お見舞い
たびたび更新が遅くてすいません。
おまたせしました。
シルクの一人称を私からボクに変更しました。過去分は修正済です。ただしキャラを作ってるときは「私」となります。まだ直ってなかったり、おかしいと思う場所があれば報告お願いします。
翌日、少し寝坊気味に目を覚ました。急いで支度して、パンをくわえながら走って診療所に向かう。
「あ、ユウナ」
ユウナの部屋を覗くと、ティアは目を覚ましていた。元気そうな姿を見てすごく安堵する。
「ティア、大丈夫?」
「ええ。おかげさまで。なんだか心配かけたようですいませんでした」
「ん。無茶したけどティアが元気ならそれでいいよ」
「でも、無茶したかいがありましたよ。シルク様、今朝目を覚ましたそうです」
「本当!?」
「はい。性格も元に戻って、人格にも異常は今のところ見られてないそうです」
「そっか。よかった」
「はい。よかったです」
僕とティアは思わず笑顔になった。
「そろそろ声をかけていいか?」
「「ひぇっ」」
二人して変な声が出た。
「二人の世界を作ってるところに悪いんだが、いつまでも話が進まないからな」
「まったく焼けるぜ。ユウナはもう少し俺に惚れてもいいだろうに。いや、もしかしてお前らそういう関係か?」
入ってきたのは領主とギルドマスターだった。
「今回は世話になった。おそくなったが礼を言う」
とりあえず椅子を勧めて座ってもらうと、領主がいきなり頭を下げた。
とりあえず二人の関係は否定しておいた。冗談なのか本気なのかわからないけど。
「二人がいなかったらと考えるのも恐ろしい。娘が無事で本当によかった」
「俺からも感謝だ。シルクは妹みたいなもんだ。助けてくれてありがとな」
「いえ、うまくいってよかったです。ぶっつけ本番でしたしね」
「僕も役に立ててよかったよ。人が救えたのならなおさらね」
そっか。シルク様が「ギルにぃ」って言ってたのはそういうことだったんだ。
にしても領主がじきじきに頭を下げに来るとかすごいな。でも好感が持てる。
「ティアよ。よかったら俺のところで働かないか?悪いようにはせんぞ?」
「ごめんなさい」
・・・もしかして勧誘がメイン?
でもティア即答(笑)
「おいノルド」
「あぁ、すまん。優秀な人間を見つけるとつい、な」
あれ?今領主を呼び捨てにした?
「ん?どうした?」
「いえ、ギルさんはノルド様を呼び捨てにされるんですね」
「あぁ、そのことか。俺はノルドと対等だと思ってるからな。公の場じゃさすがに様づけするけどな」
「こいつ元盗賊なんだよ。大規模な掃討作戦のときに俺が勧誘した」
「「は!?」」
二人の声がハモった。現ギルドマスターが元盗賊!?うそでしょ?
「え?本当ですか?」
「まじまじ。当時は「孤高の銀狼」って恐れられてたんだぞ?」
「お前だって「王国の鞘のない剣」とか言われてただろ!っつーわけだからよ。気をつけないとすぐ勧誘されるぜ?」
何その物騒な二つ名。特にノルド様。いや、納得だけど。
「そんな人をよく勧誘しようと思いましたね。それによく勧誘されましたね」
「まったくだ。今思い出しても非常識だ」
「人の上に立つものとして、有能な人材を確保するのは当然だろう?」
へぇ。ノルド様領主として優秀なのかもって思った。そして人を見る目も確かなのかも。
もっとも僕まで勧誘する辺りはどうかと思うけどね。
「ノルド様の考え方は私も賛同します。私も領主の娘ですから」
「だまされんなよティア。ノルドは頭のいいヤツは自分が楽をするため、力のあるヤツはいつでも戦うために声かけてるんだぜ?」
「ちょ、ギル、余分なこというな!・・・まて。今領主の娘といったか?」
「はい。ご挨拶が遅れましたノルド・ディバルド様。私はティア・シルヴェルト。ラフィンド領主、ブリットの娘です」
「マジか」
「ブリットの娘!?それがなぜこんなところに!?」
今度は向こうが驚く番だった。ギルさんは目を見開き、ノルド様は開いた口が塞がっていない。
まぁ普通驚くよね。領主の娘が旅してこんな所にいるなんて。
「世界の見分を広めるためにユウナに同行させてもらっています。まだ日は浅いですが、日々とても勉強になっています」
「そ、そうか。少し驚いた」
「・・・ティアよ。いや、ティア殿。旅の途中につわものはいましたか?」
「おい、ノルド」
「ノルド様、若輩の身ですし、なるべく正体は隠したいので今までどおりティアで結構です。ええ。とても強い方とお会いしました。そこで私は自分の力のなさを実感しました」
「すまん、じゃあ楽に話をさせてもらう。そうか、いたか」
「ほぅ?そんなに強いやつらがいたのか?」
ノルド様だけじゃなくギルさんもくいついた。戦闘狂め。
「そうですね。ヤマダグミのケンさんやユウナのお母様ですね。はっきり言って次元が違います」
「ヤマダグミのケンだと?くそっ、俺は出会ったことねぇな。戦ってみてぇなぁ」
「ユウナの母か。さぞかし美人で強いのであろうな。会ってみたいものだ」
二人はすごい不気味に笑う。怖っ!
これは話題を変えたほうがよさそうだ。
「そういえばお二人はシルク様には会ってこられたんですか?」
「あぁ、さっき覗いてきた。寝てたのでその間にこっちで話ができればと思っ」
「ギルにぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
ドムッ
目の前にいるはずのギルさんが消えた!?
途端にものすごい音。
ドンガラガッシャーーーーーーーーーーーーーーン!!
「ギルにぃギルにぃギルにぃ!助けてくれてありがと!怖かった!怖かったよぉ!!」
なんというスピード。見えなかった。ミサイルみたいな子だ。
というか見た目のギャップがすごい。美少女で騎士の姿がさまになってたのに、すごい残念な香りがする。
ギルさんはなんかぐったりしてるけど大丈夫かな?
そんなことおかまいなしにシルク様はギルさんにハグしつづける。
ふと見るとノルドさんが疲れた顔をしていた。昨日のことより今の状態のほうが疲れてる?
「シルク様、元気そうでよかったですね」
「・・・うん。元気すぎだと思うけどね」
ティアはこんな状況でもマイペースだ。
それにしてもティアのリザレクションの効果か、元気すぎでしょ?ティア恐るべし。
「っだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
あ、ギルさんが復活した。シルク様が抱きついたままだけど。
「シルク!病人が何やってんだ!安静にしてなきゃだめだろ!」
「・・・シルク。もう体調はいいのか?」
「あ、うん。ぱぱ、心配かけてごめんね」
「「ぱぱ?」」
僕とティアの声が再び揃う。
ノルド様は頭を抱える。
改めて思う。シルク様のギャップすげぇ。ノルド様苦労してそうだな。
「・・・シルク、客人の前だぞ」
シルク様が僕たちと目が合う。
そして訪れるザ・ワールド。
どれくらいたったか、シルク様は止まった時間の中でギルさんを離すと、堂々とした佇まいで僕たちに声をかけた。
「見苦しいところをお見せした。申し訳ない」
そして時は動き出す。
「今さらキャラ作ったっておそいっつーの」
「あぅ」
シルク様の突進で散らかった場所を片付けながらチョップで容赦なくツッこむギルさん。
「だってしょうがないじゃん!しらなかったんだもん!」
「あ、あの、僕たちは気にしませんから。素のままでいいですよ?」
「本当?ありがとぉ~。あのキャラ作るの疲れるんだよね」
「シルク・・・それじゃあ領主の娘として恥ずかしいのだ。頼むから人前ではちゃんとしてくれ」
「はぁ~い」
・・・これ、精神汚染の影響じゃないよね?
「あれ?よくみたら準決勝まで勝ち抜いた二人じゃん」
「シルク、医療班から話は聞いたのだろう?この二人がお前を助けてくれたのだ」
「うん。ボクを助けるために無理をしてくれたって」
「お元気になられたようでなによりです」
「よかった。いや、まだちょっと不安はあるんだけど。これ、精神汚染の影響じゃないですよね?」
「あらユウナ。私のことが信用できないと?」
「え?いや、そんなことは」
「じゃあどういう意味ですか?」
「えと、えっと・・・」
僕とティアが妙なじゃれあいをしていると、シルク様が佇まいを整えた。
「ティア様、ユウナ様、このたびはご迷惑をおかけしたと共に、私の治療に尽力くださり、誠にありがとうございました!このご恩は一生忘れません!」
深く深く頭を下げるシルク様。その姿は初めて見た凛とした美少女騎士だった。
「顔を上げてくださいシルク様。その気持ちありがたく受け取ります」
「あなたのような好感の持てる人を救えたことを嬉しく思います」
僕たちは微笑む。
「ありがとう。ありがとうございます」
そう言って顔を上げた彼女はとても素敵な笑顔だった。
余談です。マインがシルクに魔剣を渡した理由。
言い方が悪いんですが、マインはシルクにつばをつけてました。
自分の言いなりにしやすいように精神汚染しておけば楽だと考え、あのような武器を渡したんです。
本当、この人ろくなことしません。




