いたくなるけど無駄遣いはできない。耐えてるんだ僕の理性!
そんな誘惑と戦いながら楽しく市場を見学してると、警備や交通整理をしてた人たちの様子がなんだかあわただしい。なんだろう?
「なんだかちょっとようすがへんですねー。なにかじょうほうがないかきいてきますねー。」
ベルちゃんはそう言って警備の人と何か話してたけど、すぐに帰ってきた。
「たいへんです!そらをとぶおおきなまものがこのまちにちかづいています!」
僕この世界に来てやたら厄介ごとにまきこまれてない!?