新しい魔法と賊の扱いについて考える。
ブックマークありがとうございます♪
4/26、読みやすいように行間をあける訂正をしました。
僕は今、ティアさんが回復魔法を使うとこを少し羨ましく思いながら見ていた。
説明書によれば、あれは回復魔法の中級にあるヒールという魔法なんだって。
幸いなことに護衛の人たちはたいした怪我はなかったようで、回復魔法を受けた後は元気そうだった。
うん。魔法使いっていったらああいう魔法だよね。決して肉弾戦をすることじゃないよね。
僕の魔法は身体強化だけだもんなぁ。
・・・あれ?使える魔法が増えてる。空間創造と、・・・ヒール?
なんで使える魔法が増えたんだろう?こんなときこそ説明書。
(Lvアップによる恩恵と、悠喜様の魔法使いとしての才能による効果です。魔法の構築がわかり使用可能になりました。)
ぉぉぅ。そんな機能があったのか。すごいね僕!犠牲にするものは多いけど・・・
早速使ってみたい。だってやっと魔法使いらしいことができそうなんだもん!
思い立ったらすぐ行動。まだ治療の終わっていない護衛の人に魔法の試しうち(げふんげふん
・・・治療をしようと近づいた。
「失礼します」
「お、おう。さっきはありがとな。で、なんだ?」
護衛のおじさん顔が真っ赤だ。そういえば今僕女の子だっけ。あれ?このおじさんどっかで・・・?
まぁいっか。
「傷を見せてもらえますか?」
「お譲ちゃん、見ても気分のいいものじゃねぇぞ?」
「そんなことありません!ティアさんを守ろうとした立派な傷です!」
思わず力説してしまう。命がけで人を守ろうと負った傷だ。そんな風に卑下してほしくない。
「ありがとな。仕事とはいえ、そう言ってくれると嬉しいよ。」
そういいながら相変わらず真っ赤な顔で笑いながら傷を見せてくれた。
血を見るのは苦手だけど、気分のいいものじゃないって言葉を否定した手前、嫌な顔はできない。したくない。震える気持ちを必死で押さえ込んだ。
左肩に裂傷、右手にも細かく傷がついてる。でもとりあえず命に別状はなさそうだ。
僕は傷のひどい左肩に手をかざして「ヒール」とつぶやく。
すると僕の手から光が溢れ、あっという間に傷がふさがった。おぉ。魔法っぽい。
「え?もう傷が塞がった?しかも傷すら残らないだと?ウソだろ?」
おじさん今度はものすごく驚いている。感情の忙しい人だな。そんな驚くようなことなのかな?
「お譲ちゃん、今の魔法はリジェネイトか?」
「リジェネイト?いいえ?ヒールですよ?」
聞きなれない単語が出た。
「ヒール?あれが?信じられん・・・」
なんだか僕また何かやらかしたっぽいぞ?
おじさん真剣に何かを考えてるみたい。右手の治療まだなんだけど痛くないのかな?
「あの、右手の治療もしていいですか?」
「あ?あぁ頼む。命の恩人に対して余計な詮索は失礼だな。すまなかった。」
「いえ、気にしてませんので。」
右の手にもヒールをかけた。やっぱりあっという間に傷が塞がっていく。もちろん痕も残らなかった。魔法ってすごい。
軽く感動しつつ治療も終わり顔をあげると、おじさん今度はじーっと僕の顔を見てた。なんだろう?僕の顔に何かついてるのかな?
とりあえずにこっと笑って顔を傾げてみる。
おじさん再び真っ赤になって顔を逸らした。顔色が変わるの一瞬だったよ。やっぱり感情の忙しい人だ。
「なぁお譲ちゃん。どっかであったことないか?」
僕もさっきそう思ったんだよね。こっちの世界に来て会った人間なんてそういない・・・あ。
冒険者ギルドで絡んだりアドバイスくれたおじさんだ!っていうことはこのメンバーは「鋼の牙」?
まずいまずいまずい!
ただでさえ親切なアドバイスを破ってここにきてるのに、こんな格好で暴れまわってるなんて思われたら精神的に死ぬ!ていうか世間狭すぎ!
「さ、さぁ?他人のトラ似では?」
噛んだー!めっちゃ動揺してるー!こんな演技じゃばれる!でもまだ性別が変わってるから絶対ばれない!
きっとばれない!
ばれない・・・よね?
「あぁすまん。詮索はしないなんていってこんなこと聞いて重ね重ねすまん。」
「あ、あぁいいですよ。気にしてませんから。」
ほっ。助かった。これ以上近くにいたらばれる可能性が高くなる。
幸い他の護衛の治療も済んだようだし、早く移動を開始してもらおう。
「すみません。護衛の方で馬を扱える方はいますか?」
「大丈夫だ。四人ともできる。」
「四人で交代しながらやりましょう。」
「すみません。よろしくお願いします。その分の報酬は後で上乗せさせていただきますので。」
「いや、それはいい。今回の件は護衛として役に立てなかった俺たちに非がある。」
「いいえ。私たちこそこういう状況も予想するべきでした。なのでこれは正当な報酬として受け取っていただきます。」
「・・・わかった。ありがたくうけとろう。」
ティアさん、すっごく低姿勢で好感がもてる。それにちゃんと能力に見合った報酬も出せるし人を見る目がある。貴族ってもっとふんぞり返ってて偉そうなイメージあったけどこれが普通なのかな?
「鋼の牙」の人たちも言葉遣いはアレだけど、自分たちの失敗を認められるし、面倒見もいいしすごくいい人たちだ。助けてよかったなぁって心から思う。
「で、この賊どうする?」
・・・すっかり忘れてた。
私の蹴りで地面にめり込んでいるのが二人、バランスを崩して突っ込んで吹っ飛んだのが二人、ステッキでぶっとばしたアサシンが一人。しめて五人。
「一人は情報が欲しいので生かしたまま簀巻きにして連れて行きましょう。」
「だったらあのアサシンがいいと思いますよ。口が軽そうなので。」
実際軽かったし。
「そうですね。ではそのアサシンを誰か縛り上げてください。」
「あ、んじゃ自分が。」
「おう。ガーディたのむ。残りのやつは・・・」
「今回のやつらはかなりの手馴れだったし、手配書の回る凶悪なやつだったら首を持っていけば町で報奨金がでますよ。リーダー。」
「雇い主としては正直、首をぶら下げて旅をしたくはありませんね。」
「なら放置だな。」
「とどめはしないんですか?」
「バゼット、俺が殺ろうか?」
怖っ!
「そうだな。生かしておくと後々面倒そうだ。ティアさん、いいか?」
「いえ、もしかすると・・・逆に後々のためにも生かしておいたほうがいいかもしれませんね。」
「あんたがそういうならこのままにしよう。お、アサシンも縛り終わったようだな。」
「では出発しましょう。魔法使いの方、お待たせいたしました。もうしわけありませんが、私の執事が怪我が治ったばかりで衰弱しております。横になって一緒に乗ることをお許しください。」
「そんな、そちらのほうが優先ですよ。気にせずにお願いします。」
「ありがとうございます。では私と執事が前に行きますので魔法使い様は後ろの席へお願いします。」
「ありがとうございます。」
「簀巻きアサシンはどうする?」
「私たちの足元にでも転がしておきましょう。」
こうして僕たちは賊を放置してこの場を後にした。
僕は低姿勢な貴族様もいい人っぽい冒険者さんも、敵に回すととても怖いのでむやみに怒らせないようにしようと心の片隅で決心しました。