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異世界でなった魔法使いが想像と違う!  作者: 桜華
第二章:異世界でなった魔法使いの旅路
49/57

勝者の権利

決着です。


7/4、シルクの一人称を「ボク」に修正しました。

じー


「・・・あの」

「ん?なんだ?」

「そんなに見られてると食べにくいんですが」

「なんだそんなことか。気にするな」

「気にします」

「だけど今のお前は断れない立場だろう?」

「むぅ・・・」


僕は今、ティアと朝食を食べていた。

・・・ギルさんに見つめられながら・・・


そう。僕はあの勝負に負けた。








ギルさんに向かって放った○クスカリバーは見事不発に終わった。いや、威力のある攻撃にはなったけど、それはギルさんの予想の範疇のようだった。


「ガルルルルァァァァァァァァァァアアアアアアアア!!!」


さすがにステッキの破壊は無理だったけど、僕の手から弾き飛ばすには十分だった。

武器を飛ばし、僕の両肩に曲刀の先が刺さ・・・らなかった。

首筋数ミリのところでギルさんが止めた。


「・・・お前との戦闘は楽しいが、傷をつけたいわけじゃねぇ。降参してほしい」


これが本番だったら僕は死んでいた。悔しいけどこれが今の僕の実力なんだ。


「負けました」

「っしゃあああああああああああああああああああああああ!!!」


ギルさんが咆哮する。


「決着ぅぅぅぅぅぅぅぅ!勝者はギルさん、ギルさんだ!」


ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!


歓声は一際大きくなる。

耳に入る声を聞きながら、僕は地面にへたりこんだ。

敗北感、虚脱感、他にも色々抱えてたのと、緊張の糸が切れたことが原因だと思う。


「負けちゃいましたね」


後ろから声をかけてくれたのはティアだ。試合が終わったから近づいてきてくれてたみたいだ。


「うん。負けちゃった。ごめんね」

「なぜ謝るんですか?」

「僕は自分の気持ちも、ティアの気持ちも守れなかったから」


僕を好きだといってくれたティアが、口説かれてる僕をみて気分がいいはずがない。


「そんなの気にしなくていいんですよ。私だって止められなかったんですから。それにユウナの魅力を考えればこれからも口説く人は増えるでしょう。私はそれでもユウナに選んでもらえるように努力するだけです」

「ティア・・・」


僕の胸が熱くなる。


「さぁみんな聞けぇ。これ以降この町でユウナを口説けるのはギルさんだけだ。ユウナはアウトだと思ったらその場で「アウト」と宣言してくれ。この町の連中はほぼ全員協力する。それがこの町のルールだからな」

「わかりました」

「ユウナ、絶対に俺に振り向かせてみせるからな」


ティアとの話の腰を折られたうえに心まで折れそうなギルさんの台詞。

それに今後のことを考えて僕は肩を落とした。









そして話は今に至る。


「剣士や魔法使いの服もかわいいが旅の衣装もエキゾチックな魅力があっていいな」

「それはどうも。ていうかギルさん、ギルドマスターがこんな所にいていいんですか?」


ただでさえ決闘での話題を持ってる僕に、この町で有名なギルドマスターまで一緒だ。とにかく視線が痛い。それでも服を褒められてちょっと嬉しかったのは秘密だ。


「問題ねぇよ。休みは溜まってたし、俺がいなくてもサブマスは俺がいろいろ叩き込んでるから優秀だ」

「そうですか」


この人本当に有能だな。


「それで?ユウナは今日これからどうするつもりなんだ?」

「それはこれからティアと相談して決めるんですよ」


ここでずっとしゃべらなかったティアが口を開いた。


「そうですね。どっちを優先するかですよね。強化を優先するか、マインの足取りを優先するか」

「今回の戦いで力不足は実感したしね。僕は強くなることを優先したいかな」


この世界に来て襲撃者の撃退、アナザードラゴン退治、城への殴り込みに宮廷魔道士筆頭を倒すっていう結果があって、僕は少々強さに自身を持ってた。それがケンさん、ギルさんと出会って伸びてた鼻を簡単にへし折られた。自分より強い人はたくさんいるんだ、少しでも対抗できるように強くなっていたい。


「なんだお前ら、強くなりたいのか?」

「はい。そのためにこの町まできました」

「で?その強くなる方法っていうのは?」


なんだか僕たちの会話にずんずん踏み込んでくるギルさん。

ここで話していいのかどうか不安な内容もある僕はティアの顔を見る。


「ティア?」

「うーん。決闘で戦い方は見られてますからね。それでもなるべく秘密にしたいんですが・・・」

「んー。じゃあその強くなるのを手伝ってやる。自慢じゃねぇが役に立てると思うぜ?」

「ティア、これって渡りに船じゃないかな?」

「渡りに船?」

「困っているときに、ちょうどよく助けになる人や環境に恵まれること、 かな?」

「そうですね。ギルさんならいくつかいいアイディアもできそうですしね」


僕たちは決心してこの町に来た理由をギルさんに説明する。


「ほぉ。そうやってあの不思議な効果をだしてたのか・・・あぁ、他言はしねぇから安心しな」

「はい。そこは信用してます。で、町で情報を収集して、ここよりやや北よりに西に進んだ山のふもとの森に生息するモンスターは結構強力らしいので、そこでカードをたくさん作るついでに戦闘の経験を積もうかと」

「ふむ・・・」


そこで何かを考え込むギルさん。


「よし。俺も同行しよう」

「「はぁ?」」


僕とティアの二人の声がハモる。もっとも僕の声は不機嫌に、ティアの声は本当に不思議そうなトーンだったけど。


「色々指導してやるよ。たとえばユウナには技術を、ティアには戦闘のコツなんかいいかもな」


正直かなり願ったり叶ったりなんだけど、条件がよすぎる。何かたくらんでるとしか思えない。


「あーその目は色々疑ってんだろ?一応説明してやるとだな、強くなるために俺が教えるとなると、しばらくこの町に滞在することになるだろ?」

「まぁ」

「そうですね」


僕とティアは顔を見合わせながら頷く。


「しばらく滞在すればこの町のよさをアピールする時間ができる。これでまずノルドの「町に迎える」のチャンスをつくるわけだからノルドへの言い訳も立つし、ノルドとしても歓迎だろう」

「それは」

「まぁそうですね」

「これは俺にもチャンスになる。一緒にいればアピールも口説く時間も増えるからな。まぁそっちのデメリットといえばこれくらいだろう」

「それは考えましたけど、それは覚悟のうえだし、ギルさんの正当な権利ですし」

「あー」


ん?ティアは何かわかったみたい。


「ユウナ、ギルさんやノルド様にとってのメリットが大きいんですよ」

「そういうこと。どっちも利があるいい話しだろ?」

「ああなるほど」


僕にとっては気にしないことでも向こうからすると十分メリットが大きいってことか。


「どうします?ユウナ」

「どうもこうも」


もともと渡りに船だって言い出したのは僕だしね。対価を吹っかけられるかと思ったから身構えすぎてたかもしれない。


「「よろしくおねがいします」」

「おう。俺も二人がどれくらい強くなるか楽し」

「ギルにぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


ドムッ


目の前にいるはずのギルさんが消えた!?なんか前にもこんなことがあったような・・・


ガッシャーン!!


「ギルにぃお休みとったんだって?じゃあボクの修行に付き合って!お願い!」

「っだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!またお前かシルク!つか毎度毎度なんで俺が気配を読めねぇ!?」


脅威のミサイル娘、シルクの登場だ。僕もそうだけどあのギルさんに気配を読ませないとかこの子もノルド様やギルさん同様規格外だな。

思わす白目で「シルク・・・恐ろしい子」とつぶやきたくなる。

シルクはギルさんにくっついたまま食い下がる。


「えぇ、いいじゃーん。ボクも早くみんなと同じくらい強くなりたいの。じゃないとまたティアやユウナと戦えないじゃん」

「ええい、離せ。だいたいお前、城にはノルドもいるし、教育係も充実してるだろ?」

「ぱぱは教え方下手だし、教育係はボクより弱いじゃん。なによりギルにぃは教え方がじょうずだもん。ね?ね?」


ギルさんはため息をしつつ、観念したように話しかける。


「シルク、落ち着け。まずは周りを確認しろ」

「周り?」


目の前には事態ついていってない僕とティア。周囲には朝食を止めてこっちを見てる客。手が止まってる給仕とコック。覗き込む宿泊客。

訪れる止まった時間ザワールド

それでも体感的には前より早くに時が動き出す。

シルクはギルさんを離すと、堂々とした佇まいで普通に話しかけてきた。


「で、どうだろうかギル様?」

「悪りぃ。今この二人と約束しちまった」

「ほぅ。二人と一緒に鍛えていただけるのですか?」

「いや、なんでそうなるよ」


いや、なんで普通の会話に戻れるの。

でも周囲もさっきの騒動はなかったかのように日常に戻ってる。

・・・ようするに日常茶飯事なんだね?シルク。


「ギルにぃ、ボクのこと、嫌い?」


シルクが涙目で下から見上げるようにギルさんを見る。

あ、もうこれ断れないな。


「っあーもう。わかった、わかったよ。ただし、そっちの二人が許可をだしたらな」


ちょ、ギルさんこっちに振るの!?


「あの、ダメ・・・ですか?」


うるうるうるうる


「・・・ティア」

「無理です。私にも断れません」


ティアでもダメか。


「ただし、この町から出たところでするので、ノルド様の許可を取ってください」

「やったー!三人ともありがと!大好き!!」


そう言って僕たちに抱きつく。

そのまま勇み足で入り口まで行くと


「じゃあ早速許可もらってくるね!」


と言って駆け出しそうになるところをギルさんに止められる。


「待て。まずは落ち着け。俺たちも一緒に行くから少しまってろ」

「はーい」


そう言って戻ってくるとギルさんの隣に座って待ってくれた。




この後、ノルド様に許可を貰いに行って大歓迎で許可を貰ったのは言うまでもないが、ノルド様が一緒に行くと言ってきかないのを止めるのに苦労した。





余談

サイコロの神はギルさんを勝たせました。最後に本当に大番狂わせがでるとは・・・

シルク残念。でもきっといい人が見つかるよ。

これで完全妹属性です。

そしてティアもユウナも残念。ティアにはライバルが、ユウナはよりによって男に好かれます。

カオスです。

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