予選一回戦と二回戦
メンテが終わったら感想を二つももらいました。
ありがとうございます。こういうのがモチベにつながっています。
「てめぇら、一旦静まれぇ!」
魔道具を使ったんだろうけど、ギルさんの一声で会場はいっぺんに静まった。
静かになったところでおっさんが続きを話し出す。
「お前らしっかり聞いてろよ。まずはルール説明だ。まずはこの多すぎる数を減らすために30人で一つのグループになって勝ち抜きバトルロイヤル、これを四回に分けて行うぞ!最後のグループは人数が少なくなるが心配はいらねぇ。そこは始まるまで期待していてくれ。予選は武器の禁止、気絶するか客席に逃げるかで失格、決勝進出は各グループから二人だけだ」
「おめぇら客席に逃げるなんて情けねぇことすんなよ?」
ということは八人が決勝でバトルか。どこかの少年漫画なら大喜びの展開なんだけど。
「さぁ予選開始だ!最初に戦うヤツら以外はコロシアムの客席まで下がってくれ」
スタッフらしい人が数人きて案内をしてくれた。僕たちはまだみたいだ。
案内された席で改めてみると30人って少なく見える。城での殴り込みの影響か、たんにこのコロシアムが広いのか。
あ、見覚えのある人がいる。・・・昨日門にいた兵士さんだ。ここにきてていいんだろうか?
「あれ?一人足りねぇんじゃねぇか?」
誰かが声を上げる。え?まじで?
まわりが騒ぎ出す。僕としてはそんなのを数えてたことに感心するんだけど。
「最後の一人は俺だぁ!」
そういって飛び込んだのはギルさんだった。
最初のメンバーの悲鳴が聞こえる。
予想はしてたけどギルさん強さで有名な人なんだな。
「残念だが決勝の枠は一個もらったぜ?」
「ちくしょー!」
「いやまておまえら、これはバトルロイヤルだ。ってこたぁ全員で一斉にかかれば・・・」
「あの人をここで落とせれば俺にもチャンスが!」
「ふん。束で相手をしてやる。かかってこいよ!」
ギルさんは最後にそう言うと魔道具をおっさんに向けて投げる。
おっさんはそれを受け取ると自分の魔道具で開始を合図する。
「予選一回戦、はじめぇ!」
声と同時にほぼ全員がギルさんに向かっていく。
「あんたさえいなければぁ!」
「覚悟ぉ!」
「日ごろの恨みぃ!」
「さすがにこの人数なら!」
なんかちょっと不穏な言葉が聞こえた気がする。
「甘いな。オラぁっ!!」
束にかかっていく連中が次々に跳ね飛ばされるように吹っ飛んでいく。
いや、これ見てて面白い。よく見ると大体一撃入れるだけで飛んでいってるな。
これで失格者が続出した。客席まで吹っ飛ぶヤツも多かったし、大体みんな気絶してる。
そして残りは10人を切った。
「闇雲に突っ込んでこなかったことはほめてやるぜ。だが、慎重なだけじゃあ勝てねぇ、ぜっ!」
最後の言葉と共に一瞬で残りの人間に肉薄する。早い!ええ?分身!?
そして全員が吹っ飛ばされ・・・いや、昨日の兵士さんだけはよけてカウンターを入れて・・・ギルさんの分身が消えた。
「へぇ。兵士にも強いやつがいるじゃん。お前、名前は?」
「カスティルといいます」
「憶えたぜ。お前とは決勝で戦闘れるといいな」
「ノルド様の次に楽しみにしています」
「ノルド様より楽しませてやるよ」
そんな二人の会話に実況が割り込む。
「一回戦決勝進出はぁ、ギルさんとカスティルだぁ!」
二人はそのまま客席へと歩いていった。
「一回戦は予想通りの展開だったが二回戦はどうなるかわからないぞ?さぁどんな戦いを見せてくれるんだ?」
スタッフらしい人がティアに声をかけた。
「予選二回戦のメンバーです。中央へお願いします」
ティアと予選でぶつからないでよかった。
「ユウナ、いってきますね」
「うん。がんばってね」
ティアは中央へ歩いていった。
「おっと?女性が混じってるぞ?彼女は一体何者なのか?実力も目的も見えない美少女には要注意だー!」
「まじか!」
「・・・かわいい!」
「美人だ!」
「付き合ってくれー!」
ぉぉ。さすがティア。評価が高い。
ちなみに参加者は敵じゃないと見下すタイプと見とれてるタイプ、そして油断大敵という顔をしてるタイプの三種類に分かれてるな。
実況のおせっかいもあってずいぶん注目されているのにティアは余裕そうだ。人前に出ることには慣れてるのかな?
「なぁねぇちゃん。わざと負けてやるから俺とつきあわねぇかい?」
「あら?ユウナを口説く決闘に参加してるのに私を口説くんですか?」
「いいじゃねぇか。どうだい?」
「おい、そういうはやめておけ。この町じゃ批難されつづけることになるぞ?」
「もとより乗るつもりはありませんよ。私には好きな人がいますから」
「チッ!後悔すんなよ?」
ここでまたしても実況が割ってはいる。
「そこの冒険者ー?聞こえているぞー?この町で戦いに不正をするとどうなるかわかってるだろう?」
客席から一斉にブーイングだ。この町本当に戦いにかける情熱が半端ないな。
冒険者の男もすごいバツが悪そうな顔をしてる。自業自得だろ?
「さぁ準備も整ったようだ!予選二回戦、始め!」
「変身」
開始してすぐにティアは魔法少女になった。
びしっとポーズ。
「魔法少女見習い、マジカル☆ティア!推してまいります!」
・・・ティア、僕のポーズにも憧れてたのかなぁ?それに見習いって。
「おっと、彼女が光ったと思ったら衣装が変わったぞ?そして魔法少女というキーワード、もしこれが本当ならとんでもないことだぞぉ?」
会場からはちらほらと魔法少女?という声が聞こえてくる。
「見かけに騙される俺じゃねぇ!食らえぇ!」
さっき八百長?ナンパ?を提案した冒険者がティアに向かって突っ込んでいく。
「えい」
「ひぶっ!」
ばちこーん。ばたっ。
ティアが平手うちで顔面に一発。隙だらけなうえに一撃で延びてしまった。
「おぉぉっとこれは恥ずかしい!不正を働きかけた挙句あっさりと倒されたー!彼は今後この町で生きていけるのか!?」
客席は大爆笑だ。
うーん。ちょっとかわいそうになってきたよ。
「ちょっと邪魔が入ったが魔法少女についてだ。知ってるヤツも多いだろうが、マインの暴走を止め、このクラレイト王国を救った方が魔法少女だぁ!見習いとはいえ実力は未知数!さぁ他の人間はどうでる?」
そんな実況がありつつも、二回戦はうまい具合にばらけて戦っていた。特筆するのはもちろんティアともう一人。さっきのティアとナンパ冒険者の話をやめておけといった人だ。
危なげもなく次々に相手を戦闘不能にしていく。
ティアもなれないながらも接近戦闘でどんどん戦闘不能者を増やしていく。
気がつけば、残りは二人になっていた。
「驚いた。あなたがこんなに強いとは夢にも思いませんでした」
「うふふ。見かけで判断すると痛い目を見ますよ?」
「僕はレイコット。もしよければあなたのお名前を聞いてもいいですか?」
「ティアです」
「ティア、決勝で会おう」
二人は中央で握手してるみたい。ますます少年漫画っぽくなってきた。
「勝者、ティア、レイコット」
二人は観客にしばらく手を振っていたけど、ティアはこっちへ、レイコットは反対側へ歩いていった。
「ただいまユウナ。私のポーズと台詞はどうでしたか?」
「勝ち負けよりそっちなんだ」
僕は思わず苦笑いした。
「似合っていたよ。ところで見習いってなに?」
「私はユウナやあなたのお母さんより弱いので、いつか実力も付けて私に似合う二つ名ができたら、どうどうと名乗ろうかと思っています」
「そんなこと考えてたんだ」
そして僕にも出番が来た。スタッフが近づいてくる。
「予選三回戦のメンバーです。中央へお願いします」
「はい」
「ユウナ、やりすぎないように気をつけてくださいね?」
「あ、気をつけるのはそっちなんだ。でも間違いじゃないところがね」
はぁ。また緊張してきた。でもやらなきゃ。僕の安息のために。
僕は一度深呼吸をして、スタジアムの中央へと歩き出した。




