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異世界でなった魔法使いが想像と違う!  作者: 桜華
第二章:異世界でなった魔法使いの旅路
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ユウナの厄日

「勝ちます。僕の心の安寧のために」

「逃がさねぇよ。狩りも勝利も・・・お前もだ!」


ギルさんは本気だ。その獲物を狙うような目はやめて。

そもそもギルさんはなんで僕に執着するんだろう?ギルさんなら僕よりもいい人がいっぱいいそうなんだけどなぁ。たとえばシルクとか。


「勝負前からお互いボルテージも十分だ!今回の決闘のきっかけの二人が決勝戦なのは必然か運命か!二人の強さは疑いようなし!運命の女神はどちらに微笑むのか!もう言葉はいらねぇ。決勝戦、開始だぁ!」


身体強化ぶーすと!」

「フルステータス上昇!」


なっ!?今のは魔法!?ギルさん魔法が使えたの!?これ以上何か使われるのはまずい!


「アンチマジック!」


そしてアンチマジックを使って後手に回った。短剣が二本こっちに飛んでくる!


「うわっ!?」


それを避けるともう目の前にはギルさんがいる。

同時に突っ込んできてたのか!?


「もらったぜ!」


攻撃がくる!僕はくるであろうダメージを予測して目を瞑る。

・・・あれ?しかしいつまでたっても攻撃はこない。

おそるおそる目を開けて・・・


ちゅっ。


頬に感触。


へ?


目の前にはニヤニヤしたギルさんが立っていた。

男性陣からは嫉妬と憤怒の怨嗟が。

女性人からは狂喜と狂鬼の悲鳴が。

状況が把握できない僕は呆然となる。


「くっくっくっ。なんだ?キスされるのも初めてか?」


キス?頬に感触?・・・まさか!


「お前のそんな顔が見られたし、ファーストキスもまだだとわかった。攻撃のチャンスを一回フイにする以上の価値があったな」


そして身体強化されてる僕の耳は後ろの台詞も聞き逃さなかった。


「私だってまだキスしてないのに。油断の代償はオシオキに追加でしょうか」

「いいなぁユウナ・・・ギルにぃボクにだってキスしてくれないのに・・・」


恥ずかしさと悔しさ、ティアに対する申し訳なさ、たくさんの感情が混ざって怒りに変わる。


「ギルさん。僕は本気で怒りました。この力を手に入れて初めて本気を出します。・・・死なないでくださいね?」


ギルさんが顔色を変えて僕との距離をとるためにジャンプする。逃がすか。

一瞬でギルさんに追いつく。


「チッ!ファングクロー!」


巨大な狼の爪を髣髴とさせる攻撃。迫る六本の刃。でもその攻撃は一度見たよ。

僕は力いっぱい刃をはじく。


ギィィィン!ギィィィィィィィィン!!


六本の短剣を全部弾き飛ばした。

ギルさんも予測をしてたのか、反動で蹴りが飛んでくる。

僕はあえてそれを受けた。


「なっ!?」


横腹に受けたその足の足首をつかんで僕はギルさんを地面に投げ飛ばした。


ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオン!!!


すさまじい音が会場に響く。破片が客席に飛んでくけどみんな避けるなり迎撃するなりで被害はなさそうだ。さすがというかなんというか。

僕はスカートをはためかせながらゆっくりと着地した。

できたクレーターの中心にギルさんがぼろぼろになって動かない。

会場が見守る中、僕が声をかける。


「まだまだ余裕でしょう?そんなことをして油断させようとしても無駄です」

「まぁ、ひっかかったらもうけものだと思った」


そういうと飛び起きる。


「にしてもその姿が本気モードということか?ユウナには赤よりピンクや白のほうが似合うぞ?」


そうか。そういえばさっき降りるときに視界に入った服やスカートがいつもと違った気がしたのはそのせいか。まぁどうでもいい。今はギルさんをを叩きのめせればそれでいい。

僕が無言で返すとギルさんが舌打ちをする。


「ひとつ忠告だ。怒らせた俺が言うのもなんだが怒りに任せた攻撃は、低レベルでは有効かもしれないが俺のような高レベルとの戦いじゃ愚作だ」


なにいってるんだ。怒らせたのはギルさんだし、現に今僕のほうが押してるじゃないか。そんな手にはひっかからないよ。

さぁ、もう一回いくよ!


どんっ!


再び一歩で距離を詰める。ステッキを振りかぶる。

そのときにはギルさんも二本の曲刀を抜いていた。また弾き飛ばしてやる!


ギィィィィィィィィィィィィィン!!!


ギルさんはそれを片方だけの剣で受け止めた。そして・・・


「返すぜ!」


僕のステッキの威力を利用して回転、もう片方の剣で僕をなぎ払う。

あまりの攻撃スピードに反応しきれない!腰の辺りに一撃もらって吹っ飛んだ。


がはっ!?


なんでこんなに体にダメージが通る?ケンさんの時もそうだ。ダメージを受けた状況を考えれば、アナザードラゴンやマインの攻撃のほうがよっぽど強そうなのに!

それでもケンさんの時ほどひどくはないみたいだ。あの時と違って何とか立てそうだ。

僕はリジェレイトを唱えながら立ち上がる。


「言っただろ?怒りに任せた攻撃は愚作だと。落ち着いて攻撃してこい。じゃないと」


ハラリ。


ギルさんの台詞が途切れる。じゃないと何?

それに会場も静まり返ってる。何が起こってる?


「ユウナ、スカート、スカート!」


ティアの声が響く。スカート?

ふと下を向くとリボンが切れてスカートが落ちていた。

あぁ、変身するとちゃんと下着も変わるんだ。そういえば以前にエロシンにスカートの中覗かれたんだっけ?

って、そうじゃない!

僕はあわててスカートを上げる。


うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


僕の心の声とコロシアムの歓声がハモった。


見られたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


僕は思わずしゃがみこんで両手で顔を覆う。

どうしよう、もうお嫁にいけない。いや、行く気はないけど。


「ユウナ」


この声はギルさんか。僕は恨めしそうな顔をして見上げる。


「これは決闘だから謝りはしない。が、そのままでは戦いにくいだろう?そいつを修復することはできるか?」

「むー。どうだろう?」


言いたいことはいっぱいあるけど、まずはこれを早急になんとかしたい。

取扱説明書、どう?


変身ちぇんじした服が破損した場合、直す方法はある?)

(時間を置けば修復は可能。即時ということであれば、魔力を媒体にできる繊維を使用すれば取り込めます)


「魔力を媒介にする繊維があればできます」

「わかった」


ギルさんは背中の鞘を止めてた紐を解いて僕に渡した。


「これは?」

「そいつは四元素の糸を使った紐だ。魔法にも直接攻撃にも強い。また素材的にも魔力を媒介できる」

「これ、いいものじゃないんですか?」

「どうだったかな?」


名前からして高そうじゃん!でもどうせギルさんのせいでこうなったんだ。遠慮なく使わせてもらおう。

リボンの破れた箇所を見つけて紐を当てる。すると紐がリボンに重なるようにくっつき、同化した。

同化した部分から白色が広がり、リボンは白色が強い淡いピンク色へと変化した。


(リボンの性能が向上しました)


おっと、これは意外な効果が。同化前の紐はよほどいいものだったみたい。

そういえば気がつくと服はいつものピンクに戻っていた。いつの間に。


「直ったか?」


僕は立ち上がってくるっと一回転。


「・・・一応お礼をいっておきます」

「気にすんな。もともと俺のしでかしたことだしな。その紐なら切れないだろうからこんな状況もおきなくなる。心置きなく全力で戦えるぜ」


・・・お礼いらなかったかな。


「おう、大丈夫そうだ。ちょっと嬉しいハプニングがあったが問題も解決したぞ。試合は止めてなかったがけじめはあったほうがいいだろう?いくぜ、試合再開だぁ!」


実況が試合再開を宣言する。

試合が始まったときのように対峙する僕とギルさん。


「やっぱりユウナはそっちの色のほうが似合う。だがその腰のリボンの色はもっと似合うな」

「それはどうも。おかげで頭も冷えたよ。でもせっかく勝てそうだったのによかったの?」

「それじゃあつまんないだろうが。それに俺の強さもわからないだろ?俺はお前より強いところを見せてお前に勝つ。お前を守れるだけの強さがあることを証明してやるよ!」


・・・かっこいー。そして男らしい。もし僕が本物の女性だったら惚れてたかもしれない。


「それでも。僕はあなたに負けない。負けられない。負けたくない」


僕を好きといってくれた人に嫌な思いをさせないために。僕の尊厳のために。

僕は深呼吸する。そしてステッキを構えた。


「いくぞ」

「いきます」



今度は自分を見失わない!そう誓ってギルさんに突撃していった。





余談その一

通るダメージが違うのは、どこかの漫画で言ってた。「一点に凝縮された”本物のパワー”ってヤツはムダな破壊をしないものよう!?」という理由です。さらにケンさんにしろギルさんにしろ、ユウナのパワーを利用したカウンターも作用してるからです。


余談その二

ユウナの服の変化はいわゆる怒りのスーパーモードです。攻撃的な変化と色が赤へと変化します。リボンが切れた理由は、魔法少女の服が神衣かむいじゃないからです。それでもかなり丈夫なんですが、ギルさんの滅牙(武器名です)に加えて、ユウナのパワーまでも利用されたカウンターを防げるほど強くはありませんでした。


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