狼と魔剣
更新遅れてすいません。今回まとめるのに時間がかかりました。
結局まとめきれなくて、次の分に食い込んだので次の更新は早めにできると思います。
6/7、シルクの自分称を私からボクに変更しました。
6/17、ギルの必殺を「ムーンライトファング」から「月光牙」に変更しました。
ぎぃん!ぎぃん!ぎぃん!ぎぃん!
金属を打ち合う音が響く。
二人が使ってる武器は、二人とも短剣二刀流。
二人は攻撃もスピードも速い。この広いコロシアムを縦横無尽に駆け抜ける。
コロシアムの壁を使い、シルク様が飛ぶ!ギルさんは後ろに跳躍。シルク様は一度着地して追いかける。
「もぅ!ギルにぃ逃げてばっかりじゃん!」
「下手に打ち合ってペースに巻き込まれると後がきついからな」
「でも逃げても勝てないよ!」
「いや、なかなか対応策が浮かばなくてな。あそこまで俺と打ち合えるとは思わなかった。しばらく見ないうちに強くなったな、シルク」
「ほ、ほめられても手加減なんてしないからねっ!!」
いや、シルク様嬉しそうだよ。きっとしっぽとかあったらぶんぶん振ってるね。
「ユウナ、どっちが勝つと思いますか?」
「うーん。八割ギルさん、二割でシルク様かな」
「その根拠は?」
「勘かな?ギルさんはまだいろいろ隠してそうだし、シルク様もこの町の領主の娘、たぶん何か特殊能力があるんじゃないかなって思ってる。ティアは?」
「そうですね。私はギルさんが勝つと思いますよ」
「理由は?」
「銀狼の異名は私も知ってますからね。例え才能があっても今のシルク様ではまだ実力も経験も足りないでしょう」
「そこは僕も同意するんだけどね」
「よし、んじゃこっちから攻勢にでてみるか」
ギルさんはそう言うと持ってる短剣を投げた。
「甘いっ!」
きぃん!
飛んできた短剣をはじいたときには、ギルさんはシルク様に肉薄していた。
「ファングクロー」
両手で指の間に小さい短剣をはさみ、連続で畳み掛ける。
「あっ、やっ、くぅ!」
きぃん、きぃん、ぎぃん!ぎぃぃん!
シルク様は何回か受け止めたけど、あっさり両手の短剣をはじかれる。
「それじゃあ終わり・・・うっ!」
ギル様は蹴りを出しかけて、慌てて引っ込めて後ずさった。
「今の、チャンスでしたよね?」
「うん。でももし僕がギルさんと同じ立場でもきっと距離をとった」
「え?何でですか?」
「シルク様、何か持ってるね」
「何をですか?」
「わからない。けれど、あのまま蹴りを出してたらたぶんギルさんが負けてた」
すごい鳥肌がたってる。シルク様いったい何を持ってるんだ!
「・・・シルク、今何をしようとした?」
「すごいねギルにぃ。これの存在に気づくなんて」
シルク様が懐から取り出したのは一本の短剣だった。
「・・・魔剣か。いつの間にそんなものを・・・」
「前にね、宮廷魔道士さんから貰ったの。これがあればお父様にもギルにぃにも勝てるって」
ってことはマインか。なおさら嫌な予感が晴れない。
(説明書起動。あれがなんだかわかる?)
(不明。既存のデータにはありません。特殊能力で作られたものだと思われます)
(鑑定する能力とかはこの世界にある?もしあったとして、あのアイテムの鑑定はできる?)
(存在します。鑑定は可能です。ただし、鑑定可能Lvは10と推測されます)
(その鑑定Lvは高いの?)
(鑑定最高Lvです。鑑定されれば、この世界のデータベースにも登録されます)
鑑定能力が欲しい。ないものねだりをしてもしょうがないけど。
「これがボクのスタイルだよ」
そういうとシルク様は右手の短剣を振る。
ヴォン
音と共に剣が巨大化、バスターソードに変化した。
そして左手は落とした短剣を拾う。
「今度は本気で行くよ!」
ヒュン
速っ!武器を持つだけであんなに変わるものなの?それとも実力を隠してたの?
「っちっ!」
きぃん、きぃん、きぃん、きぃん、ぎぃぃぃん、ぎぃぃぃん!
今度はギルさんは武器を飛ばされた。
「あははっ。ギルにぃ覚悟!」
「オラぁっ!」
振り下ろされる手首を狙ってバク転をしながら蹴りを入れるギルさん。すごっ。
視力と胆力、それに柔軟性や技術とか、必要な要素が多い攻撃をなんなくするとか。
「あ痛っ」
カランカラーン。
武器が転がる。でも左手に持ってた短剣だけ。右手は吸い付いてるように離れない。
ギルさんはすごい苦い顔をした。
「まさかとは思うが」
「あれは呪われてる可能性がある」
「間違いないでしょう。しかもかなり悪質な能力がありそうです」
僕の言葉にティアが確信を持ったようにうなずく。
「どうしますか?」
「今はどうしようもない、勝負がつくまでは。ただしギルさんの命や、被害がひどくなりそうなら介入する」
「わかりました。ノートルのギルドマスターの実力を信じましょう」
「呪いなんてないよ。あれ?でもボク今ギルにぃを殺そうとした?なんで?まぁいいや。早く続きやろっ」
シルク様の様子がおかしい。ティアの言うとおり、ろくでもない能力がついていそうだな。
「シルク、そんなつまらない呪縛、俺が噛み砕いてやる!」
ギルさんはそう言うと背中の二本の曲刀を抜き、逆手に持つ。
二本の曲刀の美しい銀の色が妖しく輝く。
そしてギルさんから風が巻き上がる。
ギルさんの雰囲気が変わった。そしてばら撒かれる威圧感。
「・・・ギルにぃ?やっと本気になってくれるんだね。」
「あぁ、本気だ。本気でその剣をへし折る!」
「あはっ。ボクに本気になってくれるんならなんでもいいや。本気のギルにぃを殺してボクのことを認めさせてあげる!あれ?でも死んじゃったら嫌だし、ボクのこと認められなくなるじゃない。あれ?」
ますますシルク様がおかしくなってきてる。これ、もしかしたら早く対処しないと手遅れになるかも。
「我が牙に砕けぬ物なし!」
ドンッ!!!!
音と共にギルさんの姿が掻き消える。僕の目でもぎりぎりでしか見えない!
ガキィィィィィィン!!!
金属のぶつかる音が響く。たぶん客席まで響くほど大きい。
シルク様がバスターソードで二本の曲刀を受け止めていた。
シルク様の目が驚愕に開かれる。
「嘘!?ほとんど見えなかった!ギルにぃとボクの実力はまだそんなに差があるの!?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
ギルさんの一方的な攻撃。シルク様は防戦一方。
そして僕の見立てが間違ってなければ。
「ま、まだ攻撃速度も威力も上がってくる!あっ!」
再び左手の短剣を弾かれた。
シルク様は一瞬、飛ばされた短剣を目で追ってしまった。
再び視線を戻したときに、ギルさんは視界にいない。
「えっ?」
「必殺。月光牙!」
シルク様はきっと下から声が聞こえたはずだ。
ギルさんはシルク様が目を離した瞬間、しゃがんで力を溜めてたように見えた。
そして
ギィィィィィィィィィィィィン!!!
パギィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
甲高い金属音が響いたと思ったら、地震でも起こったかのような音と揺れ。そして音を追うと、そこは土煙の上がるコロシアムの壁だった。
入り口付近だったためか、人に被害はなさそうだ。
土煙は早々に消える。そこに残っていたのは意識を失ったシルク様とヒビの入ったバスターソード。
「おい、審判。仕事しろ」
「ハッ!?しょ、勝者、ギル様!ギル様です!!」
その声を聞くと同時に僕とティアはシルク様に向かって走り出す。
「シルク!」
「シルク!」
ノルドさんやギルさんも走り出す。
「シルク様!」
「シルク様ぁ!」
近くの客もシルク様に集まる。
シルク様、無事でいて!!
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